インタビュー
月1万円未満!の定額で「ずっと最新PC」+「ずっと最新Office」が導入できる、PCのサブスクリプションとは?
日本マイクロソフトと横河レンタ・リースに聞く「サービスとして提供されるPC」時代
2020年4月28日 07:15
企業におけるクライアントPCの導入・利用形態として、今後広まっていくと考えられているのが「Device as a Service」だ。
「Device as a Service」というと、「大企業向けのサービスだから、そうした企業の管理部門が理解すればいいんでしょ?」と思ってしまう読者も多そうだが、実は意外とそうではない。
対象とする法人は大小関係なく、さらに言うなら「特に中小企業やスタートアップに便利なようにサービスを設計した」というサービスもあるという。
そこで今回は、そうしたサービスを展開する横河レンタ・リースと、その基盤となる「Microsoft 365」を提供する日本マイクロソフトにお話をお伺いした。
なお、横河レンタ・リースが10月から本格提供をめざしているDevice as a Serviceは、同社の「Cotoka Platform」を基盤としたサービスで、上記のように中小企業も対象としたもの。在宅勤務も想定されているという。
たとえば、「個々の利用者が“利用したいPC”を(会社の契約する範囲内で)選び、利用者が指定する住所に直送。初回PC起動時の自動セットアップで、必要なセットアップが完了する」「万一故障などが起きた場合も、横河レンタ・リースのサポートに連絡してもらい、サポート窓口から代わりの機材を直送する」といったことが可能という。
そして、特筆すべきはそのサービス価格。上記のようなサービスを含む「PCそのもの」とMicrosoft 365、つまり最新Officeの契約込み月定額で利用できるという。しかも月額は「1万円を切った価格」が想定されている。
昨今の新型コロナ禍で、急速なIT化……特にテレワークや在宅勤務の整備が求められている中小企業も多いと思うが、実はそういった場合にもとても有効なサービスと言えそうだ。
お話をお伺いしたのは、横河レンタ・リースの事業統括本部 ソフトウェア&サービス事業部長の松尾太輔氏と、日本マイクロソフト コンシューマー&デバイス事業本部 マーケティング統括本部 デバイスマーケティング シニアマーケティングスペシャリスト 郡司掛怜美氏だ。
生産性を高めるための「PCのサブスクリプション」
――まず、最初に、日本マイクロソフトが考える「PCがサブスクリプションで提供されるメリット」について、お伺いさせてください。
[郡司掛氏]PCというのは、これまで「購入するもの」でしたが、サブスクリプションのかたちで利用することで、IT管理者の負担を軽減しつつ、新しい働き方、使い方に対応できるようになります。経営の視点で見ると、資産としてPCを持つ必要がなくなりますし、結果として早いサイクルでPCをリプレースすることもできるようになります。
これらの総合的な結果として、企業全体の生産性を高められることがメリットと言えるでしょう。
日本マイクロソフトが提供するMicrosoft 365は、従来「Office 365」と呼ばれていた最新Officeのアプリ・サービスに加え、Windows 10 Business/Enterpriseのライセンスと、高度なセキュリティ機能をまとめたものです。
様々なパートナー様が、Microsoft 365を元にしたサブスクリプションサービスをご提供いただいていますので、各企業さまのニーズにあったサブスクリプションサービスをご利用いただくことで、最適なかたちで生産性を高めていけると考えています。
今回の同席させていただいている、横河レンタ・リース様のサービスでは、管理者の負担を大幅に軽減できるだけでなく、ユーザー体験にフォーカスすることで実際にPCを使う従業員の方々にもベネフィットを提供していることが大きな魅力だと感じています。
「売ったら終わり」ではなく、「運用された状態のデバイス」をサービスとして提供する
――まず横河レンタ・リースでは「Device as a Service」をどのように考えているのでしょうか。
[松尾氏]これまでのPC管理は、新しい人が入社するとPCを確保してセットアップした状態で渡してあげるというものでした。さらに管理をする人が社内にいて、セキュリティも社内でしっかり守っていれば問題がなかったという世界です。ただセキュリティ対策が複雑化したことで、PC管理が難しくなっていると感じています。
