イベントレポート
CEATEC 2025
シャープ、CEATEC最大ブースで「働く」「暮らす」をアピール、総務大臣賞の衛星アンテナ、連携する多数のAI家電、エージェントなど
「ひとの願いの、半歩先。」を訴求
2025年10月16日 09:02
単独企業の出展ブースとして、CEATEC 2025で最大規模となったのが、シャープブースだ。
ブース面積は昨年の約1.8倍に拡大。2025年9月に発表した新たなコーポレートスローガン「ひとの願いの、半歩先。」をテーマに、「暮らす」と「働く」の2つの軸から、最新技術や製品を展示しており、「誠意をもって人々の日常を見つめ、創意をもって新たな体験を提案する」という新たなコーポレートスローガンで目指す姿を具体化する展示内容となった。
中央のステージでは、「ひとの願いの、半歩先。」に込めた意味などについて説明。「ひとの願いに寄り添い、創意をもって、ほんの少し先回りし、驚きと喜びをもたらす新たな体験を届ける」というシャープの企業姿勢を強調してみせた。
山や海、被災地でも高品質通信、総務大臣賞受賞「LEO衛星通信ユーザー端末」
最も注目を集めていたのが、CEATEC AWARD 2025で総務大臣賞を受賞した「5G NTN通信対応 LEO衛星通信ユーザー端末」である。
LEO衛星通信は、セルラー通信が困難な場所でも高品質な通信を可能とし、海上や山地、被災地、建設現場などにおける通信手段としても有用性が注目されているものだ。
今回の製品は、シャープが持つスマートフォンの開発で培った通信技術や小型化や軽量化技術を応用。5G NTN通信にも対応したLEO衛星通信ユーザー端末として開発した。
1024個のアンテナを搭載しており、揺れる船上でも安定通信を実現する高精度ビーム追随技術により、上空1000km先の非静止衛星を、リアルタイムで追跡し、通信を可能にする。船舶や自動車のほか、建機やドローンなどにも搭載が可能だ。
現在、国際標準技術としての提案を進めているほか、いくつかのPoCが始まっているという。また、小型軽量化した製品のモックアップも展示。これは2028年度以降に実用化されることになるという。
「働く」エリア:オフィスに商業、物流など
5G NTN通信対応 LEO衛星通信ユーザー端末は、ブースの右側半分を占める「働く」のエリアに展示されており、ここには、オフィス、リテール、ロジスティクス、パブリックといったゾーンにわけて、最新技術を展示した。
物流倉庫を効率化する「スリムスタッカー・ロボットストレージシステム」
倉庫を想定したエリアでは、スリムスタッカー・ロボットストレージシステムを実際に稼働させて展示。
本体の幅が700mmで、人の通れる通路を、ロボットが走行できるようにしているだけでなく、収納分を分離して、これを棚のようにして、作業者の前に移動して設置。作業生産性を向上させることが可能になるという。既存の棚や箱などの設備を活用することで、人の作業と並行させながら、倉庫の稼働を止めずに、段階的に導入できるメリットもあるとしている。
駅や店舗での人流を制御、プロジェクションヘッド「Omject」
小型プロジェクションヘッドの「Omject」は、あらゆるモノや場所に、知識情報を投影して、自然な行動支援や人流制御を行うことができるソリューションだ。展示ブースでは、地下鉄の駅を想定したデモストレーションを実施。「Omject」が到着した電車に様々な表示を行い、乗降客に最適な行動を促すという。
「Omject」は小型化するために、光源分離型を採用。本体の構造をシンプルにし、耐久性を高めているという。
また、参考展示した視聴効果測定システムは、カメラ映像をもとに、AIが年代や性別などの属性や、人数などを判定。これらの情報をもとにして、行動指示などをサイネージに表示したり、「Omject」と連動した表示を行ったりすることで、場面に応じた最適な情報を届けることができる。
下水管路の検査を効率化する支援システム「INSSEP」
管路検査支援システムの「INSSEP」は、下水管などの管路検査の効率向上を支援するシステムで、直径25cmの管路内を移動するロボットが撮影した動画データをもとに、管路内の割れ目や傷などを発見し、位置情報と組み合わせて管理。画像鮮明化技術によって見つけやすくするほか、目視による検査や結果入力、報告書作成を支援し、業務工数を半減できるという。無線で移動するロボットとの組み合わせにより、1日1km程度の管路検査ができるという。「INSSEP」の廉価版である「IIAP」の紹介も行っていた。
「暮らす」エリア:家電やテレビなどでのAI活用を大量に出展
ブースの左半分を占める「暮らす」のエリアでも、シャープが開発中の最新技術や製品を相次いで展示してみせた。
ヘルシオと対話できる「クックトーク」
「クックトーク」は、ヘルシオに対応した音声対話型の調理サポートサービスで、生成AIによって、自然な対話を実現することができる。キャラクターの「しおりさん」が、ヘルシオが持つ約1400種類のメニューをもとに、献立を提案。音声対話も可能であり、調理で手が汚れているときにもスムーズな会話が可能だ。しおりさんの名前は、ヘルシオの「シオ」から名付けているという。
「家電メーカーとして、調理をするところにだけフォーカスするのではなく、献立を決めたり、下ごしらえをしたり、買い物をサポートしたりといったところにも焦点をあて、それらをサポートするサービスとして発展させたい。ヘルシオの調理の強みをさらに生かすことができる」としている。
65型テレビに等身大のAIキャラが登場、楽しく会話も
