中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2024/1/4~1/10]

能登半島地震被災地への通信インフラの対応 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 能登半島地震被災地への通信インフラの対応

 令和6年能登半島地震の影響が日を追うごとに明らかになるにつれ、その被害の甚大さに心が痛む。

 こうした状況下でも、これまでの災害の経験を踏まえた通信インフラの確保については比較的スムーズに行われているようだ。その中でも新しい取り組みとして興味深いのは、携帯通信事業者がさまざまな方法での基地局を展開していることだ。ソフトバンクやKDDIは衛星通信網のスターリンクを投入し、地上のインフラが寸断されていても、上空での通信網の確保をした。また、ドコモとKDDIは「船上基地局」を設置した。被災地が海沿いであったことから、こうした方法が展開できたのだろう。また、ソフトバンクはドローンでのインフラも用意した。いずれも、これまでの震災被害を踏まえてのものだが、理論上のアイデアだけではなく、実際に展開できるということを示した意味がある。

 また、情報提供面では、LINEヤフーの「災害マップ」、トヨタの「通れた道マップ」なども公開されている。

 ただし、電源の枯渇だけはなんともならない。モバイルバッテリー、ポータブル電源、電気自動車などの蓄えられた電源をもとに、電源復旧までの時間を持たせるしかない。

 こうしたノウハウが活用されるような災害だけは起こらないことが望ましいが、万が一の際に活かせるノウハウとして、蓄積されていることは心強い側面もある。

ニュースソース

  • 4キャリアが能登半島地震に伴う支援措置 支払い期限の延長、付属品の無償提供など[ITmedia
  • LINEヤフーの「災害マップ」で給水所やトイレなどの情報を追加、新潟・石川・富山3県[ケータイWatch
  • NTT西日本、能登半島で固定電話・ネットが使えなくなるエリア最新版を公開 非常用電力の枯渇で[ケータイWatch
  • トヨタ、被災地の「通れた道」マップ公開もアクセス集中 「情報を必要としている方のみ開いて」[ITmedia
  • ソフトバンク、被災地に「Starlink Business」を100台追加[Impress Watch
  • ソフトバンク、被災地に「Starlink Business」無償提供[Impress Watch
  • 避難所に衛星ブロードバンド「スターリンク」350台 KDDIとスペースX[Impress Watch
  • ソフトバンクがドローンで携帯の電波を中継、能登半島地震で運用開始[ケータイWatch
  • ドコモとKDDIが「船上基地局」、能登半島地震[ケータイWatch

2. 非常時の「偽情報」には要注意

 令和6年能登半島地震でも「偽情報」がSNSなどで拡散されたことが報じられている。

 主な手口は、今回の地震とは関係のない映像を流したり、論拠の不確かな情報を流したりするものだ。また、具体的な事案は報じられていないようだが、生成AIによる架空の動画や画像が流布されることは想像に難くない。

 この背景には、投稿者の「収益化」があるとされている。刺激的な情報を流すことで閲覧数を稼げば、なんらかの収益が得られるというモデルだ。

 ある種のマーケティングツールとして考え出されたこのモデルも、災害時の情報拡散と結び付くととんでもないことになる。

 こうした偽情報の技術的な撲滅は難しいのだろうか。それまでは私たちが情報を冷静に選別をするしかないのか。

ニュースソース

  • SNSで“人工地震が原因”など不安あおる偽情報投稿 拡散[NHK
  • SNSで地震や津波の偽情報が拡散 冷静な対応を[NHK
  • 能登半島地震、Xで津波や救助要請のデマ拡散 背景に広告収益[毎日新聞
  • 能登半島地震で「偽情報がネットで拡散」、総務省が注意よびかけ[ケータイWatch

3. 「CES 2024」開催――キーワードは生成AI、モビリティ、スマートホーム、ゲーミング、デジタルヘルス、ロボティックス

 米国時間1月9日~1月12日、世界最大のデジタル関連展示会となる「CES 2024」が開催されている。それに先立ち、世界の報道関係者向けの記者会見などが開催されていて、すでに多くのニュースが報じられている。

 その中で、主催団体であるCTA(Consumer Technology Association)は、今回の展示会の見どころを解説している。それによれば、「生成AI」「モビリティ」「スマートホーム」「ゲーミング」「デジタルヘルス」「ロボティックス」がキーワードになるようだ。とりわけ生成AIについて、CTAテーマ別研究担当部長のブライアン・コミスキー氏が「AIそのものが今やさまざまな産業のエコシステムのようになっている。自動車、スマートホーム、ゲーミングなどさまざまな産業の、見えないところで、AIが使われるようになっている」として、さまざまな産業がAIを活用することで、新しいアプリケーションを生み出していると述べている(PC Watch)。

