清水理史の「イニシャルB」
なんと2万円台でお買い得! Wi-Fi 6トライバンド+2.5GbEで遠距離400Mbps超! TP-Link「Archer AX90」
2021年3月15日 06:00
TP-Linkから、新型のWi-Fiルーター「Archer AX90」が発売された。最大の特徴はTP-Linkならではのコスパの高さで、他社のWi-Fi 6デュアルバンド対応機の価格帯である2.5万円で、トライバンド、さらに2.5GBASE-Tの有線LANまでが手に入る。とにかく性能重視という人にとっては、見逃せない製品だ。
Wi-Fi 6トライバンド+2.5GBASE-Tの高スペックで相場の半額のバーゲンプライス
TP-Linkの「Archer AX90」は、性能を考えるとかなりお買い得な製品だ。
Wi-Fi 6対応で、しかも5GHz帯×2+2.4GHz帯×1のトライバンド対応機というと、実売価格が4万円台後半にもなる他メーカーではフラッグシップ級モデルと同等のスペックだ。
Archer AX90は、このスペックを備えながら実売価格は税込2万4800円(2月23日時点のAmazon.co.jp価格)で購入できる。同価格帯の競合製品となると、国内外問わず各メーカーとも5GHz帯×1+2.4GHz帯×1のデュアルバンド対応機がほとんどだ。つまり、実質、5GHz帯1つ分が、価格アップなしで入手できることになる。
ちなみに同社製のラインアップでは、4804Mbps+1148Mbpsのデュアルバンド対応機「Archer AX6000」(2.5Gbps LAN対応で1.8GHzクアッドコアCPU搭載)が実売価格2万6800円なので、本製品の方がWi-Fiのスペックは上(CPUは若干クロックダウン)で、価格は安いことになる。
TP-Linkはもともとコスパの高さが特徴のメーカーではあるが、本製品も相変わらずの驚異的な価格設定だ。
Archer AX90 | |
実売価格 | 2万4800円 |
CPU | クアッドコア、1.5GHz |
メモリ | - |
Wi-Fiチップ(5GHz) | 非公表 |
Wi-Fi対応規格 | IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b |
バンド数 | 3 |
160MHz幅対応 | ○ |
最大速度(2.4GHz) | 574Mbps |
最大速度(5GHz-1) | 1201Mbps |
最大速度(5GHz-2) | 4804Mbps |
チャネル(2.4GHz) | 1~13 |
チャネル(5GHz-1) | W52/W53 |
チャネル(5GHz-2) | W56 |
新電波法(144ch) | ○ |
ストリーム数 | 4(5GHz-2) |
アンテナ | 8本(外付け) |
WPA3 | ○ |
IPoE IPv6 | ○ |
DS-Lite | × |
MAP-E | × |
セキュリティ | TP-Link HomeShield |
WAN/LAN | 1Gbps×1、2.5Gbps×1 |
LAN | 1Gbps×3 |
USB | USB 2.0×1、USB 3.0×1 |
動作モード | RT/AP |
ファームウェア自動更新 | ○ |
本体サイズ(幅×奥行×高さ) | 310.9×206.9×173.7mm |
トライバンドの恩恵は、本連載でも度々紹介している通りで、接続台数が多いケース、もしくは中継機やメッシュ構成で使うケースで、特に生きてくる。
例えば、同じ5GHz帯が2系統あれば、テレワーク用に帯域が必要な端末と、家庭用の動画配信機器やゲーム機などで、使う帯域を分けることができるし、クライアント接続用と中継用で5GHz帯を使い分ければ、中継専用の超高速な幹線路を用意できるわけだ。
詳しくは後述するが、本製品は単体でもかなり性能が高いため、一般的な木造の住宅などであれば家中を1台でまかなえるだろう。より広い住宅やマンションなどで中継機やメッシュで利用せざるを得ないときも、このプラス1の5GHz帯があると、中継には非常に有利だ。
そして家庭での利用はもちろんのこと、本製品には2.5Gbps対応のWAN/LANポートも搭載されているので、1Gpbs超えの高速なインターネット接続回線を利用している場合や、2.5Gbps対応のNASなどを利用しているケースにも対応できるようになっている。
とにかく速くて快適なホームWi-Fiを構築したいというニーズにも対応できるが、セキュリティやVPNサーバーなどの機能も搭載しているので、小規模なオフィスなどで利用するビジネス用のWi-Fiルーターとしても使える活用の幅が広い製品と言えそうだ。
