第200回:外出先から自宅PCのテレビ映像をブラウザで視聴
手軽にストリーミングサーバーを構築できるイニシア「Clipstream Live」



 イニシアから、PCに搭載されたWebカメラやテレビチューナーの映像をリアルタイムにエンコードしてストリーミング配信できる「Clipstream Live」が発売された。同社のサイトからダウンロード可能な体験版を利用して、その機能を検証してみよう。





テレビチューナーの映像をネットワーク経由で配信

Clipstream Liveのパッケージ

 イニシアから発売された「Clipstream Live」は、なかなか面白いソフトウェアだ。基本的にはPCに搭載されているキャプチャデバイスの映像をリアルタイムにストリーム配信できるソフトウェアなのだが、USB接続のWebカメラなどに加えて、PCに搭載されているテレビチューナーカードの映像を配信することが可能となっている。USB接続のWebカメラなどの映像であれば、Windows Media Encorderなどでも手軽に配信できるが、テレビチューナーの映像となると、手軽な製品がなかっただけに貴重な存在と言えそうだ。

 同様にテレビの映像をインターネット経由で配信する方法としては、本コラムでも以前に取り上げたソニーの「ロケーションフリー」などが存在するが、Clipstream Liveは純粋なソフトウェアのため、一般的なPCとテレビチューナーカードという汎用的な環境をサーバーとして利用できる。また、テレビを再生するクライアント側もブラウザを使うため、特別なソフトウェアを必要としないのが特徴だ。ロケーションフリーほど多機能でないのは確かだが、幅広いユーザーが手軽に使えるという点では、なかなか興味深い製品と言えるだろう。





キャプチャデバイスの設定が必要

 早速、Clipstream Liveを利用してみよう。製品自体はすでに発売されており(クライアント1ライセンスの「Personal」で定価15,540円)、さまざなサイトでダウンロード購入することも可能だが、今回は同社のサイトからダウンロード可能な体験版を利用して機能を評価した。

 まずはセットアップだが、インストール自体はファイルが単純にコピーされるだけで非常にあっさりと終了した。しかし、当然のことながらこれだけでは映像を配信できない。映像を配信するには、ソースとなるキャプチャデバイスの設定が必要になる。キャプチャデバイスとしてUSB接続のWebカメラなどを利用する場合は、設定画面でPCに接続されているWebカメラを選択するだけだが、テレビチューナーを利用する場合はもう少し細かい設定が必要になる。


Clipstream Liveのメイン画面。スタートボタンを押すと、プレビュー画面に表示されている映像がストリーミング配信される

 まず、利用するテレビチューナーカードがClipstream Liveに対応していないと利用できない。同社のホームページで動作確認済みのテレビチューナーカードを確認できるので、あらかじめ確認しておくと良いだろう。

 ただし、動作確認されていないテレビチューナーカードの場合でも動作する場合もある。試しに手元にあったSKnetの「MonsterTV PH-RM」を利用してみたが、問題なくClipstream Liveで認識できた。もちろん、どのような製品でも認識するとは限らないので、不安な場合はClipstream Liveの体験版で認識するかどうかをテストしてみるのが確実だろう。

 なお、キャプチャデバイスの設定では、映像に加えてオーディオデバイスも選択する必要がある。オーディオケーブルなどを利用してテレビチューナーの音声をサウンドデバイス経由で取り込んでいる場合はサウンドカードの入力をオーディオデバイスを、そうでない場合はテレビチューナーカードのオーディオキャプチャデバイスを指定しておこう。このあたりの設定は利用環境によって違いがあるので、わからない場合は、設定をいろいろと変更しながら音が出るかどうかを試してみることをお勧めする。

 キャプチャデバイスの選択が完了したら、続けてチャンネルの設定を行なう。ビデオキャプチャデバイスの設定画面を表示すると、チャンネルのチューニングを行なえるので、ここで入力ソース(アンテナやケーブル)を選択し、チャンネルのチューニングを実行しておく。これで映像関連の設定は完了だ。


実際に映像を配信するには、映像ソースとしてキャプチャデバイスの設定が必要になる。チューナーカードやオーディオデバイスを選択し、さらにテレビチューナーカードでチャンネルのチューニングを行なう必要がある




Webサーバーを利用して配信、画質はロケフリと同等か

 キャプチャデバイスの設定が完了すれば、とりあえずローカルでClipstream Liveの動作をテストできる。Clipstream Liveは簡易的なWebサーバー機能を利用して映像を配信する仕様のため、ブラウザを起動してClipstream LiveをインストールしたPCのIPアドレスを指定すれば(http://xxx.xxx.xxx.xxx)、Clipstream Liveの画面が表示され、再生ボタンを押してしばらくすると映像が再生されるようになる。


クライアント側には特別なソフトウェアは必要ない。ブラウザを利用してサーバーにアクセスすればストリーミング配信された映像が再生される。なお、体験版では画面上にロゴが表示されるが、製品版を利用すればロゴが消える

