中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/1/6~1/13]

納税、教育、ワクチン接種――デジタル化推進のまとめ ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 納税、教育、ワクチン接種――デジタル化推進のまとめ

 確定申告の時期を前に、国税庁の国税電子申告・納税システム(e-Tax)において、二次元バーコードをスマートフォン端末で読み取る方式により、マイナンバーカード方式によるe-Tax送信ができるようになったことを発表した(ケータイWatch)。マイナンバーカードを読み取れるスマートフォンがあれば、ICカードリーダーを用意したり、ソフトウェアのセットアップは必要なくなる。ちょっとしたことだが、年に一度の作業のために苦労をしていた人は多いようなので、朗報といえるだろう。

 また、年末にリリースされた「ワクチン接種証明書アプリ」での証明書発行件数は1月9日時点で270万件になったことを公表した(ケータイWatch)。旧姓併記の不備を除き、大きな問題も報じられていないよう。

 そして、新たにデジタル庁は「2030年ごろをめどに個人が幼児教育から生涯にわたる学習データを一元的に管理できる仕組みを構築する教育のデジタル化の工程表」を発表したと報じられている(ITmedia)。この仕組みにより、「個人は学習履歴に合わせた指導や行政支援を受けることができ、社会人になってからも職業訓練や生涯学習で生かせる」としている。また、「民間事業者は匿名化したビッグデータを使って、教材の開発などのビジネスにつなげることもできる」としている。しかし、こうした情報が記録され、共有されることによる弊害について懸念する声もあるようで、今後の情報の扱いや共有の範囲については議論が必要そうだ。

 さらに、総務省は「デジタル田園都市国家構想」に向けた当面の予算案を公表した(ケータイWatch)。総務省の事業は「デジタル基盤の整備」「デジタル人材の育成・確保」「地方の課題を解決するためのデジタル実装」「誰一人取り残されないための取組」の4本の柱があり、それぞれについての具体的な内容も示されている。

ニュースソース

  • e-Tax、スマホがあればICカードリーダーは不要に[ケータイWatch
  • デジタル庁、教育デジタル化の工程表発表 個人の生涯学習データを一元管理[ITmedia
  • ワクチン接種証明書アプリ、証明書発行件数は270万件超に[ケータイWatch
  • 政府の「デジタル田園都市構想」、総務省はどんな取り組みをする?[ケータイWatch

2. 「世界のアプリ支出額」は20兆円、前年比20%増――アップアニー調べ

 モバイルアプリに関する調査会社アップアニー(App Annie)が「State of Mobile 2022(モバイル市場年鑑2022)」を公表した(Forbes Japan)。

 それによると、「2021年に人々はかつてないほど多くの時間をモバイルアプリに費やし、米国人は起きている時間の平均3分の1を消費していた」という。また「上位10カ国の平均的なユーザーは昨年、1日あたり4.8時間をモバイル上で過ごしていた。これは起きている時間の約3分の1に相当し、利用時間は2019年から30%増加していた」としている。そして「世界の消費者がアプリに費やした金額は1700億ドル(約19.5兆円)で、2020年から20%近く増加していた」ということから、消費経済の影響も大きい。

 スマートフォンの普及はもとより、モバイルサービスの充実(社会的にもそれを前提とする)、コロナ禍によるデジタルでの活動の増加など複数の要因は考えられるが、急速にスマホアプリへの依存が進んでいるといえそうだ。

ニュースソース

  • 2021年の「世界のアプリ支出額」は20兆円、前年比20%増[Forbes Japan

3. アップルのコンテンツ事業とサービス事業の業績は順調に拡大

 数年前から、アップルは従来のハードウェアの売上だけでなく、コンテンツやサービスの売上を伸ばす施策に力を入れてきている。

 1月10日、アップルは「App Store」がスタートした2008年からこれまでの間に「開発者がストアで累計2600億ドル(約30兆円)を超える収益を上げている」と公表した(ZDnet Japan)。App Storeは現在、175カ国、毎週6億人に利用されるまでに成長をしている。

 また、「Apple Fitness+」「Apple TV+」「Apple Arcade」などのサブスクリプションサービスの加入者は7億4500万人を超え、10億台を超える端末で利用されているとしている(CNET Japan)。さらに、「Apple Wallet」のユーザーが2021年に使用したコンサートやスポーツの試合などのデジタルチケットは3000万件に上り、「2022年には、自宅の鍵、社員証、州発行の身分証明書、運転免許証が、Apple Walletでサポートされる予定」だという計画も表明している。

 スマートデバイスはコンテンツを利用するだけでなく、所有者のアイデンティティを証明する基盤として成長をしていくことになりそうだ。

ニュースソース

  • アップル「App Store」、開発者の累計収益は30兆円規模[ZDnet Japan
  • アップルの有料サービス利用者数は7億4500万人超に[CNET Japan