高性能を支えるアンテナ8本で実利重視のデザイン
それでは製品をチェックしていこう。
サイズ自体は、アンテナを含んだ状態で310.9×206.9×173.7mm(幅×奥行き×高さ)となっていて、それほど大きくない。本体部分だけなら、デュアルバンド対応でも本製品より大きいものがあるほどだ。
もちろん、左右に2本ずつ、背面側に4本で合計8本のアンテナはかなりの迫力だ。垂直に立てた状態ならそれほどでもないが、上下方向などに電波を飛ばそうとアンテナを倒すと、かなりの設置面積が必要となる。
とは言え、このアンテナはArcher AX90の性能の高さを支える重要な要素の1つでもある。
その8本のアンテナは、4ストリームの4804Mbps(5GHz)用に4本、2ストリームの1201Mbps(5GHz)に2本、2ストリームの574Mbps(2.4GHz)用に2本と、Wi-Fiのストリームごとに1本ずつ、きちんと用意されている。
どれかが内蔵で一部だけ外付けということではなく、全て外付けでアンテナが用意されているわけだ。
前面中央から放射状に入るスリットが特徴的なデザインともども、このアンテナは、正直好みが分かれる部分ではあるが、性能重視の考え方をすれば、理にかなっていると考えることもできる。実際、後述するように性能も優秀なので、実利を取るなら、気にならないだろう。
有線LANポートは、全て背面に用意されており、LAN接続用に1Gbps×3ポートを搭載するほか、WAN/LANを切り替えられるポートが1Gbps×1と2.5Gbps×1の合計2基用意されている。
WANとして利用するかLANとして利用するかは、初期セットアップのときに選択できる。どちらかをWANに選択すると他方がLANになるため、高速な2.5Gbpsポートをどう使うかはユーザーの選択次第だ。
10Gbpsに対応する高速なインターネット接続環境があるならWANとして使うこともできるし、2.5Gbps対応のNASやゲーミングPCなどがあるならLANとして使うのが適しているだろう。
このほか背面には、USB 2.0×1、正面から見て左側の側面にUSB 3.0×1が搭載されている。ストレージを接続することで、簡易ファイルサーバーとして利用したり、メディア共有やTime Machineバックアップなどに利用できる。家庭や小規模オフィスでのファイル共有には十分な印象だ。
充実の取説やウィザード、スマホアプリで初期セットアップも簡単
TP-Linkの製品というと、どうしても性能と価格を中心としたコスパの話に終始してしまうのだが、セットアップの容易さも好印象だ。
2016年に同社が日本国内の市場へ本格参入した当初は、国内メーカー品と比べると設定画面や取扱説明書などが未熟なイメージがあったが、今のTP-Link製品は、国内メーカーとも肩を並べるほど使いやすい製品になりつつある。
同梱の「かんたん設定ガイド」はイラストが多用されていて文字も大きく、重要な情報などが分かりやすい。スマートフォン向けアプリを使ったセットアップについても詳しく解説されている。
また、簡易ながらUSBポートを利用した機能の紹介などもあるし、初期設定のSSIDとパスワードが記載された「Wi-Fi情報カード」も同梱される。こうした同梱品は本来コストがかかるはずなので、それを考えても価格設定が驚異的だ。
設定画面にしても、同社のイメージカラーであるブルーを基調とした優しいイメージのデザインになっており、こちらも要所要所でイラストが使われ、直感的で分かりやすい。
初期設定ウィザードについても、インターネット接続やWi-Fiネットワーク設定ができるのはもちろん、管理者パスワードの設定やファームウェアの自動アップデートも、流れの中できちんと実行されるようになっている(ファームウェアは夜間の自動アップデートも可能)。
IPv6に関しては、DS-LiteやMAP-Eには対応していないが、IPoE方式のIPv6自体には対応しており、しかも標準設定でパススルーでIPv6がクライアントに割り当てられるようになっている。海外メーカー製のルーターは、IPv6設定が標準で無効で、後から自分で有効にしなければならないケースが多い。これはいかにも海外市場しか見ていない発想だ。
一方、日本はIPv6が利用可能な回線が多い。もちろん、本製品はIPv4 over IPv6のDS-LiteやMAP-Eに対応していないが、だからと言ってIPv6そのものを無効にしていないのは良い判断だ。これにより、IPv6が使える環境であれば、標準設定のままですぐにクライアントにIPv6アドレスが割り当てられる(IPv4はPPPoEや上位ルーターで利用する)。
