中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2023/12/21~12/27]
生成AIを前提とする著作権の「考え方(素案)」が公表される ほか
2024年1月5日 13:20
1. 生成AIを前提とする著作権の「考え方(素案)」が公表される
2023年12月20日に開かれた文化審議会著作権分科会法制度小委員会(文化庁)では「AIと著作権に関する考え方について(素案)」が公表された(文化庁)。
現在の著作権法では、インターネットの検索サービスなどを想定し、コンテンツをクロールするのと同様、生成AIがコンテンツを学習することは、原則として、権利者の許諾なく行えるという理解がされてきた。しかし、今回の素案では「生成AIに著作物を学習させる場合でも、著作物の一部を出力させる目的がある場合などには、権利者の許諾が必要となる」という方向性での案を示している。
これまでは主に、検索サービスを念頭に置いてきたが、生成AIによるコンテンツを利用することによるインパクトが強まってきたことから、昨年、日本新聞協会などの業界団体も生成AIを想定したルールの策定を求めてきている(日本新聞協会)。
文化審議会著作権分科会法制度小委員会では、さらに議論を深め、今年度末には何らかの具体案を示すスケジュールである。
2. ニューヨークタイムズがOpenAIとマイクロソフトを提訴、AIでの学習をめぐり
2023年12月27日、米国の大手新聞社ニューヨークタイムズは、AIの学習のために、ニューヨークタイムズのコンテンツを無許可で使用したとし、OpenAIとマイクロソフトを相手取り提訴をした(New York Times)。これを報じるニューヨークタイムズの記事によれば、著作物の違法なコピーと使用について数十億ドルの損害賠償とニューヨークタイムズの著作物を使用したチャットボットのモデルやトレーニングデータの破棄を求めている。
また、アップルは自社の生成AIの開発にあたり、出版社や報道機関との交渉を始めていることが報じられている(ロイター)。アップルがAIに取り組んでいるということが表面化していることにも目をひかれるのだが、それよりも交渉内容として「アップルは記事データ使用許可に関して少なくとも5000万ドル相当の複数年契約を持ちかけている」と報じられていることはとても興味深い。
前の項目でも紹介したように、日本の文化審議会著作権分科会法制度小委員会でも、生成AIによるコンテンツの学習について、一定のルールを設ける方向性をもった素案が示されている。今後、こうした海外での動きが参考となり、日本での議論の下地となる可能性もあることから、注目をしておくべき記事と思う。
ニュースソース
- The Times Sues OpenAI and Microsoft Over A.I.’s Use of Copyrighted Work[New York Times]
- アップル、AI開発での記事データ使用を出版社などと交渉=米紙[ロイター]
3. auのテレビCM「三太郎シリーズ」が生成AIを利用
KDDIは、auのテレビCM「三太郎シリーズ」に生成AIを導入した。年始には、生成AIでこれまでのCMをアニメーションにリメイクした「三太郎シリーズ」を放映した(Markezine)。
また、生成AIでオリジナルミュージックビデオを作れる特設サイトも公開した。ユーザーが2024年のやりたいことを入力すると、内容に応じて歌詞、イラスト、歌声を生成AIが作成し、AIシンガーが歌うという趣向だ。
これまでも生成AIを使ったCMの取り組みが報じられてきているが、もはやこの業界では当たり前のクリエイティブツールとなりつつあるようだ。
ニュースソース
- KDDI、生成AIによるau「三太郎シリーズ」コンテンツを公開へ CMリメイクやMV作成をAIで実現[Markezine]
4. 「解約.com」がSNSで話題に
「加入しているサブスクリプションサービスの解約方法が分からない」という例は少なくないのではないか。サービスを提供する事業者側からすれば、そう簡単に解約ボタンを押されても困るという事情は想像に難くはないのだが……。
さて、そんな「困った」を解決するのが「解約.com」だ(ITmedia)。おりしも、年末でアカウントの整理をしようとする人が多かったからかもしれないが、この話題がSNSで盛り上がったようだ。あくまで、個人が運営するサイトのようだが、「ありそうで、なかった」画期的なコンテンツだ。このサイトの運営者であるbannzai氏は「マネタイズの手段も探っていきたい」とも述べている。
ニュースソース
- 「サブスク解約したいけど、手続き分からん」に救世主 「解約.com」が話題 開発経緯を聞いた[ITmedia]
5. 米国ではApple Watchの一部モデルが販売停止へ
アップルは、米国のオンラインストアで「Apple Watch Series 9」と「Apple Watch Ultra 2」の販売を停止した(ケータイWatch)。これは、米国際貿易委員会(ITC)の輸入禁止措置が命じられたことによるもので、アップルのこれらの製品に含まれる血中酸素濃度測定システムに関わる特許をアップルが侵害しているという米裁判所の判決を受けたことによる。なお、日本での影響は今のところないという。また、今後、どのような対応が行われるのかは明かにはされていない。事態の推移を見守るしかなさそうだ。
ニュースソース
- 「Apple Watch」一部モデルが米国で販売停止報道、国内のキャリア販売はどうなる?[ケータイWatch]