4. 新たにリリースされたAI技術を応用した各種サービス

 最近発表されたAIの技術を応用したいくつかのサービスを紹介しておく。

 NTTドコモ、フォアキャスト・コミュニケーションズ、日本テレビ放送網はニュース記事の自動要約サービス「自動要約AI(β版)」の提供を開始した(ケータイWatch)。「あらかじめ指定した文字数や文章数にもとづいて要約する『文字数指定機能』および『文数指定機能』や、要約結果に反映したいキーワードを指定する『ヒント機能』、国内初となる『タイトル機能』『位置特定機能』を備える」もので、「提供期間は6月30日までで、利用料金は無料。また、サービスの利用にはメールアドレスの登録による申込が必要となる」としている。

 ゼンプロダクツは昨年7月に「Shodo(ショドー)」という文章校正ツールを発表しているが、今回はブラウザー上で利用できる無料版を公開している(INTERNET Watch)。有料版に比べて機能は制限されている。

 そして、筑波大学落合研究室は「御朱印2.0」という「テキストから御朱印を自動生成する学習ベースのシステム」を開発した(ITmedia)。寺社1000カ所以上を訪問し取得した御朱印を基に大規模にデータ化したとしている。御朱印の収集をしている人は多いが、「御朱印風」のオリジナルなデザインを作ることができるという意味で面白い。

ニュースソース

  • テキストから御朱印を自動生成するシステム、筑波大が開発 寺社1000カ所以上から御朱印収集、データ化[ITmedia
  • ドコモら3社、ニュース記事の自動要約サービス「自動要約AI(β版)」を提供開始[ケータイWatch
  • ブラウザー上で動作する無料のAI文章校正ツールが公開中、全25項目を無料でチェック[INTERNET Watch

5. コロナ禍でも意欲的な新技術とアイデアあれこれ――CES 2022のまとめ

 2022年のCESはラスベガスの展示会場とオンラインでのハイブッドでの開催となった。新型コロナウイルス(オミクロン株)の感染拡大により、主要な事業者の出展取りやめが発表されたが、それでも各社からは意欲的なアイデアや技術を搭載した製品が出品されたようだ。この1週間で目についた記事を下のニュースソースに挙げておく。

 この中で着目すべきは、ソニーの電気自動車(EV)への参入検討表明だろう(Engadget日本版)。いよいよ自動車メーカー以外の電機メーカーが参入するということは、国際的にもインパクトがあったのではないだろうか。アップルのEV参入なども時折、予測記事が出ることもあるが、今後、水面化で進む各社の戦略、そして関連企業間でのお互いの牽制なども活発になるのではないかとみられる。

 また、新たなキーワードもいくつか登場している。1つは「エイジテック」だ(TechCrunch日本版)。「テクノロジーが高齢者の生活をもっと快適にする助けになるなら、他の多くの人々の助けにもなる」という考えだ。まさに日本では高齢化が進んでいるが、この数年でより利便性の高いソリューションが登場することも期待できそうだ。

 そして、事前の予想どおりスマートホームやメタバースに関連する話題も多かったようだ。とりわけ、「エンタープライズ・メタバース」(The Bridge)という単語が出ていることろに注目をしておきたい。エンターテインメントではなく、企業活動でメタバースを利用するということである。リモートワークでの活用はもちろん、ここに新しい経済活動が生まれる可能性もある。

 ますますデジタルテクノロジーを活用する事業は活発化していて、その変化も急速であることを改めて感じる。

ニュースソース

  • 「高齢者に役立つテクノロジーはすべての人の役に立つ」とスタートアップはCESで示す[TechCrunch日本版
  • Amazonが「CES 2022」で発表した内容とは――「アレクサ、私を月へ連れていって」など[ケータイWatch
  • BMW、E Inkでボディの色を変えられる技術[Impress Watch
  • CES 2022: AIが推進するスマートテックのイノベーション(前編)[The Bridge
  • CES 2022: AIが推進するスマートテックのイノベーション(後編)[The Bridge
  • CES 2022: Appleシリコンの優位性喪失とラップトップの突然変異[The Bridge
  • CES 2022: John Deere、自動運転トラクターを年内実用化へ——乗用車技術が通用しない業務特化車分野に強み[The Bridge
  • CES 2022: 仕事に使えるエンタープライズ・メタバースの未来——HMD不要、リアルさ追求には5Gがカギに[The Bridge
  • CES 2022でスマートホームデバイスの接続規格「Matter」に注目が集まっている理由[TechCrunch日本版
  • CES 2022に出展された電動自転車や電動スクーターは、よりパワフルに、よりスマートに[TechCrunch日本版
  • CES 2022のビッグニュース[TechCrunch日本版
  • CESに合わせて動きだした2022年の「フードテック」…キノコテック、代替肉フライドチキン、自動宅配ロボも[BUSINESS INSIDER
  • アボットが、一般向けバイオウェアラブルの開発をCESで発表[TechCrunch日本版
  • ソニーがテック業界に残すインパクトとは。CES 2022出展を振り返る[Engadget日本版
  • 甘噛みするネコなど興味深い製品を世界にアピール。過去最高数の国内スタートアップ52社がCES出展 ~CES展示会場レポート[PC Watch
  • 東大発ベンチャーがCES Innovation Award3部門受賞の首掛け端末[日経XTECH
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。