従来、セキュリティ対策はネットワーク管理者が対応すべきもので、PC管理者はせいぜいウイルス対策ソフトを導入すればよかった。しかし現在はクライアントPCを監視し、セキュリティ分析サービスを組み合わせて脅威を検知するEDR(Endpoint Detection and Response)が広まるなど、PC管理は複雑化しているのが現状です。
このセキュリティを含め、現在のクライアントPCやその管理に必要なソリューションをワンストップで提供しているのが「Microsoft 365」ですが、そこに含まれる機能やサービスを企業の管理者がすべて理解するのは容易ではありません。
ただ、難しいと感じるのは、いわゆる従来のモノ売りの考え方を引きずっているからです。モノを売るのではなく、お客さまの体験に沿った形でサービスを提供する。運用のための機能についても、これとこれを買うという感覚ではなく、運用された状態のデバイスをサービスとして提供する。
従来のモノ売りだと、売ったら終わりという感覚がベンダー側にあったかもしれませんが、そうではなく継続的にお客さまと付き合ってサービスを提供していく。さらに言えば単純なPC管理のアウトソーシングではなく、運用された状態のデバイスをサービスとして提供する。これがDevice as a Serviceの形ではないかと思います。
「PCは直接ユーザーに送る」から在宅勤務でも対応OKPCは2年でリプレースする想定
――単純にPCをリース契約で利用する形とは違うわけですね。
[松尾氏]違います。たとえばSaaS(Software as a Service)で考えてみると、そのメリットとしてソフトウェアを運用する手間がなくなるため、管理者の負担が軽減できると言われることが少なくありません。ただ本当に重要な要素は勝手にアップデートされて、どんどん価値が向上していくことだと思っています。
そもそもSaaSは永遠のベータ版とも言われていて、常に価値が上がり続ける。これはクラウド上で提供するからできるようになったことです。同じようにDevice as a Serviceについて考えたとき、「as a Service」である所以は何かと言えば、やはり体験がアップデートし続ける必要があると考えています。
Device as a Serviceにおけるアップデートは、PCのリプレースでしょう。我々のサービスでは、2年間でリプレースしていただくことを考えています。
――具体的に、クライアントPCにおけるユーザー体験とはどういったモノでしょうか。
[松尾氏]モノとしてクライアントPCを捉えた場合、管理者が機種を選定して購入し、セットアップしてユーザーに配布、一定期間が経つとリプレイスするという流れです。
これに対してDevice as a Serviceは、サービス提供者である我々がユーザーにダイレクトに届けます。
このように言うと、アウトソーシングサービスと何が違うのかと思われるかもしれませんが、単にPCにあらゆるサポートサービスを付けて月額化しましたと言うだけでは、ユーザーの体験に寄り添っていないんです。
あくまで管理者の体験までなんですね。本当は管理者の後ろに実際にPCを利用する従業員がいて、その従業員がPCを使って作業を行い、その結果として生産性の向上だったりセキュアに仕事できたりすることが、本当の意味でのユーザー体験ではないでしょうか。
また多くのアウトソーシングサービスでPCを届ける先となっているのは管理者です。そのため、ユーザーへの配布は管理者がやらなければなりません。しかし手元にあるPCをユーザーの手元に届けるのは結構大変で、管理者が楽になっていない。さらにテレワークが浸透したときには、誰が自宅まで届けるのでしょうか。
故障して交換する必要が生じれば、壊れたPCを誰かが引き取らなければなりません。これもオフィスであれば難しくありませんが、テレワークで作業しているため自宅でPCを使っていると言うことになれば、自宅まで引き取らなければいけないわけです。そこまで管理者は考える必要があります。こういった点で考えても、Device as a Serviceにおいてサービス提供者がユーザーと直にコミュニケーションすることは重要です。
「テレワーク時代」に対応したセキュリティ管理をAzure ADで実現
――テレワークが前提になると、PC管理の考え方も変えなければなりませんね。
[松尾氏]そうですね。なので、Office 365、あるいはMicrosoft 365のようなサービスを活用し、クラウドファーストにしていくべきです。
現状のオンプレミスを前提としたPC運用環境では、外部にPCを持ち出しても定期的にオフィスに戻ってくるので、社内LANに接続されたタイミングでPCの状況を把握したり、あるいはWindows Updateやウイルス対策ソフトの更新が行えます。ただ、長期間オフィスのネットワークにPCを接続しないということになると、その間管理できないということになりかねません。
