清水理史の「イニシャルB」

Wi-Fiアクセスポイント、Ubquiti Networks「UniFi AC PRO」でいろいろ困ったお話

国設定はともかく、チャネル幅設定に大きな問題が

 国内では、主に有線LANルーター「Edge Router」で知られる米Ubquiti Networksの無線LAN製品「UniFi」シリーズが、国内でも入手可能になった。企業向けの機器として、コストパフォーマンスの高さから海外で人気のある製品だ。Amazon.co.jpで販売されている国内正規品を入手し、実際に試してみた。

Ubquiti NetworksのWi-Fiアクセスポイント「UAP-AC-PRO」

ソネットが10月からUbquiti Networks製品の国内販売を開始

 2018年4月にはリセラーとして、10月からはディストリビューターとして、ソネット株式会社が国内販売を開始したことで、今後は日本でも、企業向けの無線LAN製品としてUbiquitiの製品が注目の存在となりそうだ。

 今のところ、Amazon.co.jpで限定オリジナルモデルが販売されており、簡易包装かつクイックスタートガイドが省略された状態ながら、アクセスポイントやスイッチ、セキュリティゲートウェイなど、同社の「UniFi」シリーズの国内正規品が購入できる。

 今回、筆者が入手したのは、以下の製品だ。

種別型番価格
アクセスポイントUAP-AC-PRO-E-A2万9114円
セキュリティゲートウェイUSG-A2万5326円
クラウドキーコントローラーUC-CK-A1万9132円
PoEアダプタ※POE-24-24W-G-A3225円

 ※後述するが間違って購入

 合計では7万6797円と結構な出費だったが、企業向けのアクセスポイントやセキュリティゲートウェイとして考えると、価格としては安い。

 しかも本製品は、管理用のコントローラソフトウェアのライセンスが無料で、複数台の無線LANアクセスポイントの設定や管理にコストがかからないのも特徴だ。

 UniFiシリーズには、アクセスポイントだけでなく、前述したセキュリティゲートウェイに加え、スイッチや監視カメラなどもラインアップされており、これらもまとめて無料のコントローラーソフトウェアで管理できるようになっている。海外で多くの支持を集めている理由も納得できるところだ。

 本来であれば、これらの製品を一気にレビューしたいところではあるのだが、個人的な失敗もあって、なかなか設置や設定に苦労しているため、今回は、これらのうち、アクセスポイント「UAP-AC-PRO」のレビューのみを先行して掲載したい。

 ほかの製品については、タイミングを見て、本コラムで取り上げていく予定だ。

間違えて購入したPoEアダプタ「POE-24-24W-G-A」

PoEは48V、給電アダプタ購入で初歩的なミス

 それでは、製品をチェックしていこう。

 UAP-AC-PROは、IEEE 802.11acの3ストリーム1300Mbpsに対応したWi-Fiアクセスポイントだ。直径約20cmほどの円盤のような形状をしており、清潔感のあるホワイトをベースに、中央部に青く光る円形のLEDが搭載されている。

 インターフェースは、それぞれ「MAIN」と「SECONDRY」と記載された2つのLANポート(10/100/1000Mbps)が底面に用意されているほか、USB 2.0ポートが1基搭載されている。USBポートは主にスピーカー用で、教育市場向けにアクセスポイントとスピーカー(アナウンス用)を組み合わせて利用する用途のためとされている。

 電源供給は、48V/0.5AのPoEで、今回購入した製品にはPoEアダプタは同梱されていなかったため、別途、PoE給電アダプタもしくはPoE給電対応のスイッチを利用する必要がある。

正面
背面
壁に取り付けるためのカバーを外すと、インターフェースが姿を現す

 筆者は、前述したようにAmazon.co.jpで購入をしたのだが、この際、Amazon.co.jpの一覧画面に表示された「POE-24-24W-G-A」をよく確認せずに購入してしまった。製品到着後に、いざ設置しようと、PoE給電アダプタ経由でLANケーブルをつないでも、UAP-AC-PROの電源がオンになる気配が全くなかった。

 「まさか!」と思って確認したところ、間違って購入していたことに気が付いた。POE-24-24W-G-Aは下位製品の「UAP-AC-LITE」「UAP-AC-LR」向けで、型番通り24Vのみの供給電圧となるためだ。

 初歩的なミスでお恥ずかしいが、PoE給電アダプタを購入する際は、くれぐれも仕様を確認してからカートに入れることをお勧めする。

Microsoft Edgeは非推奨、ファイアウォール許可も、国選択の初期設定は問題

 アクセスポイントのセットアップには、同社のダウンロードサイトから無料でダウンロードできる「UniFi SDN Controller(現行バージョンは5.9.29)」を利用する。

 個人的には、久しぶりにOracleのダウンロードサイトの画面を目にしたが、コントローラーの動作にはJava環境が必要だ。PCにインストールされていない場合は、UniFi SDN Contollerのインストール画面から誘導される。

UniFi Controller。サーバーとして動作し、ウェブブラウザーを使って設定画面にアクセスする方式

 インストール完了後、デスクトップには「ace.jar」をuiオプション付きで起動するアイコンが配置されるので、ここから「UniFi SDN Contloller」を起動。ダイアログの「Launch a Browser to Manage the Network」ボタンをクリックすると、ウェブブラウザーが起動して「https://localhost:8443/」にアクセスする。

