一人暮らしのネット環境Q&A

一人暮らしの部屋に「置くだけ/挿すだけのルーター」ってどうなの? 便利な点、注意が必要な点は?

NTTドコモのホームルーター「home 5G HR02

導入の手軽さが魅力! でも通信制限がかかる可能性も

 自宅にネット回線を引くとなると、まず思いつくのは光ファイバーやケーブルテレビの固定回線ですが、これらを使うには、まず工事をして回線を引き込み、ルーターを設置する必要があります。

 ところが、最近は「置くだけ/挿すだけ」を売りにする、「ホームルーター」と呼ばれる製品が登場しています。工事が必要なく、契約してルーターを受け取り、自宅の机の上などに「置く」、そしてコンセントを「挿す」だけで、すぐに自宅でインターネットを利用でき、非常に手軽なことが特徴です。

 しかし、なぜそんなに手軽なのか? 手軽さと引き換えのデメリットなどはないか? と、疑問に思う人もいるでしょう。

 ポイントとしては、回線のパフォーマンス、特に大量に通信するときの通信速度には注意が必要で、通信制限を受けて速度が低下する可能性があります。今回は、ホームルーターの特徴と、導入時の注意点を紹介します。

一人暮らしを始めるにあたって、ネット環境をどうしたらいいのかよく分からない……。そんな人のために、初めての回線選びの考え方やWi-Fi設定の基礎などの知識を、Q&A形式で紹介します。バックナンバーはこちらから

モバイル回線を利用してインターネットに接続

 ホームルーターは、自宅までのインターネット回線に、固定回線ではなくモバイル回線(携帯電話やスマートフォンと同じ回線)を使用していることが特徴で、NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルといった携帯電話会社や、関連するインターネットサービスプロバイダー(ISP)が提供しています。

 モバイル回線を使用するため回線工事は必要なく、ルーターの電源さえ入れればすぐに利用でき、家の中では普通の(固定回線に接続した)Wi-Fiルーターがある場合と同じく、スマートフォンやPCを接続できます。

 なお、前回も触れたように、2023年現在の一般的な固定回線(最大1Gbpsをうたう光回線を想定します)は、一般的なスマートフォンの回線(4G回線を想定します)よりも高速かつ安定した通信が期待できます。しかし、その回線の性能の差が、メールやSNS、動画視聴、Web会議といった一般的な使い方で大きな問題になることは少なく、モバイル回線でも十分です。

大量に通信すると制限を受ける可能性がある

 ホームルーターは、各社が端末(ルーター)と専用の料金プランを提供しています。データ通信量は使い放題が基本で、スマートフォンのように通信量を気にする必要はありません。

 ただし、ホームルーターでは各社とも、ウェブサイトに「大量に通信が行われた場合には通信制限をする」旨の注記をしており、大量の通信を行った場合に、通信速度が遅くなるなどの制限を受ける可能性があることには、注意が必要です。

 では、具体的にはどの程度の通信を行うと、どのような通信制限がかかるのでしょうか? 今回、NTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンク、楽天モバイル、UQ WiMAXの5社に、通信制限の具体的な内容について質問し、各社から2月22日前後に回答を受け取りました。

 それによると、各社とも、具体的な速度制限の基準などについては回答を差し控えるとのことでした。ただ、「隠された基準がある」といったことではなく、あくませも状況を総合的に判断して、制限が必要だと判断した場合は行うことがある、といったニュアンスでした。

 つまり、注記にある通信制限は、大量に利用するユーザーへのペナルティのようなものではなく、周辺の通信状況に応じて設けられるものだと考えておくのがよさそうです。一般的な用途では強く意識しなくてもよさそうですが、周囲にたまたま大量の通信をするユーザーが集まった場合などには、自分がそれほど大量に通信していなくても制限がかかってしまうこともあるかもしれません。

 ちなみに、UQ WiMAXの料金プラン「ギガ放題プラス」では、以前は「直近3日間の通信量が合計15GB以上の場合」と基準を示して通信速度を制限していましたが、2022年2月1日からは「お客さまのご利用状況をふまえ」として、具体的な基準は示さなくなりました。これは、ネットワークに支障を生じない範囲でユーザーが快適に利用できるよう見直し、一律の基準は設けないようにしたとのことで、実質的には制限基準を緩和したそうです。

 もしも、大量のファイルをやり取りするなど、データ通信量が多くなることが見込まれる人がホームルーターを導入したい場合は、ユーザーの集まる掲示板などで、どの程度の利用で通信制限が行われたことがあるか、近隣かつ最近のユーザーのクチコミ情報を調べておくといいでしょう。

UQ WiMAXのギガ放題プラスの説明ページに記載された注意事項

販売・契約の形態はさまざまなので、よく確認してから導入を

 ホームルーターは、以前ならUQ WiMAXやソフトバンクのサービスだけでしたが、2021年8月にNTTドコモ、2023年1月に楽天モバイルが参入し、選択肢が増えて盛り上がりを見せています。

 料金は各社とも月額4000~5000円ほどで、光ファイバーの戸建てのプランよりも少し安い程度です。それに加えて端末(ホームルーター)の購入代金がかかります。ホームルーターの代金は高く設定されている場合や非常に安価に設定されている場合、分割払いや一括払いなど、バラバラです。

 また、申し込みをするお店や代理店によって高額キャッシュバックが受けられる場合もあり、単純に月額料金を見ただけでは、高いのか安いのか判断できない状況となっています。

 申込みの際は、特典を差し引いたトータルでの支払額や、複数年契約をした場合の違約金、機器代を分割払いした場合に解約時に支払う金額などをよく確認した上で申し込むようにしてください。

正田 拓也