清水理史の「イニシャルB」
低価格でも「遊べる」Wi-Fi 6ルーター、ASUSの新製品は実売2万円以下!
デュアルバンドWi-Fi 6対応の「RT-AX3000」
2020年3月2日 06:00
マニアックで高機能なことで知られるASUSブランドのWi-Fi 6対応ルーターが、ようやく購入しやすい価格帯になってきた。ASUSならではの「AiMesh」やセキュリティ機能、QoS、クラウド機能、Alexa/IFTTTとの連携機能はそのままに、コンパクトな筐体と手ごろな価格を実現した「RT-AX3000」を試してみた。
低価格なわりに豊富な機能で「遊べる」Wi-Fi 6ルーター
最大2402Mbps(5GHz帯)+574Mbps(2.4GHz帯)のWi-Fi 6で、無線性能は十分以上。
トレンドマイクロの技術を使った「AiProtection」の機能で、セキュリティ対策もOK。
端末ごとアプリごとの帯域制御も、「Adaptive QoS」で簡単。
簡易NASだけでなく、TimeMachineやクラウドストレージとしても使える「AiCloud」にも対応。
VPNは、PPTP、OpenVPN、IPSec VPNと3種類のサーバーに対応。
Alexa & IFTTT連携で、ルーターの機能を音声操作可能。
ASUSのルーターと言えば、基本的なネットワークやWi-Fiの機能だけでなく、こうした付加機能が豊富なことで知られるが、その特徴はそのままに、扱いやすいサイズとリーズナブルな価格を実現したのが、今回取り上げる「RT-AX3000」だ。
現状、Wi-Fi 6に対応するルーターは3万円以上の高価格帯が中心で、トップモデルともなれば5万円オーバーも珍しくない。
ASUSのラインアップで、これまで最も低価格だったのは、トライバンド対応の小型Wi-Fi 6ルーター「RT-AX92U」だった。今回の「RT-AX3000」は、これを1万円以上も下回る1万9800円前後での販売となる。旧世代のWi-Fi 5製品と比べれば確かに安くはないが、次世代のWi-Fi 6対応製品が、ようやく手の届く価格帯にまで下りてきたことになる。
しかも、前述したASUS製品ならではの豊富な機能が、きちんと踏襲されている点が大きなポイントだろう。
高速なWi-Fi 6対応機、それもいろいろな機能で「遊べる」製品が欲しいと思っている人には、注目の製品になるはずだ。
コンパクトな筐体で、ビジネスにも店舗にも使える
それでは、実機をチェックしていこう。RT-AX3000の本体は意外にコンパクトだ。
写真で見ると大きいイメージがあるが、実際に手にしてみると片手で軽々扱える重量とコンパクトさ。「Wi-Fi 6対応機はゴツい」というイメージがあるかもしれないが、これなら設置場所に困ることはあまりないだろう。
デザインは、同社のゲーミング製品の文脈を受け継いだ独自のラインで構成されているが、余計なアクセントカラーがないからか、かなりスッキリとしている。ASUSらしさも残しつつ、変な目立ち方をしない好印象のデザインだ。
アンテナが外付けなので、デザイン的な好みが分かれるだろうが、3階建て住宅などで上下方向に電波の向きを調整したい場合などには、外付けであるメリットが活きてくる。
対応規格はIEEE 802.11axドラフトで、最大速度は冒頭でも少し触れたが、5GHz帯が160MHz幅2ストリームで2402Mbps、2.4GHz帯が40MHz幅2ストリームで574Mbpsとなる。
Wi-Fi 6の速度は、同じ2402Mbpsでも80MHz幅×4ストリームと160MHz幅×2ストリームのどちらでも実現可能で、製品によって違う場合もあるため混乱しがちだが、本製品は後者となる。
このため、80MHz幅×2ストリームのiPhone 11を接続した場合は最大1201Mbps、Intel AX200チップを搭載したWi-Fi 6対応ノートPCの場合は160MHz幅×2ストリームで最大2402Mbpsの通信ができる。
現状、2402Mbps以上の速度を実現できるコンシューマー向けWi-Fi子機は存在しないため、Wi-Fiのスペック的には、事実上、最大速度を実現可能と考えていい。
ちなみに、採用CPUはトリプルコアで1.5GHzとなる。低価格なWi-Fi 6ルーターにはIntel製チップを採用するものが多いが、本製品では、型番は異なるものの、ほかのASUS製ルーターで搭載実績の多いBroadcom製となる。
RT-AX3000 | RT-AX92U | |
実売価格 | 1万9800円 | 3万3753円 |
CPU | トリプルコア、1.5GHz | デュアルコア、1.8GHz |
メモリ | 512MB | 512MB |
Wi-Fi規格 | IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b | IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b |
バンド数 | 2 | 3 |
最大速度(2.4GHz) | 574Mbps | 400Mbps |
最大速度(5GHz-1) | 2402Mbps | 867Mbps |
最大速度(5GHz-2) | - | 4804Mbps(11ac時4333Mbps) |
チャネル(2.4GHz) | 1-13ch | 1-13ch |
チャネル(5GH-1) | W52/W53/W56 | W52/W53 |
チャネル(5GH-2) | - | W56 |
MIMOストリーム数 | 2 | 4 |
アンテナ | 外付け(4本) | 外付け(4本) |
WAN | 1000Mbps×1 | 1000Mbps×1 |
LAN | 1000Mbps×4 | 1000Mbps×4 |
USB | USB 3.1 Gen1×1 | USB 3.1 Gen1×1、USB 2.0×1 |
