中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/8/25~9/1]

SNSを背景とするデジタル化に伴う消費者問題 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. いよいよスマートフォンでの衛星通信サービスは始まるのか

 2022年モデルとなるiPhone 14の発表日が9月7日に予定されている。当然、発表されるであろう新製品の仕様はいまだ明らかではないが、「ノッチレスのディスプレイとアップグレードされたカメラが搭載され、価格が高額になるなどの臆測」がなされていることはよく知られているところだ(CNET Japan)。そのようななか、「Appleが『iPhone 14』に搭載予定とされている衛星通信機能について、同機能のハードウェア関連のテストが、量産を前に完了した」と報じられている(CNET Japan)。もちろん、正式な発表ではなく、その提供開始時期、提供エリア、料金などはまったく明らかになっていない。

 さらに、Space Xと米国の通信大手T-MobileがSpace Xの衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」にT-Mobileのスマートフォンを接続可能にする計画「Coverage Above and Beyond」を発表したと報じられている(Impress Watch)。

 この2つの話題は共通するのかどうかも分からないが、いずれもこれまでの衛星インフラの配備状況などを考えると決して夢の話ではなさそう。実現すれば、現在はカバーできていないエリアが一気に通信可能エリアとなる。

ニュースソース

  • アップル、「iPhone 14」の衛星接続テストを完了か-著名アナリスト[CNET Japan
  • スマホがスターリンク衛星と直接通信、全米をカバー。T-Mobile×Starlink[Impress Watch

2. AR/VRヘッドセットの本命が登場間近

 メタ(旧フェイスブック)のCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏が「新しい仮想現実(VR)ヘッドセットを10月に発表する」と明らかにしたことが報じられている(CNET Japan)。昨年から開発を表明していて、今年5月には試作品を公開していた。

 一方、アップルは「reality(現実)」という単語を含むさまざまな商標出願を行っている。情報筋によれば、「2023年1月のイベントでヘッドセットを発表する見通し」ともされている(CNET Japan)。

 このように、本年末から来年初めにかけ、大手企業からARやVRのハードウェアが提供され始めることから、より具体的なサービスやコンテンツとしても充実していくことが予測される。

 加速させるために必要なことはキラーコンテンツということか。各国とも、水面下ではすでに開発競争も行われているのだろう。

ニュースソース

  • Meta、次期VRヘッドセットを10月に発表へ-ザッカーバーグCEOが明らかに[CNET Japan
  • アップル、ARヘッドセットの名称候補を商標出願か[CNET Japan

3. 寺田総務大臣が「TikTok調査」に対してコメント

 寺田稔総務大臣は記者会見で「利用者の意図に反してアプリが情報を外部に送信するといったセキュリティ上の懸念に対し、さまざまなアプリの挙動を検証し、実態確認に向けた課題を整理する」と述べたことが報じられている(ケータイWatch)。これは「総務省がTikTok調査」をするという趣旨の一部メディアの記事に対してコメントしたもので、「特定のアプリを念頭に置いたものではない」とし、あくまでも経済安全保障の観点から見た懸念に対応するための施策ということだ。

 これまで、2020年にはかつての米国トランプ政権下で「動画アプリの『TikTok』を提供するバイトダンス(ByteDance)と、コミュニケーションアプリ『WeChat』を提供するテンセントとの取引を禁じる大統領令を発した」こともあった(ケータイWatch)。その後、2021年6月にはバイデン政権下ではこの大統領令を取り消したという経緯もある。また、2021年、多くの日本人が利用しているLINEで、利用者の個人情報が中国の関連会社の従業員によってアクセス可能であった事案が問題として指摘されたことは記憶に新しい。

 その後、他のアプリが問題として指摘された大きな事案はないようだが、アプリの国際的なエコシステムのなかには引き続き共通する課題が内在していて、本質的な解決がなされたわけではないことは念頭に置いておくべきなのだろう。

ニュースソース

  • 寺田総務大臣、「総務省がTikTok調査」報道にコメント[ケータイWatch

4. 文化庁が「インターネット上で海賊版による著作権侵害を受けたときの相談窓口」開設

 文化庁では「インターネット上で海賊版による著作権侵害を受けたときの相談窓口」を開設したことが報じられている(ITmedia)。

 記事によれば「著作権などの侵害に関する権利者からの相談を、サイト内の専用フォームで受け付け」て、「相談には原則として電子メールで回答するが、場合によっては弁護士と無料でオンライン面談できる機会を提供する」という流れになる。

 大手出版社は被害の規模も大きく、それぞれの専門の法律家らが対応にあたっているようだが、他の出版社でも泣き寝入りすることなく、問題を明らかにして対応を検討することが可能になりそうだ。

ニュースソース

  • 海賊版による著作権侵害の相談窓口 文化庁が開設[ITmedia

5. SNSを背景とするデジタル化に伴う消費者問題

 内閣府消費者委員会は「デジ゙タル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ報告書」を公表した(内閣府)。

 SNSを使った情報商材、転売ビジネス、副業などの消費者生活相談の事例、課題の検討、解決のための検討課題などがまとめられている。

 このなかでは「SNS関連の消費生活相談件数の推移」が統計資料として掲載されているが、2021年は5万406件となっていて、2019年の2万5199件からおよそ倍増していることになる。とりわけSNSを利用する事案が増加傾向にあり、こうした事案での「ツール」に利用されやすくなっている。

 報告書は「近年、SNSを端緒とした消費者トラブルの未然防止が重要となっているように、デジタル社会に対応した消費者教育において習得が望まれる内容も刻々と変化している。既に消費者教育を受けている世代も含め、幅広いバックアップが必要であることから、消費者教育で習得すべき内容についても、デジタル化の進展を踏まえて継続的に検討していくことや、デジタル社会に対応した消費者教育をライフステージに応じ体系的に進める等、消費者のデジタルリテラシーの向上を検討していくことも重要と考えられる」とまとめている。

ニュースソース

  • デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ報告書[内閣府
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。