イベントレポート
CEATEC 2024
石破茂首相がCEATEC 2024にメッセージ「デジタル技術で『高付加価値創出型の経済』へ」
CEATEC 2024オープニングレセプションレポート
2024年10月16日 11:54
CEATEC 2024のオープニングレセプションが、10月14日午後6時30分から、東京・丸の内のパレスホテル東京で開催された。
会場には、IT/エレクトロニクス産業の経営トップをはじめとする経済界関係者のほか、政府関係者、在日大使館関係者など、約700人が参加した。
石破茂首相「デジタル技術で『高付加価値創出型の経済』へ」
石破茂首相がビデオメッセージを寄せ、「CEATEC は、記念すべき25回目の開催を迎え、経済発展と社会課題の解決につながるデジタル技術を用いた最先端の機器やサービスを展示し、とくに、AIに焦点を当て、その中核を担うエキスパートの方々が集結する展示会になったと聞いている。生成AIなどの登場による急激なデジタル化の進化により、世界は新たな時代の変化に直面している。この変化に対応し、日本経済の活性化と成長を加速させるため、政府としても、イノベーションの促進に一層力を入れていく。また、AIをはじめとしたデジタル技術は、『コストカット型の経済』から『高付加価値創出型の経済』へと移行するために欠かせない要素である。地方においては、半導体製造工場などの投資は、すでに大きな経済効果をもたらしており、雇用や所得を生み出す牽引役となっている」などと述べた。
さらに、「賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現するため、物価高の克服、日本経済および地方経済の成長、国民の安心や安全の確保を柱とする経済対策を実行するように、全閣僚に指示した。皆さんの積極的な経営判断を後押しできるように、成長力に資する国内投資促進に取り組む」とも語った。
デジタル庁 平将明大臣「規制改善に“機動的改善チーム”が活躍、デジタル庁に相談してほしい」
また、デジタル庁の平将明大臣が登壇して挨拶。「CEATEC 2024の25周年特別テーマである『Innovation for All』に対して、デジタル庁は100%賛同している」と前置きし、「失われた30年、35年と言われるが、その間、日本人は怠けていたわけでも、テクノロジーの進化が遅かったわけでもない。研究成果や技術、製品を社会実装したい思ったときに、古い規制にぶつかってしまったことが原因である。イノベーションとレギュレーションのステップが合わないと、最初の技術や製品が日本で誕生しても、気がついたら外国の方が上を行っているということが起きてしまう。海外で販売されているメタバースを体験するための最新のゴーグルは、近視などの場合でも眼鏡のレンズを分析して、それを反映するため、眼鏡なしでも利用できる。だが、日本の場合には、眼鏡をつくるためには国家資格が必要で、資格を持った人がいないと商品化できないという規制にぶつかっている。眼鏡は自動車の運転をする際にも使用するため、こうした国家資格が必要なのは理解できるが、メタバースのような安全な場所で利用する際に過剰なレギュレーションになっている。デジタル大臣直下に、機動的改善チームがあり、7000件弱の規制を改善した実績がある。レギュレーションの問題で気がついたことがあれば、デジタル庁に相談してほしい。政府としてもしっかり対応したい」と語った。
また、「日本は、ポテンシャルが高い国である。多様なアナログの価値を最大化するためにデジタルを活用し、豊かな経済を作っていきたい」と述べた。
JEITA 津賀一宏会長 「IT産業の枠を超えて、日本の産業界の総力を発信」
主催者である電子情報技術産業協会(JEITA)の津賀一宏会長(パナソニックホールディングス会長)は、「CEATECは25周年を迎えることができた。エレクトロニクスの総合展であったエレクトロニクスショーと、情報と通信の総合展示会であったCOM JAPANが統合し、2000年にスタートしたCEATECは、歴史と伝統を積み重ねるにとどまらず、変化を生み出し、最先端技術の複合展示会として社会をリードし、進化を続けてきた。現在のCEATECは、経済発展と社会課題の解決を両立する『Society 5.0』の実現を目指し、あらゆる産業や業種の人と技術、情報が集う『デジタルイノベーションの総合展示会』となっている。今年は、展示会のテーマとして『Innovation for All』を掲げ、AIをはじめとする最先端テクノロジーによって実現される社会や暮らしなど、これからの未来像を広く発信している。さらに、CEATECが開催の指針としてきた『共創』の成果として、JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024との併催が実現し、IT産業の枠を超えて、日本の産業界の総力を発信している。幕張メッセの会場に足を運び、持続可能な未来をともに実現するきっかけをつかんでもらいたい」と述べた。
