清水理史の「イニシャルB」

AndroidスマホをPCからリモート操作できる! Insider Preview向けに提供された「Phone screen」を試してみた

 Windows 10 Insider Previewへ新たに搭載された「スマホ同期」では、Android端末のスクリーンミラーリング、およびキーボードとマウスによるリモート操作が可能になった。遅延は? 音は? キー操作は快適? テスト時点のBuild 18362で、気になる点をチェックしてみた。

まずは動作環境をチェック

 次期メジャーバージョンアップでは目玉となりそうな、注目を集める機能でもあるAndroid端末のリモート操作(Phone screen)が、以下の窓の杜の記事で紹介されたように、Windows 10 Insider PreviewのBuild 18356でサポートされるようになった。

Windows 10 Insider PreviewのPhone screen。実際にGalaxy S8を接続してみたところ

 しかし、対応するPCやスマートフォンの環境は限られていることから、実際に試せるようになるのはまだ先だろうと考えていた。

対応環境の条件
PC側最新のInsider Buildを搭載
Bluetooth with Low Enegy Peripheral modeのサポート(公式にはSurface Goのみ)
スマートフォンの条件Android 7.0以上を搭載したSamsung Galaxy S8/S8+/S9/S9+(3月12日時点)

 しかしながら、たまたま手元にSamsung Galaxy S8があったので、興味本位で普段、筆者が使っている自作のデスクトップPCで試してみたところ、あっさり端末を認識し、PCからスマートフォンをリモートで操作できてしまった。

 現状、Samsung Galaxy S8以外の端末ではテストしていないため、上の表で条件として指定されている以外の端末で動作するかどうかは不明だが、少なくとも、PC側の条件はさほど高くないことが推測される。

 さらに詳細な条件と、そのチェック方法については、Microsoft Communityのウェブページ(英文)に記載されている。筆者が使っているPCは決して最新のものではないが、動作条件をクリアしていた。

Bluetoothモジュールの設定を確認して[スマホ同期]アプリで接続するだけ

デバイスマネージャーでBluetoothモジュールを選択
プロパティの[詳細]タブの[プロパティ]をドロップダウンし、[Bluetooth 無線は低エネルギー周辺ロールをサポートしています]が[<true>]となっていればOK

 具体的には、デバイスマネージャーからBluetoothモジュール(筆者のPCの場合は「Qualcomm Atheros QCA61x4A Bluetooth 4.1」)のプロパティを表示後、[詳細]タブの[プロパティ]をドロップダウンし、[Bluetooth 無線は低エネルギー周辺ロールをサポートしています]を選んだときの「値」が[<true@@>]となっていることを確認すればいい。

 BLEでは、接続する機器がセントラルとペリフェラルという2つの役割に分かれるが、PC側が、このペリフェラルになることができればOKということになる。

スマホ同期アプリから接続すればスマホの画面をリモート操作できる

 あとは、[スマホ同期]アプリの[スマートフォンの画面(プレビュー)]から接続するだけでいい。筆者の場合、もともとGalaxy S8をスマホ同期に登録済みで、フォトやメッセージの同期をセットアップ済みだったため、画面の指示に従ってBluetoothのペアリングを実行しただけで、すぐにPCからスマホに接続することができた。

 ちなみに、今回テストした環境は以下の通りだ。OSやアプリのバージョンなどによっても動作の可否が変わる可能性があるため、動くかどうかは、実際にやってみるしかないところだ。

PC側動作環境
CPUIntel Core i7 7700(3.6GHz)
マザーボードASUS STRIX Z270G
BluetoothQCA6174A
メモリノーブランド(DDR3 SDRAM 8GB×2)
ビデオカードMSI Geforce GTX 1660Ti
ストレージSamsung 970 Evo(M.2 NVMe接続SSD)
OSWindows 10 Pro 64bit build 18362.1
スマホ同期アプリ1.1931.61.0

使用感は意外にスムーズ、PCとスマホは同じネットワークへ要接続

 使用感としては、意外にスムーズだ。実際に操作している動画を次に掲載するが、若干のラグは感じるもののゲームなどもプレイ可能で、予想以上に普通にPCから操作できる。

 接続した後の端末側での操作は基本的に不要で、端末がロックされていても問題ない。ロック画面をマウスでドラッグし、その後、PCのキーボードからPINを打ち込んでロックを解除することが可能だ。

接続時はWi-Fi接続が必須

 なお、PC側の対応環境の条件としてBluetoothを挙げたが、実際の画面操作にはWi-Fi接続も必須だ。スマホ同期の写真やメッセージなどにもWi-Fi接続が必要だが、PCとスマホが同じネットワークに接続されていないと、Androidスマートフォンのリモート操作を利用できない。

