中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/7/14~7/21]

コミック海賊版の現状と対策――抜本的対策は未だ困難 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 巧妙化する手口から身を守る知識――「情報セキュリティ白書2022」

 今年も独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が「情報セキュリティ白書2022」を発行した(INTERNET Watch)。PDF版はIPAのウェブサイトでアンケートに答えることで無料ダウンロードが可能。紙書籍版は2200円で販売もされる。

 いうまでもなく、日々、さまざまなセキュリティインシデントが報告されている。攻撃対象となっているのは組織だけでなく、個人も同じ。しかも、手口は巧妙化していることから「いま、どのような手法が使われているのか」ということを知っておくことは、現実世界で事件や事故から身を守るのと同じく、どこのリスクがあるかを知るのは基本的なリテラシーともいえる時代だ。決して、組織の専門部門やその担当者だけの知識ではない。ぜひとも入手の上、一読をお勧めしたい。

ニュースソース

  • IPA、国内外の動向を網羅した「情報セキュリティ白書2022」を発売。PDF版は無料ダウンロード可能[INTERNET Watch

2. コミック海賊版の現状と対策――抜本的対策は未だ困難

 総務省の「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会」が海賊版の現状に関する資料を公開した(ITmedia)。それによると、「2021年に海賊版マンガサイトでタダ読みされた金額は、試算可能なだけで1兆19億円」になるとしている。この規模は「コミック市場の販売金額(6759億円)を上回る規模」だということだ。

 閲覧方法として、これまでのようなファイルのダウンロード方式から、オンラインで閲覧する方式へと移行してきているようだ。

 海賊版の対策は数年前より議論はされてきており、「広告出稿の抑制」「CDNサービスでの対策」「検索流入の抑制」をその方法として挙げているが、いずれも決定打となるような技術的対策、運用的対策、そして法的対策は難しそうだ。

 そのようななか、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が「中国の重慶市文化市場総合執法総隊が、漫画の海賊版サイト『漫画BANK』など複数の海賊版サイトを運営していた重慶市在住の男性1人に対し、情報ネットワーク伝達権保護条例違反で行政処罰を下した」と発表をしている(CNET Japan)。摘発された漫画BANKは中国に拠点を置くが、日本の漫画作品を違法に閲覧できるようにしていて、「ABJの試算では、開設期間中(2019年11月~2021年10月)の合計アクセス数は9億9370万。タダ読みされた金額は、コミックス販売価格換算で2082億円相当」と推計している。もちろん、こうした検挙するような事例を各国と協力しながら積み重ねることを継続する必要もあるが、一方で、海賊版サイトは閉鎖と開設を繰り返すという傾向があることも指摘されていて、海賊版を撲滅するための道筋は見出されていない。

ニュースソース

  • 海賊版サイトの“タダ読み”被害額、コミック市場規模を上回る 総務省検討会が中間報告[ITmedia
  • 「漫画BANK」運営者、中国重慶市で行政処罰--2082億円相当がタダ読み[CNET Japan

3. PayPayユーザー数がいよいよ5000万人へ

 QRコード決済のPayPayの登録者数が4900万人を突破したと発表された(ITmedia)。記事によれば「サービス開始から約3年9カ月で登録者数5000万人を目前」としているとして、急速な普及を遂げたことを伝えている。もちろん、登録者なので、その人がアクティブに利用しているかどうかは別の調査も必要とされるが、このタイプの支払いアプリとしては圧倒的な登録者数である。なお、今年4月の同社の発表によると「加盟店の数は、366万カ所を超え」、さらに「2021年4月~2022年3月の1年間にPayPayで決済された回数は36億回を超えた」としている。

 これまでの急拡大は大規模なテレビCMによる認知向上やキャッシュバックキャンペーンなどの施策が奏功したことによると思われる。当面はこうした先行投資のフェーズが続くものとみられるが、事業としては黒字化が今後の大きな課題である。

ニュースソース

  • 「PayPay」ユーザー数5000万人目前、eKYC完了ユーザーは1000万人突破[ITmedia

4. グリーがマンガ事業へ参入――「DADAN株式会社」設立

 電子コミックの市場は大きな拡大を続けている。ちょうど1年前に発表された調査結果でも、2020年度の電子コミック市場規模は4002億円で、対前年から1000億円以上の拡大をしているという(インプレス総合研究所調べ)。一方で、海賊版問題など、大きな解決すべき課題も多い。しかしながら、すでに大手出版社の決算でも、電子コミックが売上全体のなかでも大きな柱となっている。

 そうした市場にグリーが参入を発表した(Impress Watch)。100%子会社のDADAN株式会社を設立し、「マンガプラットフォーム事業、マンガ制作スタジオ事業を立ち上げ、縦読みマンガを主軸に企画・制作」することを主な事業とする。サービス名は「DADAN(ダダン)」で、2022年の冬にスタートの予定としている。ポイントは「縦読みマンガ」の企画・制作という点だろう。このフォーマットはスマホユーザーに支持されているが、この分野でのプレーヤーが増えることで、さらに活性化することになりそうだ。

ニュースソース

  • グリーが縦読みマンガ参入 「ダダン」今冬開始[Impress Watch

5. 米マイクロソフトが「Excel Live」を発表

 米マイクロソフトがMicrosoft Teamsの新機能として「Excel Live」を発表している(ITmedia)。今後、8月末にはパブリックプレビューが開始される計画のようだ。

 記事によれば「これまでも、TeamsではExcelの画面を共有することもできたが、あくまでも画面共有で他の人は操作されている画面を眺めていることしかできなかった。これに対してExcel Liveでは、Teams上でミーティングをしながら、リアルタイムで共同編集を行えるようになる」という。

 新型コロナウイルスの感染拡大以降、多くの人がリモートワークを取り入れて、協働作業にも慣れてきたところでもあるが、こうして主要なアプリケーションに双方向での操作性が付加されることで、さらにリアルな協働に近づき、仕事の進め方も変わりそう。

ニュースソース

  • Microsoft Teamsでミーティング中にリアルタイムの共同編集が行える新機能「Excel Live」を追加[ITmedia
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。