イベントレポート

海のアバターの社会実装を進める会

「水中ドローン」と「水中ロボット」は何が違う?世界の水中ドローンメーカーと福島ロボットテストフィールドを紹介

「第2回 海のアバターの社会実装を進める会」シンポジウムレポート

 水中ドローン/水中ロボットに関するイベント「第2回 海のアバターの社会実装を進める会」が12月4日~6日に開催された。2019年11月に伊豆大島で開催された第1回に続く開催となる。

 4日にはシンポジウムが、5日と6日にはROV(Remotely operated vehicle)のデモや操縦体験などの実演が行われた。会場は福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールドで、オフラインおよびオンラインで参加する形式がとられた。

水中ドローンと水中ロボットの違いは? どんなメーカーがある?

 水中ドローン/水中ロボットの定義については、株式会社スペースワン 代表取締役 小林康宏氏の講演「世界の水中ドローンメーカーのご紹介」で語られた。

 小林氏は水中ドローンを、水中を潜水潜行可能な無人機と定義し、水深0~100mまたは300mまで移動できる機体を呼ぶことが多いとした。

 「水中ロボット」と「水中ドローン」の指す範囲は人によって違うが、小林氏の場合は両者を区別している。氏は水中ロボットには自律無人型のAUV(Autonomous Underwater Vehicle)/UUV(Unmanned Undersea Vehicle)や、遠隔操作型のROVを含めた。そして「水中ドローン(Underwater Drone)は、小型化したROVのことを言うのかなと思う。ただし、海外でROVをUnderwater Droneと呼んでいることもある」と自説を語った。

 なお、キーワードのGoogleでの検索数を見ると、「AUV」が約662万件、「ROV」が約364万件、「Underwater Drone」は約282万件だという。「Underwater Droneという言葉が使われてるようになって4~5年だと思うが、すでにこの数になっているので、数年後には抜く可能性がある」と小林氏は述べた。

小林氏による水中ドローンの定義
小林氏が考える水中ロボットと水中ドローン

 水中ドローンの活用事例にはさまざまなものがある。小林氏は自身の関わった事例として、埼玉のダムの点検や、会津若松の消防署と行った水難救助の実験、船底のフジツボの調査、定置網漁場の撮影、漁港の海底調査、わかさぎ釣りの湖底調査を紹介した。

小林氏の関わった水中ドローンの事例

 ここから小林氏はタイトルのとおり、世界の水中ドローンメーカーから、30kg以下の機体を基準に、8社を紹介した。

 Notilo Plusは2016年設立のフランスの企業。自律型ドローンiBubbleで話題になり、より高機能なSeasamが2019年の発売された。

Notilo Plus社

 Nido Roboticsは2012年設立のスペインの企業。Sibu Proは水深300m潜行可能で、小型では5kgぐらいのSibiu Nano Plusもある。

Nido Robotics社

 Blueye Roboticsは2015年設立のノルウェーの企業。ノルウェーは海底油田や洋上風力発電が盛んで、そうしたところで使われているという。

Blueye Robotics社

 DeepTrekkerは2010年設立のカナダの企業で、日本にも代理店がある。プロペラが2つしかないのに重心を変えてプロペラの向きを変えるDTG3や、力強く音響測位やレーザースケーラーなどを備えたREVOLUTION ROVなどの製品がある。

DeepTrekker社

 SEADROEはアメリカのベイエリアの企業で、スタンフォードの研究チームから生まれた。船底や港の点検を目的に開発され、5つのプロペラで自由な方向に移動し、カメラが280度動くのが特徴。

SEADROE社

 SRSはアメリカのシアトルの企業で、国内代理店がある。約30kgと大きめでパワフル。ダイバーをアシストする目的で作られ、沿岸警備隊と契約した。

SRS社

 BOXFISHはニュージーランドの企業。「第2回 海のアバターの社会実装を進める会」で体験できた機種だ。

BOXFISH社

 最後のCHASINGは中国企業。小林氏のスペースワンが国内販売パートナー契約を結んでいる。CHASING M2が2020年に発表され、M2 PROがまもなく発表されるという。小林氏は、空中ドローンと同様に、最近は水中ドローンでも中国の勢いが強いと語った。

CHASING社

会場となった福島ロボットテストフィールドを紹介

 今回の「第2回 海のアバターの社会実装を進める会」の会場となった福島ロボットテストフィールドからは、副所長の秋本修氏が登壇し、施設を紹介した。

 福島ロボットテストフィールドは、福島イノベーション・コースト構想の一環として作られた。福島イノベーション・コースト構想は、東日本大震災および原子力災害からの浜通りの産業回復を目的とした国家プロジェクト。その中の「ロボット・ドローン」分野で福島ロボットテストフィールドが設立された。

福島ロボットテストフィールドと福島イノベーション・コースト構想

 福島ロボットテストフィールドの敷地は東西1000m、南北500m。「開発基盤エリア研究旨」には、22の研究室があり、20の企業や団体が入居している。今回の実演で使われるのは「水中・水上ロボットエリア」で、その中には、豪雨などを想定した実験ができる「水没市街地フィールド」や、「屋内水槽試験棟」などがある。

福島ロボットテストフィールドの敷地
水中・水上ロボットエリア

 経営理念は「ロボットの社会実装により、安全で豊かな社会の実現に貢献する」。今後の方向性としては、制度整備に積極的に関与することが語られた。

 また、ナショナルセンター化に向けて、福島ロボットテストフィールドを含む国内3つの試験研究期間のテストサイトガ相互連携していることも秋本氏は紹介した。

テストサイト間の連携

 秋本氏は水中ロボット/水中ドローンについて、「低価格水中ドローンの活用が海洋ロボット利活用の嚆矢になるんじゃないか。港湾など浅い海域での水中ロボットの活用が進んでいくんじゃないか」と期待を語った。

水中ロボット/水中ドローンへの期待