フリーランスの“自由と仕事”、考えてみた

第2回

<フリーランスの仕事獲得>その経歴書、大丈夫? 未経験分野で仕事を獲得するために必要なこと~IT業界を例に考えてみた~

 かつての終身雇用の考え方は薄れ、会社に属さずに仕事をするフリーランスは年々増加している。雇われることを辞めたフリーランスだからこそ手に入る“自由と仕事”とは? また、それを手に入れるために何ができるのか? ギークス株式会社にてフリーランスエンジニアの営業支援やキャリア相談などの経験を持つフリーライターの「おいわ」氏が6回にわたり解説する。

 “仕事を選べる”ということは、フリーランスという働き方の大きなメリットとして挙げられます。一方で、フリーランスは即戦力を期待されるため、未経験分野で仕事を獲得するのは難しい、というシビアな現実があるのもまた事実。それでも、フリーランスとしてIT業界で活躍するにあたっては、複数の開発言語や幅広い技術分野を習得しスキルアップを目指したいものです。

 今回は、ITフリーランスが未経験分野の仕事を獲得するために必要なことについて考えてみたいと思います。

未経験分野にチャレンジするために必要なこととは ※

職務経歴書や自己PRは十分ですか? 見直すべきポイント

 職務経歴書や自己PRは、クライアントがあなたを知る際、最初に目にするものですので、その印象は非常に重要です。一口にクライアントと言っても、その中でどのポジションにあるかによって、重要視するポイントも印象も変わります。

 IT業界において人員の採用をする際は、まずは人事担当者や開発部長など人員配置に携わる人が書類チェックをし、マッチすると判断された人のみプロジェクトマネージャーや開発リーダーとの商談をセッティングされるという流れが一般的です。つまり、まずは人員配置を担当する人の目から見て、今回の募集要項に合っていると思える書類を作成することがポイントです。

「誰が見るのか」を意識した職務経歴書・自己PRが重要 ※

技術キーワードの書き漏れがないか

 言語・FW(ファームウェア)・MW(ミドルウェア)・OS・管理ツールなどの技術キーワードで、少しでも経験・知見のあるものは漏れなく記載しましょう。さらに、クライアント担当者はそのバージョンまで気にしていますので、覚えている限り書き留めておいてください。

 未経験分野の場合は、経歴として記載しにくいかと思いますが、自身が主担当ではないが開発環境で使われていたケースや、仕事ではなくとも個人で研究開発をしている旨、また技術勉強会に参加している旨の記載をすることでチャンスが広がります。

未経験分野の挑戦には自己PR文でアピール

 未経験分野の案件に応募する際、案件ごとにその募集要項に寄せた経歴書に作成し直す必要はありません。理想的な経歴書は、今までの経歴を網羅した完全版です。その完全版に、自己PR欄やキャリア概要欄で技術の関心分野や今後目指したいキャリアの方向性を記載しアピールすることで、あなたを知らない人が読んでも理解しやすい経歴書となります。さらには、これまでの経歴と次に挑戦したい技術分野との関連があると、未経験分野であっても過去の経歴を活かして活躍するイメージが湧きやすく、クライアントからはより好印象です。

 例えば、“今まではObjective-Cでの開発をやってきたが、Swiftでのアプリ開発もやっていきたい”“PHPでのバックエンド開発をメインで担当していたが、今後はJavaScriptを使ったフロントサイドの担当をして、大規模ウェブサービス開発をトータルで把握し対応できるエンジニアになりたい”など、キャリアの一貫性が見えることが大切です。

挑戦したい分野と過去のキャリアの一貫性をアピールできる経歴書は、未経験分野での活躍もイメージしやすい ※

表を用いた見やすい職務経歴書になっているか

 企業の人事担当者は毎日多くの経歴書を読むことになりますので、見た目自体が見やすいことも好印象に繋がります。文章が羅列されただけの経歴書よりも、Excelでまとめるなど表形式の経歴書のほうが、視認性が高く理解が早まります。

 さらに、時系列に沿って、案件名・作業内容詳細・開発言語・OS・その他開発環境などの項目で整理されているとなお良いでしょう。読みづらさで後回しにされる、または十分に理解されずに見送りになるといった機会損失を避けるため、経歴書の書き方にも配慮をしておきましょう。

狙い目案件、未経験分野にチャレンジできる仕事とは

 そもそもクライアントは、フリーランスのもつ専門性に期待して仕事を委託しています。そんなクライアントの動機を考慮すれば、未経験分野が作業範囲に入りつつも、得意分野を中心とした案件が狙い目といえます。

 実は一部のチーム開発案件では、集まったフリーランスの得意分野やスキルを鑑みて、作業委託範囲を流動的に検討・変更するケースが存在しています。このような案件で、自分の得意分野をメイン担当とし、一部に希望する未経験分野の対応も含めるという条件で契約することが、最も現実味のある方法です。このようにして少しでも実務で経験していると、次の営業時には格段に有利に働きます。

 また別の視点では、新しい技術を用いた案件も狙い目です。新しく生まれた技術であれば、どこを探しても実務経験者はいないので、必然的に個人研究を通して知見のある人に依頼がいきます。ただし、この方法では新しい技術が開発現場に広まるよりも早くトレンドを察知し勉強をしておく必要があるので、技術動向の先見性が問われます。

今の現場で未経験分野にチャレンジ

 これまではクライアントを変えることを前提に考えてきましたが、一方で現在担当している現場に留まって未経験分野にチャレンジするという方法も、また現実的です。もし同じクライアントであなたが望む分野の仕事があるならば、タイミングを見計らって仕事内容の変更交渉をしてみましょう。いきなりポジションチェンジは難しくても、上記に述べたような作業内容の一部変更であれば検討してくれるかもしれません。

 あなたが今の現場に必要不可欠な存在であれば、クライアントは多少の作業内容見直しをしても契約継続を希望するでしょう。このように、すでに信頼関係が構築された既存クライアントでの条件変更は、新規クライアントでの調整よりもスムーズに行く可能性が高いのです。

実力を理解しているクライアントとの信頼を生かして、未経験分野への挑戦を交渉してみよう ※

結局は「クライアントの信頼を勝ち取ること」がすべて

 以上、フリーランスが未経験分野で仕事を獲得するために必要なことについて考えてきました。クライアントが仕事の依頼をするのは、“この人なら自社の依頼内容を全うしてくれるだろう”というフリーランスへの信頼があってこそ。未経験で実績のない分野であれば、なおさらその技術分野に対する熱心な向上心や日頃の仕事に対する姿勢など、知識や行動を裏付けにしてクライアントに伝えることが効果的でしょう。

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geechs magazine編集部

フリーランスエンジニア専門エージェントであるギークス株式会社が運営するITエンジニアの気軽な情報収集メディア『geechs magazine』。本記事の執筆者「おいわ」は、年間1000名以上のフリーランスエンジニアの営業支援やキャリア相談と、マーケティング業務の経験を生かし、現在フリーランスライターとして働き方に関する記事を執筆。