 インストールしたソフトウェアがサーバーとして動作するので、これにウェブブラウザーからアクセスして設定を行うかたちとなる。

 ウェブブラウザーで設定画面を開こうとすると、いきなり証明書のエラーが表示されるが、よくあることなので、そのままアクセスを続行。さらに、こちらも言わば「あるある」だが、Microsoft Edgeでは一部の機能が使えないので、FirefoxかChromeを推奨するとのメッセージが表示される。ここでは、Firefoxに切り替えてアクセスをやり直した。

 ちなみに、Edgeでも基本的な機能の利用には問題ないが、画面上のボタンとその背景がともに白という困ったデザインになるため、手探りで設定項目を探すことになる。画面の指示通り、FirefoxかChromeを使うことをお勧めする。

証明書エラーも、Edgeが未対応な点も、よくある出来事。これくらいのトラブルは序の口だ

 初回は、ウィザード形式のセットアップが実行されるのだが、困ったことに国を選択する画面が表示された。ここで日本以外の設定をすると、国内では許可されていない周波数で電波が発信される可能性があるので、必ず「Japan」を選択する必要がある。間違えないように注意しよう。

 なお、これは、過去に、TP-LinkやSynologyが行政指導を受けた方式で、TP-Linkは出荷済み製品を回収するに至っており、国内では実質的にNGとなっている。せっかく国内正規のディストリビューターが付いたのだから、このあたりは、きっちり本国にフィードバックすることをお勧めしたいところだ。

選択した国で利用可能な周波数が変わるタイプ。この方式は、過去、複数の海外メーカーが痛い目にあっているので、要注意

 さて、「Japan」を選んで設定を進めていったのだが、困ったことに、次のステップでまた躓いてしまった。本来であれば、ネットワーク内の「UAP-AC-PRO」が自動的に検出され、リストアップされるはずなのだが、いくら待っても全く表示されない。

 これも、よくあることなので、冷静にWindowsファイアウォールをオフにしてみる。すると案の定、デバイスが表示されるようになった。

 調べてみると、ポートの解放が必要で、こちらのページに使用するポートが記載されていため、このうちのUDPポートの3478番と10001番、TCPポートの8080番の通過を許可しておいた。

 これで設定が可能になるので、SSIDとパスワードを設定し、最後にUniFi Controllerにアクセスするためのアカウントを設定することで、ようやくセットアップが完了した。

Windowsファイアウォールが原因でネットワーク内のデバイスが検出できない。まだ、心が折れる時間じゃない
Windowsファイアウォールの例外を追加しておく

「Japan」選択時はチャネル幅が20MHzに固定に

 この状態でUnifi Controllerにアクセスすると、ネットワーク内のアクセスポイントが認識され、チャネルごとのトラフィックやリトライレートなどが。グラフィカルに表示されるようになった。

アクセスポイントの状態を管理可能
マップ機能なども搭載されている

 この画面から複数のアクセスポイントを管理できるので、社内のいろいろな場所に設置した各アクセスポイントを設定できるだけでなく、全体の状況も簡単に把握できる。フロアマップを取り込んで、地図上に配置したアクセスポイントを管理することも可能だ。

接続できたものの、リンク速度が遅すぎる

 ただ、実際にWi-Fiへ接続してみると、すんなり接続されたものの、リンク速度が173Mbpsと遅い……。

 これは設定で帯域幅が絞られているのだろうと考え、UniFi Controllerの「DEVICE」から管理下のUAP-AC-PROを選択し、「Config」の「RADIOS」を開くと、2.4GHz帯、5GHz帯ともに20MHz幅(HT20/VHT20)に設定されていた。

 2.4GHz帯は20MHz幅でもいいとして、5GHz帯を80MHz幅に変更しようと、設定画面のリストボックスをクリックしたのだが、「VHT20」以外の選択肢が何も表示されない……。

 「おかしいな」と思って、Ubiquitiのユーザーフォーラムを検索してみると、2018年9月1日時点で、非常に丁寧なフィードバックを投稿しておられる方がいた(https://community.ubnt.com/t5/UniFi-Wireless/Channel-width-selection-for-Japan/td-p/2201030)。

 要するに、日本以外の国を選択すれば、20、40、80MHzの選択が可能なものの、日本を選択すると20MHz以外の選択肢が表示されないということらしい。

 総務省のウェブページのキャプチャまで交えて、Unifi Controllerのソフトウェアにおける不具合であることを丁寧に力説されており、頭が下がる思いだが、残念ながら、メーカーの担当者に内容がうまく伝わっていないのか、現状も解決されていないままの状況になっている。

Japan選択時には、20MHz幅しか選択できない。ここで、筆者はすべてを投げ捨てたくなった

 Ubiquitiがこういった状況をうまく把握できないのは、国ごとに異なる法律に対応し切れない事情もあるので、ある程度は仕方がないとしても、日本のディストリビューターとなったソネット株式会社が、こうした状況を放置しているのは極めて遺憾だ。

 売るだけでなく、しっかりと国内ユーザーの声を拾って、米国の開発陣にフィードバックしてほしいものだ。

UAP-AC-PROは残念ながら評価に値せず

 というわけで、本来であれば、速度を計測したり、設定項目をいろいろと紹介したりしようと考えていたのだが、あまりにもお粗末なので、UAP-AC-PROに関しては、評価をここで打ち切りにしたいと思う。

 とりあえず購入してしまった以上、ほかの製品のレビューもお届けする予定だが、これから設置して、似たような状況であれば、お蔵入りさせることも検討したい。

 もともと企業向けの製品なので、コンシューマー向け製品のような使いやすさや分かりやすさを求めるつもりは一切ないのだが、日本で売られている商品で、日本向けの設定ができないというのは、もはや笑い話でしかない。

 期待していた製品だけに、非常に残念だ。