中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2021/12/2~12/9]

「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」構築――岸田総理大臣が表明 ほか

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1.「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」構築――岸田総理大臣が表明

 12月6日の第207臨時国会の所信表明演説において、岸田文雄総理大臣は「日本を周回する海底ケーブル『デジタル田園都市スーパーハイウェイ』を今後3年程度で完成させる」と表明した(ITmedia)。すでに日本のインターネット接続環境(回線環境)はある一定の水準にはあると感じている人も多いのではないかと思うが、この「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」は、回線網だけではなく、「海底ケーブルと大規模データセンター、光ファイバー、5Gなどの施設と技術を組み合わせて通信インフラを整備。構築したインフラの上で、自動配送、遠隔医療、テレワーク、スマート農業などのサービスを実装する」ものであるとしている。これまでの経緯からすると、日本はインフラ整備の分野では充実したが、その利活用について課題がある。今回の政策によって、インフラ整備のみならず、その利活用まで一体での推進に期待したいところだ。

 また、政府が電子版のワクチン接種証明書の提供を12月20日に開始すると報じられている(ケータイWatch)。「電子版(デジタル版)の新型コロナワクチン接種証明書は、専用アプリから申請・取得でき、スマートフォン上で表示できる」というもののようである。

ニュースソース

  • スマホで「電子版ワクチン接種証明書」は12月20日スタート[ケータイWatch
  • 日本を周回する海底ケーブル「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」を今後3年で構築 岸田首相が表明[ITmedia

2.「話題の2分野」において、新たな業界団体が設立される

 最近の技術開発動向やその社会的な導入を踏まえ、2つの分野で業界団体が設立された。

 1つ目は、ジェーシービー(JCB)、大日本印刷(DNP)、パナソニックシステムソリューションズジャパン、りそなホールディングス(りそなHD)の4社による「顔認証マルチチャネルプラットフォーム」に関するコンソーシアムである(CNET Japan)。「本人の同意を得て登録した顔画像データを共通のサーバーに蓄積。蓄積したデータを業界横断的にオープンに活用することで、日常生活のさまざまな場面において、手ぶらでスピーディにサービスが利用できる環境を構築していく」ということが目的であると報じられている。このテーマについては、産業側の推進も必要だが、利用者側の理解をいかに得るか、理解を得るに足るセキュリティや運用ポリシーが確保されるかなどがポイントか。

 また、暗号資産交換事業者のFXコイン、暗号資産関連事業者であるGincoとCoinBest、インテリジェンスユニットの4社は「日本メタバース協会(Japan Metaverse Association:JMA)」を設立したと発表したことが報じられている(ITmedia)。「メタバースの技術や関連サービスの普及の他、健全なビジネス環境の整備を進める」ことが趣旨とされている。

ニュースソース

  • JCBやDNP、「生体認証」の業界横断型プラットフォームを目指すコンソーシアム設立[CNET Japan
  • 暗号資産関連事業4社、日本メタバース協会を設立 「メタバース先進国を目指す」[ITmedia

3. 2021年の検索ランキングとアプリランキング発表

 2021年も押し迫り、各社からは今年を総括するランキングの発表が相次いでいる。

 グーグルは「2021年Google検索ランキング」を発表した。それによると「東京 2020 オリンピック」「大谷翔平」「東京リベンジャーズ」「モンスターハンターライズ」「呪術廻戦」がトップ5に入った。そのほか、「○○とは」で検索された語ランキングなども発表されている(ケータイWatch)。

 ヤフーも2021年に検索数が急上昇した人物や作品をランキング形式で発表する「Yahoo!検索大賞2021」の第2弾を発表している。第2弾は「大賞と、俳優、女優、お笑い芸人、アスリート、モデル、ミュージシャン、アイドル、声優の8部門」となっている。大賞とアスリートの分野では「大谷翔平」が選ばれている(ケータイWatch)。

 アップルは「2021年のベストアプリとゲーム」(ケータイWatch)と「Podcast 2021年のベスト番組」(アップル)を発表している。全世界を対象としているので、日本ではなじみのないアプリやコンテンツも多いが、トレンドは感じることもできそう。

 そして、ツイッタージャパンは、2021年に国内のTwitter上で最も「いいね」されたツイートや最もリツイートされたツイートなどを発表している(ケータイWatch)。最も「いいね」されたツイートは「4月2日の夜に投稿された、有吉弘行と夏目三久の結婚ツイート」だとしている。そして、最もリツイートされたのは「『鬼滅の刃』の『遊郭編』のテレビアニメ化を告知するツイートだとしている。

ニュースソース

  • グーグル、「2021 年 Google 検索ランキング」を発表[ケータイWatch
  • 「Yahoo! 検索対象2021」大賞は大谷翔平選手に[ケータイWatch
  • アップル、2021年のベストアプリとゲームを表彰[ケータイWatch
  • 「App Store」の2021年無料Appランキング発表 2位はLINE、1位は?[ITmedia
  • Apple Podcastが2021年のベスト番組を発表[アップル
  • 今年最も「いいね」されたツイートは? Twitterが振り返る日本の2021年[ケータイWatch

4. コンピュータサイエンス誌「bit」が電子版で復刻

 1969年から2001年まで発行されていたコンピュータサイエンス誌「bit」の電子復刻版が販売される(ITmedia)。販売するのは電子出版などの技術開発を手掛けるイーストである。すでに今年3月には大学や企業、研究機関など向けに電子版bitの配信を始めていたが、個人向けとして新たにAmazon Kindle版で発売する。価格は1冊198円となっている。

 また、今年の12月は「世界初の電子書籍が公開されてから、今月で50周年を迎えた」ことが報じられている(INTERNET Watch)。これは「米国の電子図書館『プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg)』が、1971年12月に公開を開始してから50年目を迎えた」ことを根拠としている。

 こうしたデジタルアーカイブ事業はビジネスとしては難しい側面もあるのではないかと思うが、過去の出版コンテンツがデジタル化されることで、過去のコンテンツを読めるという懐古する意味だけではなく、新たな価値を創出する可能性への探究は継続されるべきであろう。

ニュースソース

  • コンピュータサイエンス誌「bit」が電子版で復刻 Kindleで1冊198円[ITmedia
  • 予想より長い歴史が!? 世界初の電子書籍の公開から今月で「50周年」を迎える[INTERNET Watch

5.「フィッシング」「ランサムウェア」の脅威は衰えず

 2021年はフィッシングに関する話題が多かった。また、その高度化(巧みさ)も際立った年だった。

 フィッシング対策協議会は2021年11月のフィッシング報告動向を発表している(フィッシング対策協議会)。2021年8月をピークにして、若干の減少傾向は見られるが、高止まりをしているといえる状況には変わりがない。

 また、ソフォスは日本市場向けに「2022年版ソフォス脅威レポート」を公開している(マイナビニュース)。ランサムウェアサービス、コモディティマルウェア、攻撃ツール、クリプトマイナーなどの動向についてまとめられている。とりわけランサムウェアに関しては影響が甚大であり、動向については引き続き警戒が必要だ。

 そして、11月11日・12日にオンラインで開催された「JPAAWG 4th General Meeting」のセッション「JPAAWGセキュリティリサーチャーパネル」についてレポート記事が掲載されている。カスペルスキー、ソフォス、Vade Secureから迷惑メールの動向と対策について解説されている(INTERNET Watch)。こちらも一読しておく価値がある記事といえよう。

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中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。