中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2021/11/25~12/2]

大幅に増加傾向にある「出版物海賊版サイト」 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1.日本でも活発化する「メタバース」への取り組み

 米国メタ社(旧フェイスブック)がメタバースへの取り組みを強化する方針を示していることは各メディアともに取り上げているところである。2007年ごろ、「セカンドライフ」というメタバース環境が話題となったことを記憶している人も多いに違いない。そこでは大手企業が参入して、イベントが企画されたり、一定の経済活動も試みられたりしていたことから大きな話題になっていた。いつの間にか下火になってしまい、今回の“メタバース”がそれとどう違うのかという声も多く聞こえてくる。その答えはいまだ明確にはなっていないのかもしれないが、これからの企画や経験を踏まえることで次のステップに進んでいくのではないだろうか。

 そのようななか、日本でも企業がメタバースに取り組む動きが活発化している。VR事業などを手がけるHIKKYが開催する「バーチャルマーケット2021」(12月4日~19日)というVRイベントでは、ローソン、SMBC日興証券、テレビ朝日などの企業が参加を表明している(ITmedia)。渋谷や秋葉原の街並みが仮想空間に作り上げられた“パラレルワールド”が展開している。そこではアイテムやコンテンツの提供が行われる企画が用意されるようだ。

 また、KDDIや東急、みずほリサーチ&テクノロジーズ、渋谷未来デザインは「実在する都市をバーチャル空間上に再現する『都市連動型メタバース(バーチャル空間)』の推進に当たり、さまざまな権利問題の解決・運営方針を定めていくガイドライン策定を担う業界団体」とする「バーチャルシティコンソーシアム」を設立したことが報じられている(日経XTECH)。かつてよりも高い表現力やユーザーインターフェース、そして現実の都市との連動を強めていくというところがポイントか。

ニュースソース

  • メタバース上で開催 ローソン、SMBC日興証券、テレビ朝日が出展するVRイベント「バーチャルマーケット2021」とは?[ITmedia
  • メタバースから始まるスマートシティー、KDDIらが渋谷で挑む[日経XTECH

2. 大幅に増加傾向にある「出版物海賊版サイト」

 一般社団法人ABJが総務省の「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会」において、「出版物海賊版サイトの最新状況と対策」を公表している(総務省)。

 それによると、「出版物の海賊版サイト上位10サイトへの10月分の合計アクセス数」が合算で3億9833万アクセスを記録したという。さらに、11月に閉鎖した「漫画BANK」を含む上位3サイトの合計アクセスは3億超となり、対前年同月比で3倍以上に増加したとしている。また、「タダ読みされた出版物の被害金額」を試算したところ、「2021年1月から10月までで7827億円」となり、2020年の年間被害額の約2100億円を大きく上回る水準にある(ITmedia)。

 違法サイトである「漫画村」が摘発されたことで、出版社のデジタルコミックの売上が増加するなどの成果を上げたと分析されていたが、再び大きな被害が出るに至っているという状況である。引き続き、違法サイトの削除要請、フィルタリングによるアクセス抑制、ネット広告の停止、違法コンテンツを利用しないように啓蒙の強化を続けていくことが必要。もちろん、業界を挙げて、法的な措置も徹底して進める必要もあるだろう。

ニュースソース

  • 「漫画村」の4倍規模 違法漫画サイトへの月間アクセス数は4億目前に ABJ調査[ITmedia
  • インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会(第5回)配布資料[総務省

3. 国内企業の「NFT」参入が相次ぐ

 プロ野球球団のDeNAベイスターズ(coindesk)、テレビ朝日の東映ロボットアニメ(ITmedia)、集英社の「ONE PIECE」(NFT LABO)など、著名企業、ブランド、キャラクターによるNFT事業への参入が相次いでいる。海外ではアート作品での利用が報じられることが多いように感じるが、日本のこうしたキャラクターはNFTとの親和性も高いことから、今後も活発な参入が期待される。

 NFTのマーケットプレイスとしても、音楽アーティストのファンサイト運営を手掛ける株式会社Fanplusは、ブロックチェーン技術を活用したNFTマーケットプレイス「Fanpla Owner」を2022年2月にオープンすると発表している(Media Innovation)。

 暗号資産取引サービスを手掛けるビットバンクはNFTの購入や保有についてのアンケート調査を実施している(coindesk)。それによると、20歳代、30歳代といった層での購入や保有が6割強を占めているとしている。また、その目的は「長期投資」であり、コレクションや応援などの趣味性の高い用途よりも「投資」という観点が強いようだ。また、NFTの種類としてはアート、ゲームが主になっている。

ニュースソース

  • DeNAベイスターズ、NFT事業に参入──ブロックチェーンはLINEを採用[coindesk
  • テレ朝がNFT事業に本格参入 「コン・バトラーV」など東映ロボットアニメをデジタルトレカ化[ITmedia
  • 集英社、「ONE PIECE」NFT事業販売[NFT LABO
  • Fanplus、エンタメ領域に特化したNFTマーケットプレイス「Fanpla Owner」を発表・・・ファンデータベースを活用し流通拡大目指す[Media Innovation
  • スポーツクラブトークン発行「FiNANCiE」IEO上場に向け前進、コインチェックから来年夏に「フィナンシェトークン」発行へ[The Bridge
  • NFTを所有する目的は?ビットバンクが調査[coindesk

4. 2021年度上期の国内PC出荷台数は591.4万台、前年同期比25.6%減

 株式会社MM総研が2021年度上期の国内PC出荷台数の調査結果を公表した(PC Watch)。それによると、「2021年度上期の国内PC出荷台数は591.4万台と、対前年同期比25.6%という大幅な減少」となっている。要因としては、個人向けは新型コロナ流行による在宅勤務や在宅学習の需要が一巡したことから19%減、ただし、アップル社は独自CPUを搭載したことから上位メーカーで唯一出荷台数を伸ばしたものの、冬商戦では半導体不足の影響を受ける可能性もある。法人向けではGIGAスクール需要があったものの、やはり半導体不足の影響を受けたとしている。

ニュースソース

  • 2021年上期のPC市場、前年の反動で大幅減。AppleのM1搭載機は好調で個人向け2位[PC Watch

5. 3Gサービスの終了――「iモード公式サイト」は11月30日で終了

 携帯電話端末を使用する情報サービスであるNTTドコモのiモードが11月30日に終了した(ケータイWatch)。1999年にサービスを開始してから23年である。当時は文字情報でニュースをはじめとする各種コンテンツの提供を通信事業者が月額課金で行うモデルは画期的であった。いまのモバイル端末におけるコンテンツ消費の原型を見ることができる。そして消費者も“月額課金”というモデルになじんでいくことになる。

 また、KDDIと沖縄セルラーは3Gサービス「CDMA 1X WIN」を2022年3月31日で終了する(ケータイWatch)。こちらも登場した時点ではデータ通信を快適にできることをアピールしていた。

 この2つのサービスが終了するということで、モバイルデータ通信の一つの時代が終了したことを実感する。

ニュースソース

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。