中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2021/12/23~2022/1/6]
2022年の最大のキーワードは「Web3」か ほか
2022年1月7日 16:00
1. 「デジタル前提社会」に向けた政策の道筋
昨年末の12月24日、政府はデジタル政策の道筋を示した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定した。今後、「デジタル庁が司令塔となり各省庁と連携して、策定した工程表に沿ってデジタル社会に合う形に法制度からシステム、データ基盤まで再構築する」ことになる。これに関し、デジタル臨調の事務局長を務める小林史明デジタル副大臣が日経クロステックのインタビューに答えている(日経XTECH)。今後の「デジタル前提社会」の構築に向けた政府の動きを知る上で一読をお勧めしたい。
また、NHKは「経済産業省は初めてNFTを活用した実証実験に乗り出す」ことを報じている(NHK)。記事によれば「(2022年)2月ごろからファッションの分野で行うことにしています。デザイナーが制作した1点ものの洋服にNFTを付けてそれを3Dでデータ化します。その洋服はデジタル空間で転売されてもNFTで履歴が管理でき、収益の一部がデザイナーに還元される仕組みをつくりたいとしています」と、実証実験の概略を説明している。
そして、総務省は、5Gを「今後の経済社会や国民生活にとって重要なインフラ」と位置付け、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯各社に対して、5G基地局の整備を加速するよう要請したと報じられている(ケータイWatch)。
報道を見る限りでは、「計画」「組織」「予算措置」が整備され、これまでにないスピードで対応が進んでいるように感じる。
2. 「新料金プラン」へは一般ユーザーの約2割が移行、総務省が集計結果を発表
総務省が発表した集計結果によると、MVNOを含む携帯電話事業者が提供する「新料金プラン」の契約数が2021年11月末時点で約2930万件に達したという(ITmedia)。記事によれば、「一般利用者向け携帯電話サービスの契約者数の約2割に相当する」という規模である。菅政権下での政策で、携帯電話の安価な料金プランが各社から提供されることとなった。
そもそも、携帯電話の利用料金が分かりにくく、かつ高止まりしているということから、「利用者の理解を助ける」「多様で魅力的なサービスを生み出す」「乗換えを手軽にする」ということを主旨として、市場の競争政策を進めてきた経緯がある。オンラインでの手続きやサポートのみになるなど、ある程度の利用者側のスキルが必要となるものの、選択肢を広げたという意味で、市場でも評価がされているとみてもよいだろう。
ニュースソース
- 携帯電話の「新料金プラン」、一般ユーザーの約2割が移行 総務省調べ[ITmedia]
3. 2022年の最大のキーワードは「Web3」か
2021年の年末から2022年の年始にかけて、「Web3」という単語が国内外のメディアで頻出している。一部のエッジなコミュニティではすでに使われていた用語かもしれないが、商用メディアでこれだけ露出が多くなったのは明らかにこの年末年始だ。概念の定義は十分に定まっていないように感じる記事も見受けられるが、今後のテクノロジー業界で話題の中心になっていくのは間違いなさそうだ。
Web3とは「分散型プロトコルを促進し、ユーチューブ、ネットフリックス、アマゾンなどの大手テック企業への依存を減らそうとする、次なるインターネットを意味する」(coindesk)という説明がシンプルだ。この記事では、人々は自らのデータと引き換えに無料で提供される大手ITベンダーのプラットフォームを利用するのではなく、ブロックチェーンの技術を使うことで、その顧客や製品ではなく、参加者や株主になれるということだと説明されている。
そのようななか、元TwitterのCEOであるジャック・ドーシー氏が「Web3.0の中心にいるのはわれわれではない。VCとその背後にいるLPたちだ。彼らのインセンティブから逃れることはできない。ラベルが違うだけで、結局は中央集権的な存在であることに変わりはない」(INTERNET Watch)と述べ、「次世代のインターネットを所有するのは、暗号資産(仮想通貨)のユーザーではなく、ベンチャーキャピタルだ」(BUSINESS INSIDER)と指摘をして、現状に疑問を呈したことが大きく取り上げられている。
ニュースソース
- 「ウェブ3」を10分で理解する[coindesk]
- web3.0は新しいインターネットを推進し、NFTはその鍵となる!![NFT LABO]
