フリーランスの“自由と仕事”、考えてみた

第3回

<フリーランスの成長>効率的な案件選びで10年後の成功につなげる方法

 かつての終身雇用の考え方は薄れ、会社に属さずに仕事をするフリーランスは年々増加している。雇われることを辞めたフリーランスだからこそ手に入る“自由と仕事”とは? また、それを手に入れるために何ができるのか? ギークス株式会社にてフリーランスエンジニアの営業支援やキャリア相談などの経験を持つフリーライターの「おいわ」氏が6回にわたり解説する。

 フリーランスの皆さんは、次の案件を探すときに大切にしている条件や自分なりの信念をお持ちでしょうか。私の経験から、明確なこだわりを持っているフリーランスは全体の約20〜30%で、「これまでの経験や案件内容から総合的にバランスを見て決めている」や、「どんな案件があるか全部見てから判断したい」という方がほとんどです。こうした話を聞くと、少しもったいないな、と思うのです。今回は、ぜひそんな方にこそ読んでいただきたい、10年後の成功につなげるための効率的かつ意義ある案件選びの方法を考えていきます。

今の案件選びが将来のキャリアパスに影響します ※

能動的案件探しのすゝめ

 もちろんフリーランス市場の案件を一通り見て、その中で自分に最適な案件を選ぶという方法は、クライアントニーズを把握する上では有効な手段です。しかし、流れに身を任せてそのときに対応できる案件の中だけで選んでいると、10年後には今までの選択に後悔する日が来るかもしれません。自分の理想に近しい案件を探しに行くイメージでフリーランス案件市場を俯瞰し、能動的にキャリアデザインしていく意識を持つことで、フリーランスとしての成長をより加速させ、私生活を含めて人生を豊かにすることができるのではないでしょうか。

案件選びのポイントに、自分なりの優先順位を定めよう

 案件選びの際に重要視するポイントについて、自分なりに優劣をつけて具体的に決めておきましょう。例えば、以下のポイントで考えるとどのような優先順位になるでしょうか?

 報酬がいいこと、興味のある技術分野が扱えること、開発場所が家から近いこと、プライベートの時間が確保できること、成長機会があること、自由度が高く融通がきくこと、提案や発言チャンスが多いこと、参画決定までの進捗が早く進むこと。

 判断するポイントは、技術や業務内容に関わることだけでなく、ライフスタイルに関わることまで複数の視点があります。ワークスタイル・ライフスタイルともに自分でデザインできることがフリーランスの特徴。選択肢が多いがゆえに判断に迷いますが、自分にとっての優先順位を事前に決めておくことで、必要な要件が明確になり、案件探しの無駄を削減することができます。

まずは優先順位を決めると、案件が選びやすくなります ※

自分の強み弱みを理解し、目指す方向性を定めよう

 多くのフリーランスは、自分の強み弱みについては十分理解しています。それは、フリーランスを始めるときに整理し、また、営業活動で何度もクライアントに説明するシーンが発生するためでしょう。では、目指す方向性はどうでしょうか。

 理想像を持つことで、自分にはどの部分が足りていないのか、高めるべきスキルは何かが浮き彫りになります。得意分野を生かしながら、自分に必要な成長分野を経験できそうな案件を選ぶことで、成長スピードを飛躍的にアップすることができるしょう。

案件探しのタイミングでキャリアデザインの見直しを

 上記で紹介した、案件選びのポイントや成長分野は、経験・スキルアップ、ライフスタイルの変化、体調の変化など、さまざまな環境の変化に応じて常に変化していきます。一度の決定に固執せずに、案件探しをするタイミングごとにその都度、自分自身を見つめ直すことが大切です。

 会社員だとこのような機会はなかなか取れません。フリーランス案件の契約期間は短くて1カ月のものもありますし、平均的には3カ月ごとに契約更新のタイミングがあります。案件の切れ目という比較的短いスパンで振り返ることができるので、キャリアデザインがしやすいという点は、フリーランスの環境的メリットの1つだと思います。

定期的にキャリアを見直すことが重要です。 ※

並行営業(複数社同時エントリー)で案件探しを効率的に

 並行営業とは、最終的に請ける案件は1つである場合でも、営業活動は複数社の案件へ同時にエントリーし並行して商談を進めることを指します。一部には並行営業をよしとしないIT業界の慣習もあるようですが、多くのクライアント企業は理解を示していますので、ぜひ活用しましょう。フリーランスにとっては、営業期間の時間的短縮にも、リスク軽減にもなる、とても有効な営業方法です。ただ、後のトラブルを避けるためにも、並行営業を行う際にはクライアントに伝えることを怠らないでください。

複数社オファーが重なったときにどの選択をするかは事前に考えておく

 オファーをもらってから返答するまでの期間は長くても3営業日以内が適切です。並行営業を行う際には、複数社からオファーをもらうケースを想定し、どの条件であればどの企業のオファーを請けよう、という結論は早めに考えておきましょう。

 また、商談の返答が出そろってない場合、他社の返答が来るまで保留にさせてもらえるように交渉するためにも、並行営業を行っている旨を事前にクライアントに伝えておくほうがよいでしょう。

並行営業を行うことで、効率的な営業活動ができます

断らざるをえないオファーを次につなげる

 最近では、長期開発案件でのニーズが増えています。そのため、残念ながら断ることになってしまったオファーでも、次の営業機会では再度、検討案件に上がる可能性があります。以前オファーをもらったという事実がアドバンテージになり、スムーズな案件受注につながるケースもあるので、たとえ断る場合にも丁寧にコミュニケーションをとることを心がけましょう。

知人からの紹介案件にこそ事前のすり合わせが大切

 知人や友人に案件を紹介してもらうときにこそ、自分にとって重要な条件を決めておき、事前に伝えておくことは大切です。なぜなら、自分で探す場合やエージェントを利用して探す場合に比べミスマッチが起こりやすいからです。多少のミスマッチであれば、友人のよしみで請けたくなるものですが、それによりいつの間にか自分の意図する方向と違うキャリアを歩んでしまうこともあります。

今の選択が10年後のキャリアをつくる

 フリーランスには仕事を選ぶ自由があるから、キャリアデザインも十人十色。正社員よりもはるかに自由度が高く、自分の目指すキャリアや暮らしを実現しやすい働き方です。

 だからこそ、今の選択が5年後、10年後の自分を作っているという意識をして、ひとつひとつに明確な理由のある案件選択をしていきたいですね。なりたい自分の理想像をかなえるための能動的な選択ができると、フリーランスライフはより彩られるでしょう。

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geechs magazine編集部

フリーランスエンジニア専門エージェントであるギークス株式会社が運営するITエンジニアの気軽な情報収集メディア『geechs magazine』。本記事の執筆者「おいわ」は、年間1000名以上のフリーランスエンジニアの営業支援やキャリア相談と、マーケティング業務の経験を生かし、現在フリーランスライターとして働き方に関する記事を執筆。