経済産業省 上月良祐副大臣「AI人材の開発や、半導体の生産基盤整備・次世代技術に注力」
経済産業省の上月良祐副大臣は、「新しい経済を支える構造が求められているなかで、デジタルの技術は重要なイノベーションの源泉となる。CEATECとJAPAN MOBILITY SHOWが併催されたことは大きな意味がある。なかでも、これからは生成AIの実装をしっかりやっていく必要があり、それに向けて、技術、産業、人材の基盤を構築するなど、様々なものを乗り越える必要がある。経済産業省では、GENIACによるプロジェクトを推進し、AI人材の開発にも取り組んでいる。半導体についても3年間で4兆円の予算を確保し、生産基盤整備や次世代技術の開発に取り組んでいる。ロボットやAIにもデジタル技術を活用した省力化や生産性向上による人手不足への対応なども大胆に支援をしていく。若い人たちの柔軟な発想にも期待し、それを支えることができるようにイノベーションを後押ししていく」などと語った。また、「CEATEC 2024で得られるアイデアや、出会いが、日本が忘れていたアニマルスピリットを呼び起こすことを期待したい」とも述べた。
総務省 馬場成志副大臣「AIのリスクを抑え、イノベーションを加速」
総務省の馬場成志副大臣は、「総務省では、デジタル田園都市国家インフラ整備計画に基づき、光ファイバー、5G、データセンター、海底ケーブルの整備を、スピード感を持って推進している。また、災害時の緊急対応力の強化、通信および放送インフラの強靭化にも取り組んでいる。一方で、AIは拡大の一途を辿っている。開発と利活用のイノベーションが、日本の産業競争力の強化や社会課題の解決に直結する。2024年8月には、Beyond 5G推進戦略2.0を発表し、低遅延、高信頼、低消費電力の次世代情報通信基盤の確立を目指している。関係省庁や事業者との連携により、日本の強みであるオール光技術をゲームチェンジャーと位置づけ、国内事業者によるBeyond 5Gの本格実証とグローバル市場の獲得を目指していく。また、広島AIプロセスを立ち上げ、高度なAIシステムに関する国際指針や、国際行動規格の策定を主導した。AIの様々なリスクを抑え、安心、安全な環境を確保しつつ、イノベーションを加速する好循環の環境を国際的に確立したい」などと述べた。
日本自動車工業会 片山正則会長「併催を通じた共創を期待」
一方、併催となったJAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024の主催者である日本自動車工業会の片山正則会長は、「私自身、CEATEC 2024のコンファレンスに登壇し、スタートアップ企業とともに、立ち向かうべき社会課題や、産官学や企業間連携の重要性など、未来に向けた思いを共有することができた。自動車産業は100年に一度の大変革期を迎え、様々な課題に、正面から向き合っている。垣根を超えて協力すべきテーマが多い。CEATECに参加している企業は、たくさんのアイデアを持っている。連携を深めることで、社会課題解決の道筋を見つけることができると期待している。JAPAN MOBILITY SHOWは、自動車産業の枠を超え、多くの産業の人たちと手を取り合い、社会課題の解決や新たな価値を創造し、豊かで夢のある未来社会の構築を目指すためのプラットフォームとしての取り組みでもある。事業共創の重要性や可能性について、同じ思いを持つCEATECとの併催は心強いパートナーを得た思いだ。ビジネス共創の新たな息吹を感じることができ、未来に向けて大きく躍進できる手応え感じた。結びつくことができなかった企業同士や、未来の産業を支えるスタートアップ企業とのオープンイノベーションによってもたらされる技術革新の連鎖反応は、望む未来の実現に向けて着実に進展することを意味する。併催を通じて、たくさんの共創が実りあるものになることを期待している」と語った。
日本経済団体連合会 東原敏昭副会長「ブレイクスルーとなるのはイノベーション」
また、日本経済団体連合会の東原敏昭副会長は、「甚大な自然災害が起き、人口減少や少子高齢化、エネルギー問題といった社会課題が発生している。しかも、これらの社会課題は絡み合って複雑化している。たとえば、生成AIは活用するほど、データセンターのエネルギー消費が増える。安定した電力を供給しなくてはならないが、その一方で、2050年にはカーボンニュートラルを実現しなくてはならない。それぞれが最適な回答を出しているだけでは駄目である。いかに全体最適で解決していくかが大切である。ブレイクスルーとなるのはイノベーションである。まさに、CEATEC 2024が掲げているInnovation for Allであり、AI for Allである。現場で議論し、コミュニケーションを密に取り、全体最適を考えていくことがブレイクスルーにつながる」と位置づけた。