vProのツボ

vPro導入で学校のPCを節電! 2022年開校のIT先端校「京都TECH」に聞く、IT活用とクリエイティブ人材の育成法

インテル製のコラボツール「Unite」は学生発のアイデアが続々…… 学園祭での活用も?

学校法人滋慶コミュニケーションアート「京都デザイン&テクノロジー専門学校」学校長の細谷僚一氏(中央)、事務局長の杉内智礼氏(左)、教務部長の藤田淳也氏(右)
同校で導入が進んでいるvPro搭載PC。遠隔管理を軸としたセキュリティ向上はもちろん、遠隔管理による節電にも効果が見込めるという
インテルの画面コラボレーションツール「Unite」。ネットワークを介してディスプレイを共有し、利用者が「自分の画面」をそこに投影できる。1つの画面に対し、最大4人の利用者が投影できることと、利用者が「画面を投稿」するかのような使い勝手が特徴だ

 オンライン授業が急速に普及したのをきっかけに、国内でEdTech――教育現場のIT化(Education Technology)が急速に進んでいる。その最先端の事例として注目されているのが、今年4月に開校された学校法人滋慶コミュニケーションアート「京都デザイン&テクノロジー専門学校(以下、京都TECH)」だ。

 京都TECHは「コンピュータを使って創造力を仕事にする学校」をコンセプトに設立された教育機関。例えばデザインといっても自己表現の“アート”ではなく、ユーザーによろこんでもらうためのいわば“商業デザイン”が主。そのためには、今、企業や社会で求められていることを学生に体験してもらうことが重要ということで、企業との産学連携にも力を入れているという。

 同校では、様々な最新テクノロジーが導入されており、3Dプリンタやペンタブ、eスポーツ向けの最新デバイスといったものはもちろん、海外とも連携したホワイトハッカー育成向けのビジュアル表示システムまで用意されている。

 そして、そうした最新技術の一端として導入されたのが、「インテル vPro プラットフォーム」を搭載したPCや「インテル Unite ソリューション」といったインテルの最新テクノロジー。

 これは、インテルとの産学連携で導入されたものだが、vProでは昨今の教育機関で課題となってきた「節電」「セキュリティ対策」に期待ができ、画面コラボレーションシステムであるUniteでは「ITを使ったコラボレーション」で様々なアイデアが出てきているという。

 はたして、授業や会社の運営にどのような効果が期待されているのか? 今回は学校長の細谷僚一氏、事務局長の杉内智礼氏、教務部長の藤田淳也氏に話を伺った。

「インテル Unite ソリューション」の使い方をディスカッションする学生たち。先生だけでなく学生にも使ってもらうことで、新しい使い方を取り入れていきたいという

校内のPCをvProで一元管理、消費電力の節約にも

 新型コロナウイルスの感染拡大後に開校したこともあり、京都TECHでは校務のIT化について、さまざまソリューションが導入されたという。

 例えば、在学証明書や学生証の発行などは、校内に設置された専用端末で受付け。事務員の手間を減らすとともに、オンライン決済を利用することで現金の管理を不要としている。

 ほかにもさまざまな手続きをクラウド上で行うようにしたため、校内に総務部を置く必要がなくなり、バックオフィス業務は姉妹校と集約することが可能となった。さらに、基幹システムなどのツールを統合することで、学生の成績や面談結果などの個人情報を一元管理し、教員などが必要に応じて素早く情報にアクセスできるようにしている。

 その上でメンテナンスの観点から、人件費などのコスト削減に期待されているのが「インテル vPro プラットフォーム」だ。京都TECHでは全8フロアある校内のいたる所に授業用のPCが設置されているが、開校後は各マシンが消費する電力やトラブル時の対応が課題の1つとなっていた。

事務局長の杉内智礼氏

 そこで、杉内事務局長が注目したのが、インテル vPro プラットフォームの優れたリモート制御機能だ。稼働状況をツール経由で管理すれば、不要に起動しているPCの電源を遠隔で遮断できるようになる。PCの電源に関して無頓着になりがちなので、こうしたことを集中管理できるメリットは大きいという。また、何らかのトラブルがあった時も、メンテナンスの人員が全8フロアある校内を移動することなく、遠隔で問題を解決できるというメリットもある。

各フロアにある教室に置かれたPCもvProであれば遠隔で集中管理することができる

教育現場でニーズの高まる“PCの持ち出し”にトライするために

教務部長の藤田淳也氏

 ホワイトハッカー専攻などの担任を務めている藤田教務部長によると、10年前はあらゆる校務で書類の管理が必要だったという。それが今では、学外の都合で書面が必要になる奨学金手続きなどを除いて、ほぼすべての書類が電子化された。

