第90回:ネットワークカメラは普及するか!?
低価格で結構「使える」コレガの「CG-NCMN」



 コレガから、標準価格16,500円という低価格なネットワークカメラ「CG-NCMN」が登場した(無線LAN対応の「CG-WLNC11MN」は22,000円)。実際の発売は3月だが、その前に試作品をお借りすることができたので、早速、その実力を検証してみよう。





低価格化が著しいネットワークカメラ

 これまで、LANに直接接続するタイプのネットワークカメラは、価格の高さから、正直、個人ユーザーとしては手を出しにくい印象があった。たとえば、店頭などでもたまに見かけるパナソニックの「BB-NWC150」などは、IEEE 802.11b対応で、リモートからカメラの向きをコントロールできるなど高機能ではあるものの、価格は実売で4万円前後。アイ・オー・データ機器のMPEG-4対応ビデオサーバー「TSR-MS4R」なども実売で5万円前後という高額製品だった。

 しかし、このような状況が変わり始めてきている。今年の初めにプラネックスから有線対応の「CS-TX01F」(19,800円)や無線LAN対応の「CS-W01B」(24,800円)が登場し、さらに今回、コレガからこれをさらに下回る価格の製品が登場。一気に2万円前後にまで価格帯が下がってきた。

 ネットワークカメラは、どちらかというと、限られた用途向けで、あまり普及が見込めないというイメージがあったが、これは価格が高いことにもひとつの原因があったと考えられる。さすがに4~5万円もの投資ともなれば、明確な用途がない限り買う気は起こらない。しかし、今回のコレガの製品や前述したプラネックスの製品のように2万円前後であれば、試しに買ってみるかという気にもなるだろう。

 このような低価格化によって普及が進めば、これまで考えられていたような限られた用途だけでなく、さまざまな使い方がなされていくのではないかと大きな期待が持てるところだ。もはや、ネットワークカメラはニッチな市場に向けた製品ではなくなりつつあるのかもしれない。





Webサーバー機能内蔵で手軽に利用可能

 しかし、いくら価格が安くても、実力が伴わなければ、やはり購入は躊躇される。その点、コレガの製品の実力はいかなるものなのだろうか?


円筒形の筐体を採用したシンプルなデザイン。台座の部分は可動式で、方向をある程度自由に調整可能。壁に取り付けるためのネジなども付属する

 今回、テストで利用したのは有線LANに対応した「CG-NCMN」というモデルの製品だ。同社のネットワークカメラには、IEEE 802.11bの無線LANに対応した「CG-WLNC11MN」というモデルも存在するが、今回は試作段階ということもあり、無線LANモデルはテストすることができなかった。とは言え、接続方式に違いがあるだけで、使える機能はどちらも同じだ。実際に購入する際は、本体を設置する場所に応じてモデルを選べばいいだろう。

 まずは、セットアップだが、これは比較的簡単だった。パッケージには本体の初期設定用ユーティリティが付属しており、これを利用することで初期設定が手軽にできるようになっている。具体的には、ユーティリティによってネットワーク上のカメラを検索し、IPアドレスや画質の設定などをするだけだ。もちろん、ルータなどのように、カメラ本体のIPアドレスを指定して、ブラウザから設定を行なうこともできる。


初期設定用のユーティリティ。ネットワーク上のカメラを自動的に検索し、IPアドレスなどの設定が可能

 実際の映像確認も手軽だ。初期設定時と同様にブラウザを利用してカメラ本体にアクセスすれば、カメラによって撮影された静止画をすぐに確認できる。もちろん、動画の確認も可能で、設定ページに用意されている「Video」ボタンをクリックすると、JAVAアプレットが起動し、ブラウザ内に動画が表示される。この辺りは、シンプルで、実にわかりやすい設計だ。


ブラウザを利用してカメラ本体にアクセスすることで、静止画の画像を確認できる

動画はJAVAアプレットによる表示。画質的にも悪くはないレベル

 一方、画質はというと、傑出して良いというわけではないが、十分実用的な範囲内といったところだろう。カメラ部分には、30万画素の1/3インチカラーCMOSセンサーが採用されており、QVGA(320×240ドット)の解像度時で最大20fps、VGA(640×480ドット)の解像度で最大6fpsでの動画撮影が可能となっている(画像形式はJPEG、フレーム転送速度は1/5/7/15/20/autoの6段階に変更可能)。さすがにVGAに設定するとスムーズさに欠ける印象があるが、QVGAであれば頻繁に動くような被写体もそれなりに撮影できた。


