イベントレポート

Internet Week 2019

DoT/DoHでDNSのプライバシーは守られるのか? ほか

~今年の「DNS DAY」の話題から

ユーザーの多くはウェブ利用が中心、IPv6の比率も高まる

 NTTコミュニケーションズ株式会社の小坂良太氏による「DNS Update~フルサービスリゾルバ~」では、OCNのフルサービスリゾルバー(キャッシュDNSサーバー)に到達するクエリ[*2]を分析した結果が報告された。ユーザーからのクエリ数は、1日あたり数百億。ここしばらく増加の鈍化傾向が見られたが、直近(2019年10月)では昨年に比べて約1.3倍に増えたということだ(図5)。ただし、小坂氏は、「弊社のエンドユーザーの数が大きく増減する時期であったことから、インターネットの動向とは必ずしも一致しない可能性がある」とも述べている。

図5:ユーザーからのクエリ数

 注目すべきは、7割以上のユーザーは1日あたり1から1000程度のクエリしか送信しておらず、1日10万クエリ以上送信するユーザーは0.2%程度とごく僅かであること(図6)、1日1万クエリ以上を送信するユーザーは全体の10%程度だが、そうした10%のヘビーユーザーのクエリが全体の半数以上を占めること(図7)という点であろう。一部のヘビーユーザーがトラフィックの大きな割合を占めているという傾向は、DNSにおいても見られるということである。

図6:1日あたりに送信するクエリ数別ユーザー割合
図7:総クエリに対するユーザー層ごとのクエリの割合

 また、ユーザーが出すクエリを見ると90%以上がAレコードまたはAAAAレコード[*3]の問い合わせであることから、ユーザーの多くはウェブ中心の利用形態であること、それ以外のクエリではSRVレコード[*4]の増加が目に付くことも示された(SRVレコードは、Microsoftのサービスなどで使われている)。

 IPv6への対応動向については、IPv6通信によるクエリが50%を超えて増加傾向にあること(図8)、AAAAレコードを問い合わせるユーザーが80%を超えた(図9)ことから、「サーバー側がIPv6を使うようになれば、利用者は自然にIPv6を使うようになるのではないか」(小坂氏)とした。

図8:OCN DNSのIPv4/IPv6のトラヒック割合
図9:AAAAクエリ送信ユーザーの割合

 OCNのユーザーはどのサイトを見ているのかの集計については、従来と変わらず「.com」「.jp」「.net」の上位3つが圧倒的に強く、それら3つのTLDで総クエリの90%を占めることも示された(図10)。その後は、「ここ限りで」ということで、台風19号通過時のクエリの状況や、今年発生したDNSに対するDDoS攻撃の分析結果などが示された。

図10:TLDのクエリ数ランキング

[*2]……クエリ(query)とは、DNSにおける問い合わせのこと。

[*3]……クワッドエーと読む。AレコードはIPv4アドレスを指定し、AAAAレコードはIPv6アドレスを指定する。スライドでは、Aレコードの問い合わせが全体の約53%、AAAAレコードの問い合わせが全体の約40%を占めることが示されている

[*4]……そのドメイン名で提供されるサービスの情報を記述するDNSリソースレコード。