WPA3 | ○ | - |
動作モード | RT/AP/リピーター/ブリッジ/AiMeshノード | RT/AP/リピーター/ブリッジ/AiMeshノード |
サイズ(幅×奥行×高さ) | 224×154×160mm | 155×52.6×155mm |
インターフェースは、有線LANはすべてギガビット対応で、WANが1ポート、LANが4ポート搭載されている。
ただし、ASUS製品が早くから搭載していた「デュアルWAN」にも対応しており、任意のLANポートをWANとして構成可能だ(USBドングルとの組み合わせも可能)。
複数の回線がある一般家庭は珍しいだろうが、オフィスなどで2回線を活用すれば、フェイルオーバーによる回線断の回避やロードバランスによる負荷分散を図ることができる。
価格面だけなら、さらに安価なWi-Fi 6対応ルーターも存在するが、こうした豊富な機能を活用した使いこなしができる点が、本製品ならではのメリットとなる。
「AiProtection」による悪質サイトブロックや脆弱性保護(IPSによりパケットを検査して危険な通信を遮断)、感染デバイス検出ブロック機能も利用できる上、VPNクライアント機能を使って拠点へ安全に接続することもできる。
また、Adaptive QoSを使ってVoIPを優先処理することもできるので、ビジネスシーンでも柔軟な利用が可能だ。
さらに筐体はコンパクトで置き場所に困らないので、店舗など、サテライト側に設置するのに適していると言えそうだ。
アプリを使ってセットアップ可能
セットアップにPCを用いることも可能だが、「ASUS Router」アプリを使ってスマートフォンからも実行できる。
初期設定時、Wi-Fiの接続は手動となっており、パスワードなしの初期設定用SSIDに接続して、SSIDやパスワード、インターネット接続などをアプリからウィザード形式で構成できる。流れに沿って必要な情報を入力していくだけなので、誰でも迷わず設定できるだろう。
ASUSのルーターは昔からそうだが、管理用ページにアクセスするためのアカウントに独自のユーザーIDを設定できる。このユーザーIDが「admin」に固定されている製品がまだ少なくない状況を考えると、これも地味ながら美点と言えるだろう。
インターネット接続は、一般的なDHCPクライアント、IP固定、PPPoE、PPTP、L2TPの対応だ。IPv6は、現在一般的なIPoE方式のIPv6サービスからIPv6のアドレスを取得したり、クライアントへ配布することは可能となっている。
アプリの完成度は高く、設定できる項目も多いが、VPNなど一部の設定は、PCからウェブブラウザーを使って実行する必要がある。
ただし、ゲスト用ネットワークの構成時には、スマートフォンアプリを利用しておくと、作成だけでなく、接続用のQRコードを表示したり接続情報を共有することができる。このため、普段はアプリを使って管理するのがお勧めだ。
パフォーマンスも十分
気になるパフォーマンスだが、実用上は十分だ。以下は、木造3階建ての筆者宅の1階にRT-AX3000を設置し、2階、3階入口、3階端の窓際(最も遠い地点)でiPerf3による速度を計測した結果だ。
本製品では、出荷時設定で「802.11ax/Wi-Fi6モード」および「160MHzを有効にする」が有効化されているため、Intel AX200搭載ノートPCのように、160MHz幅に対応したWi-Fi子機では、何も設定しなくても2402Mbpsでリンクする。
160MHz幅はかなり帯域を占有するので、周囲の状況によってはあえて80MHz幅で使う選択肢もあるが、160MHz幅が標準で無効になっている製品も存在するので、標準で有効化されているのはありがたいところだ。
1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 | ||
Intel AX200 | 上り | 927 | 869 | 424 | 256 |
下り | 946 | 542 | 420 | 183 | |
iPhone 11 | 上り | 611 | 496 | 257 | 103 |
下り | 910 | 530 | 316 | 154 |
結果を見ると、なかなか優秀だ。近距離では900Mbpsオーバーを実現できており、有線LANの1Gbpsの上限をきっちり達成できている。
2階でも下り542Mbps、上り869Mbpsと優秀で、さほど距離が離れていなかったり、遮へい物も少なかったりする環境なら、かなり高速な通信ができる。
3階の長距離も優秀で、見通しのいい3階入口では上り下りとも400Mbpsをオーバーし、3階窓際でも200Mbps前後で通信できているので、エントリー向けのWi-Fi 6ルーターとしては、十分に実用的な性能だ。
メッシュWi-Fi構成も可能
以上、ASUSのRT-AX3000を実際にテストしてみたが、ASUSのWi-Fi 6対応機として現在のところ最も低価格帯に位置する製品ながら、機能的には上位モデルとほぼ同等、それでいてコンパクトでリーズナブル、そして通信速度も良好と、なかなかコストパフォーマンスの高い1台と言えそうだ。
今回はテストできなかったが、本機を複数台利用することで、メッシュWi-Fiの構成も可能だ。万が一、1台では電波が届きにくい環境であっても、後からメッシュWi-Fi構成へ変更することで、広いエリアをカバーできるようになる。
単純な価格だけならいくつか競合製品が存在するが、ソフトウェアの完成度の高さはASUSならではで、使い方次第でビジネスシーンに利用したり、メッシュWi-Fiで広いエリアをカバーしたりと、さまざまな用途に利用できる。こうした柔軟性の高さこそ、本機の特徴と言えるだろう。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)