解像度やフレーム転送速度なども変更できる。ただし、VGAではかなりフレーム転送速度が落ちるため、QVGAでの利用がお勧め

 印象としては、カメラ付き携帯電話に近い。フレーム内に動くものがあったり、カメラ本体を動かすと、その動作から少し遅れて画像が表示されるような感じだ。





意外に多機能

 このように、ネットワーク経由で手軽に画像を確認できるCG-NCMNだが、さらに高度な使い方も可能だ。

 たとえば、CG-NCMNのFTPクライアント機能を利用して、自分のホームページに定期的に画像を転送したり、撮影した画像を一定時間おき、もしくは決められたスケジュールでメール送信することもできる。また、ルータでポート80を通過させるように設定しておけば(利用するポート番号の変更も可能)、外部から直接CG-NCMNにアクセスすることも可能だ。

 このほか、CG-NCMNにはPPPoEクライアントやDynamicDNS機能なども搭載されているので、こちらを利用して外部からのアクセス環境を整えることもできる。外部からの画像確認方法が複数用意されている点も、本製品の特徴のひとつと言っていいだろう。


メールやFTPを利用して画像を自動的に転送することも可能。「写メ蔵サービス」(http://shamezo.com/)等の画像交換サービスを利用することで、携帯電話などへの画像転送もできる

 なお、外部からアクセスできる環境を整える場合は、ユーザーの管理も合わせて設定しておくことをお勧めする。CG-NCMNにはユーザーを登録することが可能になっており、各ユーザーごとに画像を参照させるか、FTPなどの転送を許可するかなどの設定ができるようになっている。特定のユーザーだけが映像を確認できるようにしたい場合は、この方法でアクセスできるユーザーを制限しておくべきだろう。


ユーザー管理機能にも対応。特定のユーザーにだけ画像や映像の閲覧を許可することもできる

 このほか、CG-NCMNにはPC上で動作するユーティリティソフトも付属しているのだが、これを利用すると、動作検知機能を利用して映像が変化した場合にユーティリティソフト側で映像の録画を開始したり、警告音を鳴らすことができる。さすがに暗い場所での撮影には耐えられないが、場合によってはPCと組み合わせて、本格的な監視カメラとして利用できそうだ。


付属のユーティリティを利用すると、動画検知機能なども利用可能。映像に変化があった場合に録画を開始したり、PCでアラームを鳴らすことなどができる




設置場所によっては工夫が必要

 このように機能的には申し分のないCG-NCMNだが、唯一、問題になりそうなのが設置場所だ。CG-NCMNを設置できるのは、有線LANのケーブルを敷設でき、さらに電源の供給ができる場所に限られてしまう。

 もちろん、無線LANモデルである「CG-WLNC11MN」を選べばLANケーブルの問題はクリアできる。しかし、本体に電源を供給しなければならないという点には変わりはない。また、CG-NCMNの場合も同社が販売しているPoE給電/受電アダプタを利用することで、電源の問題をクリアすることはできるが、それでもLANケーブルを配線しなければならないという問題は残ってしまう(CG-WLNC11MNで電源を確保できない場合も同様)。


別売りのPoE給電/受電アダプタ。電源が確保できない場所ではこれを利用することになる

 つまり、設置場所によっては、電源を延長するか、LANケーブルを敷設するかのいずれかの選択を迫られてしまうわけだ。屋内に設置するのであれば、あまり問題にならないかもしれないが、玄関モニターのように屋外での利用を想定している場合は、設置場所に十分注意が必要だろう。購入前に設置場所を確認し、どの方法で接続するかを慎重に検討しておくことをお勧めする。





活用方法の発展に期待

 以上、CG-NCMNをテストしてみたが、設置場所を選ぶという問題はあるものの、機能的に申し分なく、しかも使いやすい製品だと言える。価格を考えれば、かなりお買得な製品と言ってもいいだろう。

 ただしこれを何に使えば便利なのかが、個人的にはいまひとつ想像しきれない。留守宅やペットの監視、玄関モニターといった用途での利用を考えているなら、買って損はないかもしれない。ただ、あくまでも個人的な印象としては、「何に使う?」と冷静に考えてしまって、実際の購入に踏み切れないというのが正直なところだ。

 もちろん、この製品の登場によって、ネットワークカメラの敷居が下がってきたのは事実なので、これまでに思いもよらなかった活用方法がユーザーの手によって考え出される可能性も高い。しかし、逆に言えば、ユーザーに便利だと思わせるような使い方が提案されなければ、低価格化が進んでもネットワークカメラの需要は伸びない可能性もあるだろう。このあたりは、今後の動向が大いに注目されるところだ。


関連情報

2004/2/24 11:01


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。