参考展示したのが、「生成AI×TV」である。シャープ独自のエッジAI技術であるCE-LLMを利用。テレビ画面上に表示されるキャラクターと自由に対話ができる生成AIトークサービスをデモしてみせた。65型のテレビに、キャラクターを表示すれば、等身大サイズとなり、キャラクターは、次の会話が続くような受け答えを行う。さらに対話を繰り返すことにより、利用者のことをより理解してくれるという。
AIoT家電が連携、暮らしをサポートする「マイAIエージェント」
初公開となったのが「暮らし、拡がる、SHARPのAI」の参考展示だ。マイAIエージェントが、シャープの様々なAIoT家電を結び、家族の暮らしに寄り添って、いつでも便利に家電を使いこなすことができるという。
朝起きて、マイAIエージェントに、「今日はちょっと蒸し暑いね」と話しかけると、対話をしながら、ユーザーの好みの室温に、エアコンを設定して稼働させるとともに、天気予報や家族の予定を通知する。スケジュールをもとに、「今日はママが出社の日です」と知らせてくれたことから、パパは、「今日は僕が家事をやってみようかな」と提案すると、マイAIエージェントが、家事をサポートし、天気にあわせて先に洗濯をすることを提案する。また、ママがいつも行っているタオルをフワフワにする洗濯方法を教えてくれたり、ご飯の準備時間が近いことを知らせて、調理のサポートをしてくれたりする。
シャープのAIoT家電は、調理家電やテレビなど、様々な家電が対話できるようにしていることから、マイAIエージェントを稼働させるハブとなる家電の選択肢も広いといえる。
現時点では、A2A(Agent to Agent)を活用したサービスコンセプトと位置づけており、2026年度以降のサービス提供が見込まれる。
カメラで活動を認識、リアルタイムでサポートするウェアラブルデバイス「AI SMART LINK」
また、これまでにも参考展示していた「AI SMART LINK」の進化版も展示した。生成AIとの自然なコミュニケーションを実現するウェアラブルデバイスであり、本体にはカメラを搭載。日常生活の様子や、オフィスでの会議の様子を撮影しながら、それらの活動を、CE-LLMが認識し、リアルタイムにサポートしてくれる。「新たなユーザーインターフェースとして、様々な場面での利用を提案していくことになる」とした。
高齢者見守りから防災まで、AIoTを活用した社会課題ソリューション
AIoTとイエナカデータ連携基盤を活用した社会課題ソリューションでは、石川県能美市でAIoT家電を通じて高齢者見守りサービスの実証実験を行った実績をベースに、新たな防災現場での活用についてデモストレーションを行った。従来は、AIoTに対応した空気清浄機が、災害によって停電した情報を収集し、災害対策に活用する提案だったが、今回の展示では、空気清浄機に搭載しているスピーカーを利用して、自治体から発信される避難情報や防災情報を、音声で通知することができる。
日用品の使用量を自動計測、ヘルスケアにも応用する「計量IoTヘルスケアサービス」
ユニークな参考展示のひとつが、「計量IoTヘルスケアサービス」だ。
日用消費財の使用タイミングや使用量を、自動で計測、記録ができるIoTデバイスで、まずは、家庭内に設置した利用を想定している。重量を計測して、いつ、どれぐらいを使用したかがわかる。アルコール類だけでなく、洗剤の使用量なども把握でき、メーカーは使用データをもとにした利用分析を行ったり、残りの量をもとに追加購入を提案したり、薬の飲み忘れの警告などへの応用が可能だ。もちろん、アルコールの飲みすぎの場合も注意してくれる。計測したデータは、Bluetoothによりスマホと連動。そこからクラウドで収集し、分析する。B2B2Cとしての提案を進める考えだ。
顔をかざすだけで健康管理、非接触ヘルスケア「スマートミラー」
非接触ヘルスケアセンシング「スマートミラー」は、シャープが昨年秋に開催したSHARP TECH-DAYでも注目を集めていた展示内容だ。
顔をかざすだけで、個人認証と、3つのバイタルデータを一括測定することが可能で、AIによる健康アドバイスを提供し、健やかな暮らしをサポートする。スマートミラーが、利用者に話しかけて、朝の洗面エリアでの時間帯を楽しくするほか、5秒間停止するだけで計測できるため、ストレスなく、バイタル測定が可能になる。データはクラウドに蓄積される。洗面エリアは毎朝、必ず立ち寄るエリアであり、遠隔地に住む高齢者を見守るといった活用も可能だ。いつもと違う状況が発生すれば、関係者に通知が届くサービスも想定している。
太陽光発電と家電をAIで最適制御、カーボンニュートラルに貢献する「Eeeコネクト」
「Eeeコネクト」は、太陽光発電システムを、蓄電池、EV、家電などの様々な機器と連携させ、AIによる最適制御を通じた利用ができる業界唯一のソリューションだ。太陽光で発電した電気を、蓄電池に充電し、AIが制御しながら、冷蔵庫や洗濯機、エアコンも太陽光発電の電気で利用できる。すでに導入実績があり、住宅メーカーや工務店などを通じて販売が進んでいるという。エアコンは6社581機種、給湯器は8社599機種など、他社製品とも連動。ただし、シャープ製品の場合は、より細かい制御ができる。同社では、家庭におけるカーボンニュートラル達成に貢献するサービスと位置づけている。
予約受付中の対話AIキャラクター「ポケとも」も展示
また、ブース前面には、2025年8月から予約を開始している対話AIキャラクター「ポケとも」を展示。初めて見る来場者から高い関心を集めていた。ポケットサイズのAIロボットで、スマホのアプリでも会話ができる。
生成AIを使った自由な会話に加え、カメラで認識したもの、訪れた場所などを記憶し、一人ひとりに寄り添った会話を実現するのが特徴だ。