 もちろんチャンネルの変更も可能で、再生画面を右クリックするとチャンネル変更用のJavaアプレットがポップアップ表示される。ここでチャンネルを選択すると、別のチャンネルの映像が再生される。バッファリングの必要があるため、チャンネルを変更してから実際に映像が切り替わるまで数秒ほどのラグがあるが、見たいチャンネルの映像をライブで楽しめるのは大きなメリットと言えるだろう。また、画面の拡大も可能となっており、同様に再生画面を右クリックしてZOOMを選ぶと別ウィンドウに映像が表示され、大きな画面で映像を楽しめる。


チャンネルの変更や拡大表示も可能。チャンネル切替えはバッファの時間がかかるため、若干のタイムラグが発生する

 このほか、Clipstream Liveではストリーミング配信した映像をアーカイブとして一定時間(1時間/24時間)おきにハードディスクに保存することが可能で、過去に放送された内容をアーカイブから再生できる。あらかじめチャンネルを合わせて簡易的な録画機能として利用すれば、後からアーカイブで映像を再生することも可能だ。


Clipstream Liveの設定でファイルを保存するようにしておくと、ストリーミング配信された過去の映像をアーカイブとして再生できる

 なお、クライアント側の環境はInternet Explorerに加えて、Netscape、Firefox、Opera、Mac OSのSafariなど幅広いブラウザに対応しているが、映像の表示にJavaアプレットを利用するため、残念ながら携帯端末やゲーム機などのブラウザには対応していない。

 画質的には、映像フォーマットのスペック通りと言ったところだろう。Clipstream Liveでは、Destiny Media Technologies社が開発した独自の動画圧縮技術が採用されており、24~500kbpsの帯域、128×96~320×240のサイズ、0.5~15fpsのフレームレートを設定することが可能となっている。標準では「Low(192×44/3fps/64kbps)」、「Medium(320×240/10fps/256kbp)、「High(320×240/15fps/512kbps」の画質が設定されており、このうちLowまたはHighが帯域によって自動的に選択されるようになっている(サーバー側の設定でMediumも選択可能に設定できる)。

 LAN内など、十分な帯域が確保されている環境でHighで再生した場合、ブラウザの画面上で映像を見ている分には悪くない印象だ。フレームレートが15fpsなので、若干カクカクした印象があり、動きの速いスポーツ番組の視聴には向いていないが、ニュースやドラマなどは問題ないと感じた。

 ただし、Highの場合でも画面を拡大したり、さらにはインターネット経由で帯域が確保できずにLowで再生された場合は、画面の荒さがかなり目立つ。冒頭でロケーションフリーを同様の製品の例として挙げたが、画質的にはほぼ同等と言ったところだろうか。

 ちなみに、インターネット経由での視聴も可能だが、この場合はNAT越えの設定が必要になる。具体的にはルータでポートフォワード(アドレス変換)の設定を行なう。前述したようにClipstream LiveではWebサーバーを利用するので、ポート80を転送するように設定し、合わせてダイナミックDNSなどを利用するようにしておけば外部からのアクセスが可能となる。ルータでポート80が通過してしまうことになるが、Clipstream Liveへの接続にはパスワードなどの設定が可能なため、最低限のセキュリティは確保できるだろう。


ルータでポートフォワード(アドレス変換)の設定をしておけば、インターネット経由で利用することも可能。DynamicDNSと組み合わせれば外出先からでも手軽に利用できる




録画ソフトとの連携などもうひと工夫に期待

 このように、イニシアのClipstream Liveは、手軽にテレビの映像をストリーミングで配信できるため、外出先などでもテレビを楽しみたいというユーザーには悪くない選択肢と言える。

 ただし、欠点もある。Clipstream Liveを起動している最中はデバイスを占有してしまうため、テレビ再生/録画ソフトウェアなどからデバイスを利用できない。このため、Clipstream Liveを起動している間に録画予約などを行なっても、チューナーが利用できずに録画に失敗してしまう。可能ならテレビ再生/録画ソフトなどと連携して、録画時などには一時的にClipstream Liveでの配信を停止するなどといった使い方ができるようになれば、より実用的な使い方ができそうだ。

 また、ストリーミングで配信できるのはあくまでもClipstream Liveの映像のみという点も残念だ。前述したようにアーカイブで過去のストリーミングを再生することは可能だが、できればPCのテレビ録画ソフトで録画した映像など、すでにデータとして存在するソースの再生もできるとありがたい。もちろん、Clipstream Videoという映像データを配信するためのソフトウェアが存在するのだが、できれば両方の機能を統合して欲しいところだ。

 このほか、ロケーションフリーのように、DynamicDNSやポートフォワードの設定を自動的に行なえるような工夫も欲しいし、ビデオ入力経由で接続した機器の映像も配信できるようになってくれると嬉しい(ハードウェアの追加が必要なので難しいとは思うが……)。現状は、あくまでも外出先からテレビをライブで見られる環境を手軽かつ低コストで構築したいというユーザー向けの製品と言えるだろう。


関連情報

2006/6/20 11:06


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。