- 「Web3.0はVCの所有物」元Twitter CEOジャック・ドーシー氏が現状のWeb3.0を痛烈に批判[INTERNET Watch]
- Web3こそが関心や大きな注目が価値を生むアテンションエコノミーの欠陥を修復できる[TechCrunch日本版]
- Web3は民主化できない?…ツイッター元CEO、ベンチャーキャピタルの影響力を危惧[BUSINESS INSIDER]
4. CES 2022最大の話題は「ソニーのEV事業参入」
米国ラスベガスでは「CES 2022」が開催されている。今年はリアルイベントとオンラインの併催となっているが、新型コロナウイルス(オミクロン株)の感染拡大によって、大手企業の出展取りやめも話題となった。そのなかで大きな話題となっているのはソニーが発表した「新会社ソニーモビリティ社の設立によるEV事業への参入」だろう。
「EV事業を担う新会社『ソニーモビリティ株式会社』を設立すると発表した。あわせて、コンセプトカー「VISION-S」にSUVタイプの「VISION-S 02」も披露した」と報道されている(CNET Japan)。ソニーはすでにVISION-Sというコンセプトカーを発表しているが、あくまでも社内のデジタルエンターテインメントシステムのデモという位置付けとしてきた。これに対して今回はSUVタイプのVISION-S 02も公開し、本格的なEV(電気自動車)市場への参入の意思を表明した。
あわせて、ソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長は「リカーリング(継続課金)型の事業モデルを検討している」と明かした(日本経済新聞)。報道によれば、ソニーは「製品に加えて事業モデルでも新たな形を模索し、顧客と長期的な関係を築く」としている。
ニュースソース
- ソニー、2022年春に新会社「ソニーモビリティ」設立--EVの市場投入を本格検討[CNET Japan]
- ソニーグループ社長、EV事業で継続課金型を検討[日本経済新聞]
5. 自動運転、メタバース、NFT…「CES 2022」関連記事まとめ
1月5日から8日まで、米国ラスベガスで開催されている国際的なデジタルテクノロジーの展示会である「CES 2022」に関するレポート記事が掲載されつつある。年末からの新型コロナウイルス(オミクロン株)の感染拡大を受け、大手の事業者が直前での出展取りやめを発表している(TechCrunch日本版、TechCrunch日本版)。さらに、ジャーナリストの多くが取材での渡米を断念しているようだが、来週にかけて個別の製品や全体を俯瞰するコメントなども投稿されることになるだろう。
そのようななかでも、ショーを通じたテクノロジーのトレンドが見えてきている(ITmedia)。1つは自動車分野である。ソニーが新会社「ソニーモビリティ」を設立し、本格的に電気自動車分野へ参入すると発表したことは大きなニュースとなったが、それ以外でも、自動運転のための要素技術(The Bridge)などに目を見張るものがある。また、いうまでもないことだが「メタバース」についての話題も多い(TechCrunch日本版)。ハードウェアとしてはゴーグルなどの表示装置、プラットフォームシステムなどである。さらに、サムスンは「テレビ上でNFTのデジタルアート作品を探し、鑑賞できるプラットフォームで、NFTの購入・取引もできる」とするテレビを発表(Impress Watch)して、昨今の市場動向に敏感に反応している。
各社とも、2022年からいよいよ本格的な製品投入へのタイミングを見据えつつある。
ニュースソース
- CES 2022: Nvidia、自動運転プラットフォーム「DRIVE Hyperion 8」を各社のEVやトラックに試験導入へ[The Bridge]
- CES 2022パナソニックの主な出展内容[ASCII.jp]
- CES 2022会場出展を断念する企業が続出、オミクロン株感染拡大受け[TechCrunch日本版]
- CESに実物大「日本家屋」 カーボンニュートラルデザイン[Impress Watch]
- メルセデスやBMWもCES出展を断念、パナソニックは会場での会見中止[TechCrunch日本版]
- 現代自動車、メタバースにボストンダイナミクスのロボット「Spot」を送り込む[TechCrunch日本版]
- 米家電見本市「近未来」の仮想現実や自動運転が続々[ITmedia]
- サムスン、NFTアートを鑑賞・売買できるテレビ[Impress Watch]
- クルマにFire TVを搭載。Amazonが車載展開を強化[Impress Watch]