清水理史の「イニシャルB」
ASUSの新メッシュ「ZenWiFi CT8」をテスト、家中でWi-Fiが400Mbps超!
11ac対応ながら、やっぱりメッシュはトライバンド!
2020年1月20日 06:00
ASUSから、メッシュ対応Wi-Fiルーター「ZenWiFi CT8」が発売された。ZenBookやZenFoneなど、同心円状のヘアライン加工の天板や背面の高級感溢れるデザインに注力した「Zen」シリーズのブランドを冠した製品だ。
同社のゲーミングブランド「ROG」シリーズもそうだが、従来と異なる方向性を持ったシリーズとなり、性能とデザインの調和が図られている。
見た通りシンプルながらも独特の雰囲気を持ち、独立した1733Mbpsの5GHz帯でメッシュWi-Fiで最も重要な基幹ネットワークを構成できる製品だ。その実力を検証してみた。
見た目は控えめなのに、Wi-Fiは滅法速い
新しく登場したZenWiFi CT8は、従来のASUS製Wi-Fiルーターと比べ、どちらかというと「控えめ」な見た目の製品だ。
ゲーミングルーターのように派手な赤いラインもないし、威圧的な外付けのアンテナもない。本体サイズも160×75×161mm(幅×奥行×高さ)とコンパクトだ。
しかし、結論から言ってしまうと、これが滅法速い。現状、数あるWi-Fiルーターの中から「メッシュ」を選ぶ理由は、何と言っても「通信エリアの広さ」だ。複数台のノードを連携させることで通信エリアを広げ、どこでも快適なWi-Fiの利用が可能になる。
しかしながら、これまでに市場に存在したメッシュWi-Fi製品は、どちらかというと速度を犠牲にして電波エリアを広げるものが多かった。
2.4GHz帯×1、5GHz帯×1のデュアルバンド対応製品では、どうしてもメインの5GHz帯をメッシュWi-Fiのノード間の中継とWi-Fi子機の接続に併用せざるを得ず、そこがボトルネックとなって速度が伸び悩む傾向があったからだ。
これに対し、今回ASUSから登場したZenWiFi CT8は、5GHz帯×2、2.4GHz帯×1のトライバンドに対応したメッシュWi-Fi製品となっている。
トライバンドのメリットは、ノード間の中継が速いことだ。ZenWiFi CT8では、2系統ある5GHz帯のうちの1つ、しかも4ストリーム1733Mbps対応の高速な5GHz-2の帯域をノード間の中継用に占有することで、クライアント接続と中継が干渉しない高速な通信を実現できるようになっている。言わば、都市間を結ぶ専用の高速道路を持っているようなものだ。
詳細なテスト結果は後述するが、筆者宅でテストした限りでは、家の端から端まで、どこでも400Mbps近い速度での通信が可能だった。筆者の経験上、デュアルバンドのメッシュWi-Fi製品は200~300Mbps程度の場合がほとんどなので、これと比べてだいぶ速い。
このように、「メッシュと中継機はトライバンドに限る」というのは、筆者の個人的な製品選びの基準の1つなのだが、実はトライバンド対応のメッシュWi-Fi製品は、選択肢があまり多くない。
ASUSは、Wi-Fi 6対応製品も含め、ハイエンドのトライバンド対応製品も「AiMesh」という独自のメッシュ機能に対応してきたメーカーだが、今回のZenWiFi CT8の登場で、トライバンドメッシュの選択肢がさらに1つ増えたことになる。
控えめなデザインも相まって、今後、メッシュWi-Fiの選択肢としてかなり有力な候補となりそうだ。
ZenWiFi AC(CT8) | |
台数 | 2 |
実売価格 | 3万7928円 |
CPU | クアッドコア |
メモリ | 128MB |
無線LAN | IEEE 802.11a/b/g/n/ac |
バンド数 | 3 |
最大速度(2.4GHz) | 400Mbps |
最大速度(5GHz-1) | 867Mbps |
最大速度(5GHz-2) | 1733Mbps |
チャネル(2.4GHz) | 1-13 |
チャネル(5GHz-1) | W52/W53 |
チャネル(5GHz-2) | W56 |
ストリーム数 | 2または4 |
アンテナ | 内蔵(6本) |
WAN | 1000Mbps×1 |
LAN | 1000Mbps×3 |
USB | USB 3.1 Gen1×1 |
動作モード | ルーター/アクセスポイント/リピーター/ブリッジ |
サイズ(幅×高さ×奥行き) | 160×75×161mm |
シンプルながら丸みを帯びた高級感あふれるデザイン
それでは、実機を見ていこう。
Zenシリーズの名前が冠されている通り、本製品のデザインは非常に洗練されている。ヘアライン加工されたボディは、基本的にはブラックだが光が当たるとグレーっぽくも見えるようになっており、シンプルながら高級感あふれるデザインだ。
筐体上面は、放射状に円が広がるイメージの加工がなされ、ZenシリーズのPCの天板と共通するデザインが採用されている。
冒頭でも触れたように、本体のサイズは決して小さくはないが、アンテナ内蔵で余計な突起物などがなく、側面の角が丸みを帯びたデザインになっていることで、全体的にはとてもコンパクトな印象だ。
複数台で構成されるメッシュWi-Fi製品は、リビングや廊下、寝室など複数の部屋に設置されるため、見た目やコンパクトさは製品選びの基準としてとても重要な要素だ。本製品であれば置き場所に困らないし、人目に触れても違和感がない。
アンテナは、本体内部に6本が内蔵され、うち2本が45度の角度で斜め右上、斜め左上に向けて配置されている。これにより、2階建てや3階建ての住宅で、上下への感度も十分に確保されるようになっている。後述する3階建ての筆者宅でのテスト結果が良好だったのも、このあたりに要因がありそうだ。
インターフェースは、背面にWAN×1、LAN×3が用意されており、このほかストレージ共有などに使えるUSB 3.1 Gen1も1基搭載されている。
