フリーランスの“自由と仕事”、考えてみた

第1回

<フリーランスの心配>トレンドに取り残されないためのスキルアップ方法~IT業界を例に考えてみた~

 かつての終身雇用の考え方は薄れ、会社に属さずに仕事をするフリーランスは年々増加している。雇われることを辞めたフリーランスだからこそ手に入る“自由と仕事”とは? また、それを手に入れるために何ができるのか? ギークス株式会社にてフリーランスエンジニアの営業支援やキャリア相談などの経験を持つフリーライターの「おいわ」氏が6回にわたり解説する。

 フリーランスは自由を手にすると同時に、シビアな競争社会に身を置くことになります。仕事を選べる自由の裏には、もう会社が用意してくれる仕事はないということを意味しています。社会的信頼がある会社の看板もなければ、優秀な営業マンに法務担当者も経理もいない、そんな環境で、自分で仕事を見つけ、売上を上げ続けないといけません。

 ドキリと冷や汗が出てしまいそうですが、今のIT業界はサービスの作り手の人材不足となっているので、トレンドのキャッチアップさえ怠らなければ、仕事がなくて困ることはほとんどないでしょう。

 今回は、フリーランスが安定的に仕事を得るのに不可欠なスキルアップ方法について考えてみます。

エンジニアとして活躍し続けるためのスキルアップ ※

(特にITフリーランスは)トレンドのキャッチアップが重要

 皆さんご存知のように、IT業界はとても変化が速い業界です。次々に新しい技術や製品が登場し淘汰されており、たった数年でトレンドが変わってしまうことも多いですよね。使われなくなった古い技術では、新規開発案件はもちろん、改修案件もなかなか発生しないため、その技術スキルだけを強みにしていると、近い将来仕事を獲得することに困ってしまうかもしれません。つまり、フリーランスとして継続して安定的な収入を得るためには、トレンドにあわせてフレキシブルに自分のスキルや得意分野を変化させていくことが必要不可欠なのです。

ITフリーランスができる賢いスキルアップ方法とは

 さて、スキルアップと言っても具体的に何をしたら良いでしょうか。

1)自分の興味・関心・直感に従おう

 フリーランスには、会社が用意してくれる研修制度も無く、上司から技術研究のテーマをもらうこともありません。しかし、不安に思うことはないのです。自由なフリーランスですから、素直に自分の興味・関心があることに取り組めば良いのです。

 「新しいこの技術やツールを今の案件に導入したら便利そうだから調査してみよう」「競合のサービスはどのように作られているか比べてみよう」などという観点から新しい気付きや知識を習得できます。これがひとつのスキルアップであり、トレンドのキャッチアップです。

2)仕事以外の活動に積極的になろう

 IT勉強会へ参加したり、ハッカソン・アイデアソンに参加するのは、他人から新しい知識や考え方をインプットしたり、自分の脳内を整理しアウトプットする場として、とても効率的です。また、わざわざ外に出なくとも、調査した技術を使って試しに自宅で開発をしてみるのも良いですね。

ギークスでは“エンジニアの好奇心を満たす出会いが見つかるリアルイベント「TECH VALLEY(テックバレー)」"を開催。最新技術の導入事例などを取り上げている

3)個人開発よりもチーム開発の仕事を選ぼう

 自分一人で開発するよりも、チームで開発する仕事の方が、メンバーの知識や意見を吸収できる分、技術トレンドに詳しくなれます。さらに、一人では気付かなかった解決策や、新しい考え方を学ぶヒントが転がっています。チームによってカラーはありますが、新しい技術やツールの導入に積極的なチーム風土だと、なお良いですね。

 これらの方法は、皆さんが仕事をする上で、いつも自然にやっていることではないでしょうか? トレンドのチャッチアップ・スキルアップと言うと、仰々しく聞こえがちですが、得意分野や類似分野において、普段のように興味のアンテナを張り、知見を広げて行けば良いのです。

常にアンテナを高く持っておくことが大切 ※

トレンドの遅れ以上に、実務から離れることが最も危険

 実は、実務に就いていれば、トレンドから取り残され明日の仕事がなくなるという事態は、そうそう起こりません。なぜなら、運用しているシステムであれば、適時アップデートを行いますし、サポート終了した技術は使わなくなります。自分が扱う技術が縮小していることに気付けば、自然と代わりになる技術の移行を行います。

 トレンドは、技術者の先にあり追いかけるものではなく、開発に携わる皆さんの手で作られているものなのです。だからこそ、勉強のため、知見を広げるため、といって、休暇を取得するよりも実務を継続したほうが“仕事を得るためのスキルアップ”に繋がるのです。

 海外留学や個人のサービス企画開発のため、または技術の勉強のために、1年以上の長期休暇を取ったフリーランスの方もいらっしゃいますが、復帰時の営業活動で苦労される方も少なくありません。クライアントにとっては、直近で社会に還元した役務がないと、知識が古いのではないか、すぐにベストパフォーマンスが出せないのではないか、と懸念してしまうのです。

 状況やクライアントにもよるため、もちろん一概には言えませんが、実務から離れた期間が半年以内だと、復帰後の案件獲得がスムーズにいくケースが多いです。

開発現場での実務経験が案件獲得には重要 ※

 以上、トレンドに取り残されないためのスキルアップ方法を考えてきました。私の経験上、フリーランスとして働いている方、またはこれからフリーランスを目指している方は、根本的に仕事や技術に熱意を持っていらっしゃると思います。「トレンドに取り残されたら食っていけない……」なんて、それほどシリアスに考えずに、自分の好きなことに対して知見を深めたり、自分の仕事をもっと良くするには何ができるかを考え追求したりすること、それ自体が一番のスキルアップ方法ではないでしょうか。好きこそものの上手なれ。自分の好きな仕事を続けられるように、日々の仕事を楽しんでくださいね。

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geechs magazine編集部

フリーランスエンジニア専門エージェントであるギークス株式会社が運営するITエンジニアの気軽な情報収集メディア『geechs magazine』。本記事の執筆者「おいわ」は、年間1000名以上のフリーランスエンジニアの営業支援やキャリア相談と、マーケティング業務の経験を生かし、現在フリーランスライターとして働き方に関する記事を執筆。