 なお、逐次アップデートされる情報はImpress Watchの「CES 記事一覧」(Impress Watch)でチェックすることができる。

ニュースソース

  • CES 2024は昨年比15%増の床面積で4,000社以上が参加。日本からも大企業が参加しデジタル化推進[PC Watch
  • CES 記事一覧[Impress Watch
  • Android AutoのGoogleマップ、EVのバッテリー走行可能距離表示へ[ITmedia
  • ASUS版メガネ AirVision M1ウェアラブルディスプレイ発表。垂直57度の広視野角、3DoF対応[TECHNO EDGE
  • スマートグラス「XREAL Air 2 Ultra」発表 iPhone 15 Proの空間ビデオに対応[ITmedia
  • LG電子、透明の有機ELテレビ CESで初公開[日本経済新聞
  • サムスン、ボール型AIロボ 家電操作やビデオ通話[日本経済新聞
  • ソニー・ホンダ、MSと連携--生成AI「Azure OpenAI Service」で対話型パーソナルエージェント[CNET Japan
  • ソニー、XR HMDを用いた仮想空間での没入型空間コンテンツ制作システムを開発[PC Watch
  • ソニーがCESのプレカンで最も多く時間を割いたのは--クリエイター支援前面に[CNET Japan
  • パナソニック、Fire OS搭載の有機ELテレビを発表[ケータイWatch
  • フォルクスワーゲン、車載AIアシスタントに「ChatGPT」採用へ[ITmedia
  • メタバースは「バズワード」卒業?ソニーのXR HMDで産業界はクリエイターやエンジニアの生産性が向上するとシーメンスがアピール[PC Watch
  • Getty Images、生成AIを使ったストックフォトサービス 商用利用可[Impress Watch

4. ニューヨークタイムズ、OpenAIとマイクロソフトを提訴

 生成AIによるコンテンツの無断学習について、いよいよ大手新聞社が提訴に踏み切った。ニューヨークタイムズは、OpenAIとマイクロソフト相手に著作権侵害で提訴した。提訴されたOpenAIは、「The New York TimesはChatGPTをだまして記事をコピーさせた」と反論し、あくまでもフェアユースを主張する構えだ(Gigazine)。

 一方、OpenAIはニュースメディアに対してライセンス料の支払いを提案しているという記事も出ている。ただし、その金額はメディア側からすれば、とうてい折り合えない額のようだ。

 アップルも独自の生成AIを開発するにあたり、メディア企業との間でライセンス交渉をしていることが報じられているが、今後、生成AIはメディア企業に対価を払うようビジネスモデルへ移行するのか。日本でも、生成AIが無断でコンテンツをクロールして学習することについての議論が始まっており、このあたりについても、大きな動きが出ることが予測される。

ニュースソース

  • 米紙ニューヨーク・タイムズがオープンAIとマイクロソフトを提訴 著作権侵害で[BBC
  • タダ乗り許されず。OpenAIがニュースメディアにライセンス料を提案[Gizmode
  • OpenAIが「The New York TimesはChatGPTをだまして記事をコピーさせた」と反論しトレーニングはフェアユースだと主張[Gigazine
  • 生成AIでメディアと交渉 記事の学習利用巡り―米アップル[時事通信

5. 2024年のトレンドをそれぞれ専門の観点から論じる

 2024年がどのような年になるのか。各社はどのような技術に注目しているのか。年初にあたり、そうしたことをさまざまな専門媒体上で、専門家たちが論じている。

 以下のニュースソースには、今年に入ってから掲載された国内外のそうした観点の記事を集めてみた。

 注目は言うまでもなく「生成AI」ということになるのだが、その技術に驚く一方だった2023年と比較すると、実際に役に立つレベルにどのように昇華させるかということがポイントになるだろう。日本でも、いかに産業の中に組み込んでいくのかということだ。そのためには、より積極的なデジタル化の必要も出てくるのだろう。展示会やコンファレンスでは意欲的な製品や技術への取り組みは見られるものの、日常業務との乖離を感じる人も多いのではないだろうか。

 また、ブロックチェーンやAR/VRへの動きも期待できる。ブロックチェーンは「暗号資産」としてだけではなく、ARやVRとの関連を指摘する論考もある。また、ARやVRと言わず、「空間コンピューティング」という拡大した表現も見られるようになったことで、より応用の可能性の幅が感じられるようになった。

 今後、ますます技術開発や製品化のスピードは加速し、複合的になってくるのではないだろうか。

ニュースソース

  • 2024年のテック業界はどうなる? 各社「今年の動向予測」まとめ[ASCII.jp
  • 2024年の電機業界、生成AIがクラウドからローカルに波及[日経XTECH
  • AIシフトが一層進む2024年 その中で静かに進むデータの“空間化”[ITmedia
  • 2024年に注目すべき「メディア」をめぐる5つのトレンド[DIGIDAY日本版
  • 2024年のブロックチェーン技術予測──リップル、コインベース、a16z、スタークネットなど10人の専門家に聞く[coindesk
  • 2024年の生成AI予測:海外トップVCの見解[The Bridge
  • AIとブロックチェーン、VRが融合──2024年は「技術的収束」が可能性の限界を拡張する[coindesk
  • Amazonの最高技術責任者(CTO)が考える「2024年以降の技術動向予測」はどんな感じなのか?[Gigazine
  • どうなる2024年のAI規制、米国・欧州・中国の動きは?[MIT Technology Review
  • ビル・ゲイツ氏がAIに期待する地球規模での医療の改善[ZDnet Japan
  • ChatGPTの登場で急速に普及した「生成AI」、2024年はどうなる?[Forbes JAPAN
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。