LANポートが複数搭載されているのも本製品のメリットの1つだ。PCやテレビなどの一部の機器を有線で接続できるだけでなく、環境によってはノード間を有線で中継するイーサネットバックホールとしても利用できる。
メッシュWi-Fi製品の中には、デザインやサイズを重視し、LANポートが少ない製品もあるが、本製品に関しては、有線接続の充実も大きなメリットだ。
Bluetooth+アプリで簡単セットアップ
メッシュWi-Fiを選ぶ理由に「手軽さ」を挙げる人も多いと思うが、本製品も、設置や初期設定、管理はかなり簡単だ。
まずは設置だが、本製品ではルーターとノードの関係が、初回の電源オン時に決定される。WANポートにケーブル接続されている方がルーターに、接続されていない方がノードになる。
パッケージには同じ製品が2台収められているが、これのどちらがルーターで、どちらがノードかを意識する必要はない。ユーザーが最初に電源を入れたタイミングで、この関係が自動的に構成されるわけだ。
続く初期セットアップは、PCからウェブブラウザーで実行することもできるが、スマートフォンの「ASUS Router」アプリを利用する方が、より簡単だ。
メッシュWi-Fiでは定番となっているBluetoothを使ってスマホと接続すると、近くのZenWiFiが自動的に検知され、画面の指示に従えば、インターネット接続などを簡単にセットアップできる。
Wi-FiのSSIDは、標準では2.4GHz帯と5GHz帯で共通のものを使う「スマートコネクト」が有効になるが、設定を変更することもできる。個人的には、遅くても構わない機器は2.4GHz帯、高速に通信したい機器は5GHz帯と、明示的に使い分けたいので、個別に設定できることは高く評価したい。
ルーターとノード間の中継に使われる帯域は自動的に選択されるようになっているが、基本的には最大1733Mbpsの5GHz-2(W56)が利用される。
そして、こうした状況をアプリでグラフィカルに確認することも可能となっている。現在、ルーターとノードが何GHz帯で接続されていて、どちらに何台のクライアントがつながっているのかなどを簡単に確認可能だ。
今回はセットの2台のみで利用したが、前述したように、ASUSのWi-Fiルーターのほとんどは同社独自のメッシュWi-Fi機能であるAiMeshに対応している。ZenWiFiで構成したメッシュWi-Fiのノードとして、こうしたルーターを後から追加することも簡単にできるようになっている。
また、来客時の対応も簡単だ。アプリから一定時間(標準では3時間)有効なゲストネットワークを作成し、そこに接続するためのQRコードをアプリで表示したり、接続情報をSNSなどで共有することもできる。
IPv6など一部の設定はPCからウェブブラウザーを利用する必要があるが、ペアレンタルコントロールやQoSなどもアプリから設定可能で、その内容はかなり充実している。
どこでも400Mbps
気になるパフォーマンスだが、これが非常に優秀だ。
以下のグラフは、木造3階建ての筆者宅の1階にルーター、3階の階段踊り場にノードを設置し、各階でiPerf3による速度を計測した結果だ。
1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 | ||
ThinkPad P1 | 上り | 503 | 346 | 402 | 491 |
下り | 552 | 499 | 446 | 496 | |
iPhone 11 | 上り | 447 | 194 | 473 | 477 |
下り | 666 | 250 | 584 | 610 |
※サーバー:Synology DS1517+
※ノード(2台目)は3階の階段踊り場に設置
PCに関しては、どの地点からでも安定して400~500Mbpsでの通信ができる。2階はあまり速度が上がらず、特にiPhone 11の2階の結果が劣るが、今回は3階にノードを設置しているため、こうした逆転現象が発生している。メッシュWi-Fiではよく見られる光景だ。
注目したいのは、やはり3階の結果だ。3階からの通信は、端末→ノード→ルーターと、ノードを経由して行われる。デュアルバンド対応のメッシュWi-Fiでは、この中継で速度が減少しやすいが、さすがにトライバンドで専用の中継帯域を利用でき、しかも1733Mbpsの中継が可能な本製品では速度低下がほとんど見られず、1階とほとんど変わらない速度で通信できている。
これぞトライバンドメッシュの威力と言えそうだ。
ルーターとしても多機能でお買い得
以上、ASUSのトライバンドメッシュWi-Fiルーター「ZenWiFi CT8」を実際にテストしたが、非常に優秀な製品だ。
メッシュWi-Fiらしく通信範囲が広く、かつ手軽に使える一方で、トライバンドならではの高いパフォーマンスを実現できる。それでいて、どこにでも設置できるような控えめのデザインにも好感が持てる。
しかも、ASUSのルーターらしいマニアックな機能も満載で、トレンドマイクロの技術を使ったIPSやウェブフィルタリングのセキュリティ機能「AiProtection」が利用可能だったり、端末やアプリごとの帯域を可視化する帯域モニターが使えたり、「Adaptive QoS」によって手軽にゲームなどの通信を優先処理したり、さらにはPPTP/OpenVPN/IPSecによるVPNサーバーも構築できる。
ASUSのルーターは、こうした機能がどのモデルでも利用でき、しかもAiMeshによってどの組み合わせでもメッシュWi-Fi化できるので、正直、機種選びに迷ってしまうほどだが、最初からメッシュWi-Fiで利用することを考えている場合は、本製品のセットがお勧めだ。デザインも機能も使いやすさも、すべてにおいて高いレベルを達成している製品と言える。