VPNで接続する方法もありますが、そもそもVPNは一時的に利用することを前提としていることが多く、常時接続するとパフォーマンス不足に陥る可能性があります。そうした回線でWindows Updateを行うとVPN回線がパンクしかねないため、VPN経由ではアップデートしないようにしているケースが多い。これが何日も続けば、大きなセキュリティリスクになるでしょう。このように考えると、やはり現状の管理環境はテレワークやモバイルワークには向いていないと言えます。
一方、Microsoft 365はクラウドネイティブであり、IDをベースにしたセキュリティ対策、いわゆるゼロトラストネットワークの考え方を採り入れることが可能です。
従来のID管理でも、社内のネットワークにいれば安全かもしれません。ただ社外からもアクセスするといった場合、IDとパスワードではなりすましの恐れを排除することができません。そのため多要素認証が必要になりますが、つねに多要素認証が求められるなど、ログインのための手続きが煩雑になればユーザーにとって使いにくい物になります。
そこでリスクに応じて要素認証を求めたり、デバイスに応じて制限をかけたりなど、柔軟に制御できる必要が生じます。Azure Active Directoryであればこれが実現できるというわけです。
使いたいPCは従業員自身がポータルから選択認証後、Autopilotで自動設定
――横河レンタ・リースとして、Device as a Serviceを体現したサービスとしてどういったものを検討しているのでしょうか。
[松尾氏]モノをコト化するという意味で、「Cotoka Platform」という提供基盤を開発中です。
このポータルでは、管理者画面にAzure ADに登録されているユーザーの一覧が表示され、ここでDevice as a Serviceの利用を許可すると、エンドユーザーはポータル画面にログインして自分が使いたいPCを直接選ぶことができます。月額利用料の価格内で利用できるPCだけが表示されるので、いずれかを選択すると配送希望日や配送先の入力画面が現れ、確定するとPCが届くという形です。
ただ、このPCは何らセットアップされていません。Windows 10がインストールされているだけです。そこで使うのが、Azure Active Directory Premium P1に含まれているAutopilotの機能です。従業員であるユーザーは自分のIDとパスワードで認証すると、Autopilotの仕組みを利用し、企業のポリシーやアプリケーションのダウンロードが自動的に行われます。またデータに関しても、オンラインストレージサービスであるOneDrive for Businessに保存します。
このポータルから修理交換も可能で、自宅から依頼することもできます。データはすべてOneDrive for Businessに保存されているので、データをバックアップしてリストアする手間もありません。
このようにPCを利用していただき、2年が経てば新しいPCを選んでいただいてリプレースする。これにより、PCのライフサイクルを管理者が意識しなくても自動的にリプレースされていくという流れになります。
――このサービスのターゲットとして、どういったユーザー層が考えられるでしょうか。
[松尾氏]幅広い層の企業で利用できるサービスだと考えていますが、特に今回のサービスでポイントとなっているAzure Active Directoryが入りやすいのは中小企業ではないかと思います。
またベンチャーやスタートアップ企業に積極的に使っていただきたいとも思っています。ビジネスが拡大する局面でセキュリティやコンプライアンスを意識したとき、自分たちで対応するためのリソースがなく、また専門家を新たに雇用することも難しいといったケースがあると思います。そのときは我々のような専門家を頼っていただきたいですし、そのために必要なソリューションをDevice as a Serviceとしてワンストップで提供します。
――本日はありがとうございました。
昨今の新型コロナ禍では、急速なIT化を求められている企業も多いだろう。
しかし、その課題は直接的なテレワーク・在宅勤務への対応はもちろん、IT管理者の採用や、そのIT管理者の作業である、機種選定から購入、キッティング、ユーザーへの配布、故障対応、そして数年後のリプレースと数多い。
こうした課題に対応できる「PCのサブスクリプション」は企業における新たなPCの利用形態として、Device as a Serviceは注目すべきサービスといえるだろう。