また、最新のセキュリティ規格であるWPA3や、電波法の改正で日本でも昨年から利用が許可された144chにも対応する。このように、国内メーカー製品のいいところを積極的に採り入れたり、日本の市場をよく調査することで、使いやすさも着実に進化している印象だ。
最近、全国の家電量販店でも広く棚を確保している状況も見かけるが、これなら売る側もお勧めしやすいだろうと容易に想像できる。
ちなみに、TP-Linkの製品は、TP-Link IDを利用することで、LAN内だけでなく外部からも設定や管理が可能となっている。こうした点は、小規模なオフィスでの利用にも適しているので、テレワーク時にオフィスのルーターを管理しなければならなくなったとしても、リモートからある程度の設定ができるのは安心だ。
ルーター単体で3F窓側400Mbps超をたたき出せるのは強烈
気になる実力をチェックしていこう。
以下のグラフは木造3階建ての筆者宅の1階にArcher AX90を設置し、各階でiPerf3による速度を計測した結果だ。LANに設定した2.5GbpsポートにPCを接続し、サーバーとして利用して速度を計測している。
Archer AX90では前述した通り、4804Mbpsと1201Mbps、574Mbpsの3つの帯域を利用できるが、今回は最大速度を計測する目的で4804Mbpsの5GHz帯の帯域を利用した。クライアントはIntel AX200を搭載したPCを利用し、2ストリーム160MHz幅を有効にして最大2402Mbpsで計測している(このほか1201MbpsのiPhone 11も使用)。
1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 | ||
PC(Intel AX200) | 上り | 1290 | 661 | 435 | 293 |
下り | 1120 | 535 | 531 | 474 | |
iPhone 11 | 上り | 606 | 406 | 192 | 169 |
下り | 788 | 614 | 409 | 279 |
結果を見ると、本製品の性能の良さが見えてくる。
近距離は2.5Gbps LANと最大2402MbpsのWi-Fi 6(2ストリーム160MHz幅)の恩恵で実効で1.1~1.2Gbpsと1Gbpsの有線LAN超えをマーク。Wi-Fi経由でも高速にNASなどへのアクセスできることが分かる結果となった。
2階の中距離も400~600Mbpsとかなり優秀なので、1フロア上下の環境や1枚壁を隔てた部屋などであれば、余裕の帯域を確保できる。
3階の長距離は、電波状況のいい入り口付近で最大531Mbpsとかなり高速だが、もっとも遠い3階窓際で最大474Mbps(PCの下り)と驚異的な速度を実現できている。
筆者宅の3階窓際で400Mbps超というのは、トライバンドメッシュ製品を使った場合の速度なので、これを単体のルーターでたたき出せるというのはなかなか強烈だ。iPhone 11でも下りで279Mbpなので、家中どこでも困ることがない速度が実現できている。
この速度を見せられると、8本もあり、設置面積も専有されたとしても、外付けアンテナがあって良かったと実感させられる。
これなら、見た目に反対する家族がいたとしても、それを押し切る価値はある。
VPNサーバーやセキュリティの機能でテレワークにも最適
このように、文句ナシの性能を誇るArcher AX90だが、高性能製品らしく、付加機能も豊富だ。前述したUSB共有に加え、次の2つの機能にも対応する(アクセスポイントモード動作時は利用不可)。
- HomeSheild
ネットワークの通信をチェックし、外部からの不正侵入や感染した内部端末からの通信をブロックしたり、悪意のあるコンテンツにアクセスすることを防ぐ「コンテンツフィルター」や、子どもがアクセス可能なコンテンツのコントロールや利用時間の制限ができる「保護者による制限」を利用可能 - VPNサーバー
OpenVPNまたはPPTPを利用したVPNサーバーとして動作可能。OpenVPNに関しては、接続用の証明書や設定ファイルも簡単に出力できる。DDNS機能も提供されているので、オフィスなどに設置することで、社員が安全に社内にアクセスできるVPN環境を手軽に構築可能
シンプルに無線性能だけでも2.5万円という価値に十分見合うと思えるが、こうした付加機能までも利用できるメリットは大きい。ビジネス活用も視野に入るコンシューマー向けWi-Fiルーターと言ってよさそうだ。
これからWi-Fiルーターの買い換えを検討している場合は、候補として検討して損のない1台と言える。
(制作協力:ティーピーリンクジャパン株式会社)