 「これによって、ほぼすべての校務をPCで行うようになりました。そこで問題になるのがセキュリティ対策です。学生一人一人の個人情報を扱う性質上、教育現場ではゼロトラストが基本方針となっています。そのため、授業や保護者会などはリモートで行うことができますが、原則としてPCの持ち出しは行わないなど、グループ全体でルールが設けられています」(藤田教務部長)

 とはいえ、近年では多くの企業が機密情報をクラウドで管理するとともに、社員が利用するPCについても“紛失を想定した”セキュリティを組むようになった。具体的にはディスクの暗号化などを行うことで、そのPCが悪意のある人物の手にわたっても、内部のデータにはアクセスできない仕組みになっている。これによって、ノートPCの持ち出しについても、柔軟な対応を行う企業が増えているようだ。

 こうしたセキュリティの強度については、「インテル vPro プラットフォーム」対応モデルが最高峰と言えるわけだが、京都TECHではその可能性についても期待している部分は大きいようだ。

 「vPro搭載のノートPC導入によって、セキュリティが担保できるとなれば、その持ち出しについても可能性が見えてくるかもしれません。現場レベルで何が可能になるか? 実際に一つ一つ検証してみることが、新たな課題の解決にもつながると思います」(藤田教務部長)

 藤田氏によると、最近では授業の現場でノートPCの持ち出しについてのニーズが高まっているという。別の学校で講義を行う時などは、現地で用意されたPCを使っているが、そこには“ソフトがインストールできない”などの制約がある。また、学生が校外でプレゼンを行うこともあるが、その時に持ち出し専用のPCを使っているとのこと。しかし、普段から使っているマシンが利用できれば、発表内容の幅も広がるだろうと語る。

 なお、京都TECHでは開校にあたり、「インテル vPro プラットフォーム」に対応したパナソニック「レッツノート FV」を導入しているが、将来的にマシンの持ち出しが可能になれば、「校外で授業をする時などのベストパートナーになる」(藤田教務部長)と期待しているようだ。

 実はお三方とも、もともとレッツノートユーザーだったそうで、その軽さや堅牢性には高い信頼を持っていると言う。

学校長の細谷僚一氏。以前の教育現場でもレッツノートを使用していたのだという

 細谷学校長は前職でもレッツノートを使っていたそうで「いろいろな学校に訪問することをしていましたが、とにかく軽くて堅牢なので持ち運びには最適なマシンだと思います。バッテリーが外せるというのもいまでは貴重です。それともうひとつ、VGAのような旧来のポートが用意されているのも助かりますね。学校によっては古いプロジェクターを使っているところも少なくないですから」と太鼓判。さらにマシンスペックについても「CGやeSportsなどの授業で使うことも考えると、基本性能に優れていることも重要なポイントです」と評価する。

京都TECHが導入したのはインテル vPro プロセッサーを搭載したパナソニックの「レッツノート FV」
脱着式のバッテリーなど、現場の声が反映されたモデルといえる
今となってはレガシーとも言うべきVGAのコネクターを標準装備
一方でHDMIやUSB Type-Cといった現在のスタンダードなインターフェイスも持つ

最新ツールこそ、学生に触れてほしい!ライブ画面を「投稿」する「インテル Unite ソリューション」の活用アイデアが続々と………

 「インテル vPro プラットフォーム」などの新たなソリューションの導入は、細谷学校長によると学校運営の効率化だけを求めたものではないという。そこには学生たちが新たなテクノロジーを知り、利用できるツールを増やしていくことで、「新たな選択肢を与えたい」という意図もあるようだ。

 このインタビューが行われた日、京都TECHでは、インテル株式会社の教育・スマートシティ事業推進マネージャー 遠藤未来氏とビジネスクライアント・テクニカル・セールス・スペシャリストの佐近清志氏が講師となって、「インテル Unite ソリューション」を学生に開放するためのレクチャーが行われていた。

インテル Unite ソリューションの使い方を学生に説明。単に学校や教師だけでなく、学生にも実際に触れてもらおうという同校の取り組みの一環だ
インテル株式会社 教育・スマートシティ事業推進マネージャー 遠藤未来氏
インテル株式会社 ビジネスクライアント・テクニカル・セールス・スペシャリスト 佐近清志氏

 このソリューションは、対応端末を接続したディスプレイに、PCやタブレットなどの画面をワイヤレスで投影するというもの。1つのディスプレイには最大4台の画面を並べて表示でき、WindowsやiPhone、AndroidなどOSを問わずに利用できる。

 仕組みとして面白いのは、あらかじめ許諾してある端末であれば「僕の画面を見て!」と、投稿のようなノリで画面を投影できることと、画面に手書き文字などで注記を入れることができること。公開されたSDKを利用してデベロッパーがさまざまなプラグインを公開しており、例えばZoomのバーチャルカメラとして、ディスプレイに投影された映像をビデオ会議に流すことなども可能だ。

藤田教務部長が学生に見せているのがインテル Unite ソリューションが使えるミニPC。このサイズのPCでも利用できるので、イベント会場などに持ち込んでの使い方も考えられるという
実際に学生達が自分のスマホの画面などを表示させてみる。最大4画面まで同時に表示可能
同じLANの中であればPINコードだけで画面共有することができる
自分の画面を表示するだけでなく、ほかの人の画面に手書きで入力することも可能

学生が活用案をディスカッション、学園祭での活用も……?