 試しに、スマートフォンのWi-Fiを無効にしたり、PCとは別のネットワークのアクセスポイントに接続した状態で接続してみたところ、「スマートフォンにリモート接続できません」と表示された。

まれに接続許可が求められる

 このように、実際にスマホ同期の機能を利用するには、PCと同じネットワークに接続しておく必要があるため、基本的にはオフィスや自宅で使う機能となりそうだ。外出先で、スマホをポケットに入れたままPCから遠隔操作することも不可能ではないが、相互通信可能な公衆無線LANや、モバイルWi-Fiルーターなどを経由した接続にしないと厳しそうだ。

 筆者が試した限りでは、接続時に何度かスマホ側での許可設定を求められた(再起動後など)。状況によっては、PCから接続するときにスマホ側での操作が必要になることもありそうだ。

何ができて、何ができないのか?

 このように、予想以上に普通にスマホを操作できる「Phone screen」の機能だが、あれはできる? これはできないの? と気になる点も多いと思われる。ここでは、実際にテストした範囲で、その内容を紹介しよう。

キー入力はできるか?

入力に対する表示にストレスはない。ただ、日本語と英語の切り替え操作が面倒な上、スクリーンキーボードも邪魔になる

 キー入力ができるか、できないかで言えば、問題なくできる。入力結果もスムーズに画面に反映されるため、例えばWordなどで文字入力しても、ストレスは感じない。

 ただし、日本語入力に関しては、英語と日本語の切り替えが面倒(入力環境によってはクリック操作が必要)で、さらに言えばスクリーンキーボードも邪魔になる(非表示にできる入力アプリがあれば回避できそうだ)などの点が気になった。

 なお、スワイプはマウスのドラッグ、長押しは右クリック長押しと、基本的な操作についても違和感はなかった。

ゲームはプレイできるか?

シンプルなゲームなら問題ないが、やはり遅延はあるのでアクションには向かない

 前掲した動画の通り、ゲームのプレイも問題ない。ただし、やはり画面表示や操作に対する遅延があるため、アクションゲームには最適とは言えない可能性がある(筆者はあまりスマホゲームをプレイしないので、はっきりとした判断はできない)。

 また、PCに表示されるのは画面のみで、サウンドは端末側から再生される。この点に違和感を感じる可能性はある。

動画は再生できるか?

 動画の再生は、条件次第で可能だ。例えば、YouTubeの映像などであれば問題なく再生できる(音声が端末から聞こえるのはゲームと同じ)。ただし、「Amazonプライムビデオ」など、著作権で保護された映像の場合、端末側で映像が再生されても、その画面がPC側には表示されない場合もある。

YouTubeでは問題なく動画を再生できる
動画によってはPC側には表示されない

カメラは使えるか?

カメラもOK。端末が離れた場所にあってもある程度なら撮影できる

 カメラも問題なく利用できる。PCからの操作で写真を撮影したり、動画を撮影することが可能だ。

 ただし、スマホが離れた場所にあっても撮影ができてしまうので、あまりよろしくないようにも思える。

コピペできるか?

 残念ながら、現状は操作のみで、スマホの画面に表示されたテキストをコピーしてPCへ貼り付けたり、PCのクリップボードからスマホへテキストなどを貼り付けることはできない。

拡大縮小できるか?

 スマホ同期アプリのウィンドウサイズを変更すると、画面も合わせて拡大・縮小される。小さな文字が見えにくくなってきた筆者には、かなりありがたい点だ。

4Kディスプレイにフルで表示してみた。大きく見えるのは楽だが、操作が難しくなることも。操作によっては、かなりドラッグしないといけない

発展の余地はありそう

 以上、Windows 10 Insider Previewで利用可能になったAndroidスマートフォンのリモート操作機能「Phone screen」を試してみた。なかなか面白い機能で、思ったより快適だが、改善の余地がありそうなのは、やはりキーボード周りだろうか。

 PCのキーボードから入力できるのは非常に楽だが、やはり、細かなキー割り当ての違いや、スクリーンキーボードが邪魔になる点は気になる。アプリの選び方などでも対処はできそうだが、PCに最適化すると、今度はスマートフォンを操作するときに不便になってしまう。2つのモードをシームレスに切り替えられるような仕組みがあれば、もっと使いやすくなりそうだ。

 まだまだ発展途上なので今後の改善を待ちたいが、ここまでできるようになっただけでも、大きな進歩と言えそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。