イベントレポート

Internet Week 2019

DoT/DoHでDNSのプライバシーは守られるのか? ほか

~今年の「DNS DAY」の話題から

IPアドレス在庫枯渇の定義とは何か

 最後に、興味深いトピックとして、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)の小山祐司氏による「逆引きDNS」の中から、IPアドレスの在庫枯渇の話題を取り上げたい。

 IPv4アドレスの在庫が枯渇したという話題はすでに聞いているという方は多いであろう。アジア太平洋地域のIPアドレスを管理するAPNICでは2011年4月に、欧州地域のIPアドレスを管理するRIPE NCCでは2012年9月に枯渇したというアナウンスを出している(図23)。しかし、つい最近、RIPE NCCが再び「IPv4アドレスの在庫が無くなった」というアナウンスを出したことで、多少の混乱が見られたことも事実である。

図23:IPv4アドレスの在庫状況

 小山氏は、その発表の中で、「枯渇というと空っぽのイメージがありますが、実は、IANA[*7]と各RIR[*8]で決められた一定数を下回ったときを枯渇と定義している(図24)」ことや、先日のRIPE NCCの発表は「最後の在庫および返却されたアドレス含め、全ての在庫が無くなってしまった」ということである(図25)ことを述べている。

図24:各RIRにおける在庫枯渇の定義
図25:RIPE NCCの在庫枯渇

 では、RIPE NCC以外の状況はということで示されたのが、図26のグラフである。アフリカ地域がまだ少し残っているが、来年か再来年には本当の意味で在庫が底をつきそうである。無くなったあとは市場取引でIPv4アドレスを移転することになるのであろうが、現状で1アドレスが20ドルとも言われている中、その投資には意味があるのかは微妙な状況である。

図26:他のRIRの状況

 IPv4に関しては、今後はIETFで議論の対象としないこと、IPv6に機能を追加する際にはIPv4との後方互換性は考慮しないこと、IPv4とIPv6でのアクセスが可能なときにはIPv4の名前解決で遅延を発生させるようなかたちになるような標準化が進んでいる[*9]ことなど、言い方は悪いが「IPv4は劣化していく」ことがはっきりしているからだ。

 今回のDNS DAYでは、ここで記した以外にもDNS関係者に向けたさまざまな話題が提供された。DNS DAYのあとに行われた「日本DNSオペレーターズグループ BoF」においても、さまざまな話題の提供と活発な議論が行われている。毎回書いていることではあるが、技術者向けの情報収集や議論の場として、多くの方にInternet Weekに参加してほしいと思う。

図27:「日本DNSオペレーターズグループ BoF」の会場風景

[*7]……Internet Assigned Numbers Authority。ICANNにおける資源管理、調整機能の名称として使われている。

[*8]……Regional Internet Registry。特定地域内のIPアドレスの割り当て業務を行うレジストリのこと。

[*9]……RFC 8305(Happy Eyeballs Version 2)でAレコードをAAAAレコードよりも先に受信した場合、名前解決を50ms待つことが推奨されている。