イベントレポート
CEATEC 2025
NECは「すべての変革に +AI」、暗闇での顔認識や安全運転支援、「抹茶」のマーケティング成功例も
VRトレーニングでの人材育成も出展
2025年10月16日 16:24
CEATEC 2025のNECブースは、「すべての変革に +AI」をテーマに、「モビリティ」、「マーケティング」、「顧客体験」、「人材育成」の4つのテーマで、NECのAI技術への取り組みや、同社が価値創造モデルと位置づける「BluStellar(ブルーステラ)」による具体的なソリューションを展示。社会や企業に提供する価値を体感できる展示内容にしている。
映像認識AIと生成AIが事故リスクを予測、安全運転を支援法令遵守もアドバイス
1つめの「モビリティ」では、映像認識AIと生成AIを組み合わせた安全なモビリティ社会の実現を提案してみせた。
展示会場には、 NECが開発した映像認識AIと、大規模言語モデルを組み合わせたドライブシミュレーターを用意。運転データからドライバーの運転と走行状況を分析して、事故発生リスクなどを予測。運転方法の改善を提案する。ドライバーの運転の習慣変容を促し、事故率の削減や燃費の改善につなげるという。
生成AIには法令に関する知識を学習させており、運転操作の評価だけでなく、法令の観点からもアドバイスする。
バス会社やタクシー会社のドライバーを対象にした教育のほか、保険会社が使用して申込者を評価するといった用途を想定している。今後1年で実用化を目指す考えだ。
AIがマーケティング施策を立案、「matcha LOVE 抹茶」の事例で効果を証明
2つめの「マーケティング」では、購買傾向分析データと生成AIを組み合わせたマーケティング施策の立案による具体的な成功例を示してみせた。
NECでは、生成AIと消費者購買データを活用したマーケティング施策立案ソリューション「BestMove」を提供。マーケッターがナレッジを共有しながら、顧客分析、施策立案、効果予測、クリエイティブ生成を行うことができるクラウドサービスだ。NECの生成AIをはじめとする独自AI技術と、クレジットカードやID-POSなどの購買傾向分析データを組み合わせることで、従来は困難だった特定の商品やサービスに興味を示す顧客を高度に抽出し、それらに対して高い反応率を示すことが推定される施策を瞬時に立案。「優秀な広告代理店の専門家が、マーケティング部門に一人ついているような状況が作れる」という。
これまで1~3カ月かかっていたクリエイティブの制作期間を1~3週間に短縮。案件あたりの月額コスト削減効果は95%減となり、月間のアイデア発想件数は18倍、案件あたりの売上げ効果は2.1倍という大きな成果が生まれている。
最も成功した事例として紹介していたのが伊藤園の「matcha LOVE 抹茶」である。
同商品は、キャップ部分に封入した抹茶を、開封時に中へ落として水と混ぜることで、いつでもどこでも手軽に作りたての抹茶を楽しめる体験型抹茶飲料だ。
伊藤園では、一度、製品を訴求する広告動画を撮影していたが、撮影場所や出演者は同じまま、費用を抑えて新動画を制作することを条件にBestMoveを活用。BestMoveは、同商品を好む顧客層の特徴や、潜在ニーズなどのインサイトを抽出するとともに、伊藤園が実現したい施策の方向性などをBestMoveにインプット。その結果、BestMoveが、「お点前、シャカシャカでございます」といった人間では思いつきにくいキャッチコピーを提案したり、インバウンド向けに多言語対応のアイデアを提示したりといったことを行い、さらに、出演者に似せた画像をAIで生成して、表情やポージングのアドバイスを行って、それを反映した動画の絵コンテも作成したという。
完成した広告動画を「X」で公開したところ、24時間の閲覧数が前回比125%増となる3万1000回に達し、商品の販売拡大に貢献したという。伊藤園では、今後、「お~いお茶」ブランドや、様々なカテゴリー商品のマーケティング活動にもBestMoveを活用していくという。
そのほかにも、ロート製薬など、多くの企業でBestMoveを導入した実績があがっているという。
逆光や暗闇でも顔認証可能、AIカメラで顧客体験を向上
3つめの「顧客体験」では、逆光にも強いAIカメラを活用した顔認証のデモンストレーションを行った。
ソニーセミコンダクタソリューションズが開発した手のひらサイズの最先端AIカメラに、米国国立標準技術研究所 (NIST) による顔認証ベンチマークテストで世界No.1の評価を得たNECの顔認証を搭載。逆光や斜光、低照度などの光環境変化にも適応し、工場や倉庫、テーマパーク、スタジアムといった多様なシーンでの顔認証の適用が可能になるという。これにより、顔認証技術の導入にかかるコストや運用コストの軽減、セキュリティの強化を実現できるという。NEC社内での試験導入を図っているところだ。
VRトレーニングで人材育成を加速、半導体工場やエアコン点検で活用
4つめの「人材育成」においては、VRを活用したバーチャルトレーニングにより、人材育成の革新を進めていることを紹介した。
具体的には、NECファシリティーズが、半導体工場の設備操作訓練を、VRを活用して実施している事例を示していた。同社では、研修・研究開発センター「FM-Base」で実施している研修カリキュラムをVRコンテンツ化。「国内170拠点の施設管理の受託事業を行っており、FM-Baseのバーチャル化によって、人材の早期育成や教育DXを推進することができる。いつでも、どこでも受講が可能になるため、復習や同時受講などにより、トレーニング設備の効率化や習熟度の向上につなげている」という。
ダイキン工業では、業務用エアコンの室内機、室外機の点検作業の教育に使用しているという。
また、従来は企業内に閉じていた社内技能資格を、分散型デジタル資格証明書を発行して個人に付与することで、企業や業界を横断した技能証明が可能となり、人材不足や協業促進にも対応できるとしている。