iNTERNET magazine Reboot

第三木曜コラム #1

ITジャイアント“GAFA”の減速、その真の原因とは?

 このところ、ITジャイアントプラットフォーマーであるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の株価に大きな逆風が吹いている。

時価総額が34兆円も下落

 そのきっかけは、フェイスブックの個人情報大量流出だと言われている。ザッカーバーグCEOの、米国会での長時間に及ぶ公聴会の様子をテレビで見た人は多いだろう。それに加え、トランプ大統領がアマゾンに対し「小売業者を潰している」、「税逃れだ」と攻撃し始めたこともその原因の1つとされている。それらに引きずられるように、グーグル、アップルも減速したのだ。アップル、アマゾンの業績は過去最高益だというのにだ。何と、Facebookの情報流出発覚後の10営業日で、GAFA4社の合計時価総額が約34兆円も失われたとのことである(日経新聞)。

 ちなみに、電気自動車最大手のテスラの株価も大幅に下落した。こちらは、マスクCEOの「テスラは破綻しました」というエイプリールフール発言がきっかけと言われているが、背景に、テスラの自動運転車が死亡事故を起こしたことが影響していることは想像に難くない。

IT史上ではじめての出来事

 これらのITプラットフォーマーが揃って逆風に合うのは、ITが誕生して以来はじめてのことではないだろうか。かつて1998年ごろ、マイクロソフトの全盛期にその独占状態を懸念し、米国司法省が独占的地位の悪用として提訴した歴史はある。しかし、その影響は他社には及ばなかったし、この問題はその後、和解になってもいる(2002年)。

 今回は、マイクロソフトの時に比べ、そのスケールや生活者に与えている影響度合いが桁違いに大きいと思う。つまり、経済、プライバシー、生命などの人間生活にとって極めて重要でデリケートな領域にITプラットフォーマーの影響が及んでいるのだ。そのあまりに大きく強くなり過ぎたITプラットフォーマーに対し、社会全体の警戒感が出てきていると見ることができるだろう。

 たしかに一極集中しすぎている。たとえば、グーグルは検索エンジンで独占状態にあるし、フェイスブックとグーグルで世界のネット広告売上の7割を持っていると言われている。スマホの利益のほとんどはアップルが持っているし、アマゾンのECの驚異的進展については言うに及ばないほどだ。

 これらのITプラットフォーマーは、業種が検索、SNS、スマホ、ECと違えども、それぞれの分野で膨大な数の個人情報(ビッグデータ)を独占、管理していることが共通している。個人情報のデジタルデータは「21世紀の石油」とも言われ、お金のなる木だ。それを私企業に独占されたら、個人のプライバシー問題のみならず、産業界も政治・行政もこれ以上放っておくことはできないところまで来たということだろう。

集中から分散へ

 話は飛ぶが、NHKスペシャル「人体 神秘の巨大ネットワーク」をご覧になっただろうか。人間の体の中では、臓器同士がネットワーク化されており、メッセージ物質により常時相互にコミュニケーションが行われることで、我々は生きているとのことだった。これまでは脳が中心で、各臓器はそれに従っているかのように教わってきたが、そこには多様で精密な驚きの世界があったわけだ。

 しかしそう言われてみると、そのほうが自然の摂理にかなっているように思えてくる。脳がすべての司令塔で、心臓の鼓動や胃腸の消化機能、脂肪や筋肉のバランスを逐一指示するのは無理がありそうだし、効率が悪そうだ。さらに視野を広げて考えれば、地球の生態系にも司令塔があるわけではないし、宇宙にも中心があるとは思われていない。高度に進化した生命体や自然は、ある単位での集中はあるものの、全体としては極端な一極集中はしておらず、多様に分散しコミュニケーションしている。インターネットでも同じことが言えるのではないだろうか。

 GAFAに一極集中しているようでは、まだまだ進化が足りないということだろう。技術的側面で言えば、これまで主流のクライアントサーバーモデルだと、構造的にどうしても一極集中する傾向にある。より分散を求めるなら、ピアツーピア(P2P)型の技術が必要になるだろう。いま、P2P型であるブロックチェーンが台頭してきているのは偶然ではないと思う。

 もとよりインターネットは分散型だ。中心がなくエンドツーエンドで動くようになっている。いまのGAFAへの集中は、インターネットの進化の過程での出来事のような気がする。分散型への移行はP2Pの稼働効率の悪さなど技術的な課題もあり、すぐに切り替わるわけではないだろう。また、世界中のこれだけのユーザーが毎日便利に使っているサービスが消えて無くなるわけもないだろう。しかし、今回のGAFAの株価減速現象は、次の時代に入るというシグナルだと思う。

「iNTERNET magazine Reboot」コーナーについて

「iNTERNET magazine Reboot」は、ネットニュースの分析や独自取材を通して、デジタルテクノロジーによるビジネス変化を捉えるインプレスR&D編集のコーナーです。産業・教育・地域など、あらゆる社会の現場に、Reboot(再始動)を起こす視点を提供します。

井芹 昌信(いせり まさのぶ)

株式会社インプレスR&D 代表取締役社長。株式会社インプレスホールディングス主幹。1994年創刊のインターネット情報誌『iNTERNET magazine』や1996年創刊の電子メール新聞『INTERNET Watch』の初代編集長を務める。