 会場では「学生たちが自分のスマホなどにクライアントアプリを導入、教室の前に設置された大型ディスプレイに対し、思い思いの画面を投影する」というテストが行われた後、学生同士でディスカッション、「ソリューションの活用法」についてのプレゼンテーションが行われた。

 学生がこのシステムを使ったのは、当日が初めてだったそうだが、プレゼンテーションされた内容は興味深いものが多数。「学園祭や日常の授業で使ってみたい」(藤田教務部長)というものも多かった。そのうちのいくつかをここで紹介しよう。

【学生によるプレゼンテーション】
学生達が自ら考えたアイデアを発表

「1つのCG作品を作るにあたり、モデリングやテクスチャなどを分業している時に、画面で作業状況を共有するなど意見のすり合わせに利用したい」

(スーパーCG映像クリエイター専攻)

「文化祭の時に各教室の様子をエントランスの大型ディスプレイに投影すれば、どこで何の発表をしているか、その混雑具合も分かりやすく伝えられる」

(スーパーゲームクリエイター専攻)

「イラスト制作では講師が学生の席を回りながら授業をしているが、すべての学生の作品に目が行き届かないことがある。制作中の作品を画面で共有できれば、授業がスムーズになるし、書き込みによってより深い指導も可能になる」

(スーパーAIクリエイター専攻)

「授業中に利用すれば、講師への質問がスムーズにできそう。PCに何かのトラブルがあった時にメンテナンスの人と画面が共有できれば、専用の窓口までマシンを持っていかずに、簡単なトラブルなら解決できるはず」

(スーパーゲームクリエイター専攻)

「サッカーなどでは監督がホワイトボードなどを使って戦術を説明しているが、画面を共有して書き込みが行えれば、選手側のアイデアも監督にビジュアルで伝えられるようになる。その様子を海外の著名な監督などが俯瞰で観れば、監督や選手にアドバイスできるようになるのでは」

(データサイエンティスト専攻)

「学校の授業ではWebサイトを作ることもあるが、3つの画面にJavaScriptやCSSといった言語ごとに制作中の画面を、残り1つにサイトの完成形を表示させたら、授業がやりやすくなりそう。また、スマホのカメラ映像を投影することもできたので、公共交通機関で急病人が出た時には、それぞれの画面に患者、医師、症例情報などを表示させれば、迅速な応急措置ができるようになる」

(ホワイトハッカー専攻)

疑問点をインテルの佐近氏や遠藤氏、また藤田教務部長などに熱心に聞く学生達

さまざまなテクノロジーに触れることが、“クリエイティブな人材”を生み出す

 学生によるプレゼンの中でも、藤田教務部長が特に注目していたのが、エントランスに設置した大型ディスプレイによる来校者への対応だ。

エントランスを入った吹き抜けに設けられた大型ディスプレイも「インテル Unite ソリューション」に対応。学生達のアイデアを早速検討してみたいと藤田教務部長

 「“学校の魅力を伝えるため”に使うというのは、面白いアイデアだと思います。ただ、学生はどちらかというとコラボレーションツールとしての利用法に魅力を感じているようですね。『画面を見せるから分かってくれ』というのが、彼らのコミュニケーションにおける本音なのかなと思いました」(藤田教務部長)

 なお、来校者への対応にソリューションを利用するというのは、杉内事務局長も前向きに検討してみたいと話している。京都TECHでは10月に学園祭を予定しているが、「小中学生が来校したときに、自分で描いたイラストが大画面に映るというだけでも面白いと思うので、ぜひ試してみたい」とのこと。

「将来的には授業で利用するPCを学生が持ち込むことも想定していますが、マルチOSで利用できる『インテル Unite ソリューション』は、授業でも便利に使えそうです」(杉内事務局長)

 現在、「インテル Unite ソリューション」対応端末は、教室に設置された大型ディスプレイのほか、ラウンジにある大型端末にも配備されている。これらの大型ディスプレイを学生たちが気軽に利用できるようになれば、新たなディスカッションやコラボレーションも生まれてくるだろう。

 EdTechというとオンライン授業やVRの活用などが注目されがちだが、京都TECHでは多様なソリューションを駆使して、学生にもテクノロジーに触れる機会を設けていた。その活用法を学生が自ら考えることが、学校のコンセプトでもある“創造力を仕事に”繋げることになり、クリエイティブな人材を生み出すきっかけになるかもしれない。