Silverlight 3で次世代のユーザーエクスペリエンス実現


 マイクロソフトは16日、東京・六本木の東京ミッドタウンホールでイベント「ReMIX Tokyo 09」を開催した。SilverlightやExpressionといった同社製品・技術の最新情報や、日本での事例、ソリューションなどを紹介した。

 午前のキーノートセッションでは、米Microsoftのスコット・ガスリー氏(デベロッパープラットフォームコーポレートバイスプレジデント)や、マイクロソフト日本法人の春日井良隆氏(デベロッパー&プラットフォーム統括本部デベロッパービジネス本部マネージャー)、パートナー企業の担当者などが登壇した。

ユーザーエクスペリエンスには常に改善の余地あり

米Microsoftのスコット・ガスリー氏
ツール・ド・フランスをSilverlightで中継

 キーノートセッションは、開発者やWebデザイナーなど約800人が聴講し、立ち見が出るほどだった。冒頭はビデオ上映からスタート。ガスリー氏が、本番直前に慌ただしく準備している様子をコミカルに描き、それが終わると同時にガスリー氏が登場するという演出だった。

 ガスリー氏は、「ユーザーエクスペリエンスは我々全員が考えるべきテーマ。常に改善の余地が残されている。今回は、Web上でどうやってユーザーエクスペリエンスを実現できるか、どうやって開発者とデザイナーが共同作業を実現していくのかを話したい」と挨拶した。

 ユーザーエクスペリエンスを実現するためのUIは、「機能とデザインの組み合わせが大事になる」としたが、「そのためには、大勢の人や時間が必要で、複雑な作業になる」と説明。「今回のイベントでは、次世代のユーザーエクスペリエンスを実現するためのテクニックや、マイクロソフトの製品を紹介する」と述べた。

 ガスリー氏は、「次世代のユーザーエクスペリエンスを実現するために、Silverlightを活用してほしい」と話し、マルチプラットフォームやリッチコンテンツの展開、開発には.NET Frameworkのスキルが生かせるなどの特徴を紹介した。Silverlightの最新事例としては、マイケル・ジャクソン追悼式やツール・ド・フランス、ウインブルドンの中継を挙げた。

 また、アプリケーション開発ツール「Silverlight 3 SDK 日本語版」「Visual Studio 2008 Service Pack 1用 Silverlight 3 Tool 日本語版」を16日に公開したと発表。マイクロソフトのサイトから無償ダウンロードできる。加えて、すでに「Expression Blend 3+SketchFlow RC(英語版)」を提供していることや、「Expression Studio 3 日本語版」を9月に発売することを明らかにした。

ライブ配信動画の巻き戻しや追っかけ再生が可能

マイクロソフトの春日井良隆氏

 続いて、春日井氏が「Silverlight 3」の新機能を紹介。まず、「Media」「RIA」とったシナリオを中心に、デモを交えて説明した。

 Mediaについては、H.264形式の動画、AAC形式の音声のサポートをはじめ、オリジナルのメディアファイルを再生できるRawビットストリームAPIの提供や、再生支援機能のGPUアクセラレーションなどの新機能を挙げた。

 また、動画配信においては、Internet Information Server(IIS)7.0 Media Servicesの追加コンポーネントとして「Smooth Streaming」「Live Smooth Streaming」を紹介し、今回のイベントをライブ中継している画面でデモを行った。

 「Smooth Streaming」では、帯域やCPUの負荷状況に応じて、品質をリアルタイムで調整できる。「Live Smooth Streaming」では、キャッシュ可能なHTTP通信によるライブ中継が行える。ライブ配信の動画に対し、巻き戻しや追っかけ再生が可能となる。

 RIAについては、画面の切り替え演出などに利用できる「疑似3D」や、Silverligh上で赤目補正などの画像レタッチサービスを構築できる「ビットマップ&ピクセルAPI」の提供、ユーザーがリアルタイムに画面効果をコントロールできる「シェーダーエフェクト」などを紹介した。

 さらに、ローカルネットワークにあるSilverlightアプリケーション同士で通信できる機能や、ブラウザを開かずにSilverlightを動作させ、デスクトップアプリケーションのように利用できる機能などが加わった。「ブラウザのSand Boxに保護された状態でアプリケーションを動作できるため、セキュリティ上も堅牢」という。

疑似3Dでは、動画再生画面の回転なども可能Smooth Streamingではクライアントとサーバーの情報交換にXAMLを利用

より直感的に操作可能となった開発ツール

 最後に、春日井氏が開発ツール「Expression Blend 3」を紹介した。Webアプリケーションを構築する際のプロトタイピングを簡略化する新機能「SketchFlow」をデモ。マウス操作で直感的にモックを作成できるところや、画面構成をWord形式で書き出すところまでを説明した。

 さらに、Webサイト構築ツール「Expression Web 3」を紹介。Web標準を重視しているとのことで、ブラウザ表示をシュミレーションする「スーパープレビュー」機能を説明した。2種類のブラウザを選び、並べて表示して確認できる。表示が正しくないところは、ソース画面を開いて修正可能だ。

 キーノートセッションでは、このほか、デザインディレクターの川崎和夫氏(大阪大学大学院工学研究科教授)が登壇し、「コンピュータが消える日」と題して、PCやWebの未来像について学術的な解説を行った。川崎氏は、さまざまな文献や、事例を挙げて説明。PCの操作が直感的な方法に変わることで、「Webも大きく進化するだろう」とした。

SketchFlowで作成したマップデザインディレクターの川崎和夫氏

 


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(野津 誠)

2009/7/16 21:15