中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2023/2/9~2/15]

映画「Winny」まもなく公開 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 映画「Winny」まもなく公開

 ファイル共有ソフト「Winny」を使うことで、違法なコンテンツが流通したり、Winnyをインストールしたパソコンに保存していた機密文書やプライバシーが流出したりする事件が、かつて相次いだ。その開発者である金子勇氏が著作権法違反ほう助容疑で逮捕・起訴された「Winny事件」を題材にする映画「Winny」が3月10日に公開される(ITmedia)。それに先立ち、同映画の製作委員会は映像の一部を公開した。

 当時、金子氏の逮捕に関し、「自ら著作権侵害していなくても、ソフトを開発しただけで逮捕されるのは不当」「開発者の萎縮につながる」などの声が技術者らを中心として上がった。逮捕から7年後の2011年には最高裁で無罪が確定したが、金子氏は2013年7月に42歳で死去した。

 すでに事件からはおよそ20年が経過していて、こうした出来事を知らない若い世代も多くなっているだろう。映画の中で事実関係をどのように描いているか、どう演出しているかは公開前なので分からないが、この映画公開を契機に、事件を振り返ったり、知ったりすることは意義がある。

ニュースソース

  • “Winny事件”題材の映画「Winny」、本編映像を一部公開 公開は3月10日[ITmedia
  • 日本が失った天才、金子勇の光と影[WIRED日本版

2. ソースネクストから個人情報・カード情報10万件超が漏えいか

 ソースネクストのウェブサイトに不正なアクセスが行われ、顧客の個人情報12万982件およびクレジットカード情報11万2132件が漏えいした可能性がある(INTERNET Watch)。「漏えいした可能性がある項目は、個人情報では、氏名、メールアドレス、郵便番号、住所、電話番号の5点。パスワードの漏えいはないとしている。クレジットカード情報では、カード名義人名、クレジットカード番号、有効期限、セキュリティコードの4点」とされている。とりわけ、クレジットカードに関してはセキュリティコードまで漏えいしていて、即座に悪用されるリスクがある。もちろん、カード会社でも該当するカードの使用については監視を強化しているはずだが、該当する人は留意が必要だ。

 こうした事件はたびたび発生するが、細かい漏えい情報を名寄せすれば、より大きな個人情報のデータベースが構築されてしまう可能性がある。そうした情報は詐欺や犯罪の材料に利用されかねない。カード番号が不正に利用されて買い物されるというだけの局所的な問題ではない。何か抜本的な対策が出てこないと解決しようがなさそうだ。

ニュースソース

  • ソースネクストに不正アクセス、個人情報・カード情報10万件超が漏えいの可能性[INTERNET Watch

3. グーグルとJASRACが新たな許諾契約を締結

 グーグルと日本音楽著作権協会(JASRAC)が「YouTube上でのJASRACの管理楽曲の利用」について、新たな許諾契約を締結したと報じられている(ケータイWatch)。これはYouTubeにおける著作権で保護されたコンテンツを識別するためのシステム「Content ID」を利用して、権利者への正確な収益分配を目指すものとされている。

 YouTubeに投稿された動画にJASRAC管理楽曲が含まれていることをシステムが検知すると、動画投稿者に対してJASRACから「著作権の申し立て」通知が届く。この通知が届くと、これまで広告が表示されなかった動画にも、広告が表示されるようになり、広告収益の一部が著作物使用料として、JASRAC経由で楽曲の権利者へ分配されるという仕組みだ。この通知は著作権侵害を主張するものではないので、動画投稿者は動画を削除したり、非公開にしたりする必要がないということだ。ある意味では合理的なシステムといえそう。他方、楽曲の権利者の立場としては拒絶するという選択肢もあるのだろうか。

ニュースソース

  • グーグルとJASRAC、YouTubeでの音楽利用に関する新契約[ケータイWatch

4. 「第28回 AMDアワード」授賞作品が発表される

 一般社団法人デジタルメディア協会(AMD)は優秀なデジタルコンテンツなどの制作者を表彰する「デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー'22/第28回記念AMDアワード」の授賞作品を発表した(INTERNET Watch)。年間コンテンツ賞となる「優秀賞」は、「ウタ」(ONE PIECE FILM RED製作委員会)、「ELDEN RING」(株式会社フロム・ソフトウェア/株式会社バンダイナムコエンターテインメント)、「きつねダンス」(株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)など10タイトルが選出された。3月7日開催予定の贈賞式の場で「大賞/総務大臣賞」および「AMD理事長賞」が発表される。この様子はその様子はニコ生とYouTubeで配信される。

ニュースソース

  • AMDアワード、優秀賞に「ウタ」「ELDEN RING」「きつねダンス」など10件[INTERNET Watch

5. 紙と画面の読解力への影響――「深い呼吸の抑制」と「前頭前野の過活動」

 紙に印刷された文字を読むのと、画面に表示された文字を読むのとでは、読み・理解することに何らかの違いはあるのか。これはパソコンが普及したころから折りに触れて話題になってきた課題でもある。近年、電子書籍や電子教科書が一般化するにあたり、この問題に対して科学的な根拠も求められるようになってきた。

 昭和大学の研究チームが「スマートフォンで読書すると読解力が落ちる」という研究結果を発表している(Gigazine)。記事によれば「研究チームは、34人の被験者に対して『ノルウェイの森』と『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を紙の書籍とスマートフォン上の電子書籍のいずれかの形式で読ませ、内容に関する複数の質問に回答させ」たという。その結果、「スマートフォンで読書した場合、紙の書籍を読んだ場合と比べて正答率が低くなる」という結果が得られたとしている。要因としては「『深い呼吸の抑制』と『前頭前野の過活動』が相互作用して読解力の低下」が起こる可能性を指摘している。

 経験上、何となく感じていたことでもあるが、こうした結果をどう捉えるべきなのか。だからといって、電子教科書がよくないというつもりもないのだが。そもそも、こうした反応はあまねく人に共通のことなのか、それともデジタルネイティブたちにはあまり関係がないのか。そして、文字数が短ければ問題がないのかとかも気になる。近ごろ、「タイパ」が好まれる理由も、こうした脳の活動と関係があるのかもしれないとも感じる。

ニュースソース

  • スマホで読書すると読解力が落ちることが日本の研究によって示される[Gigazine
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。