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東芝、11axの特性を実現する1チップICを開発、電子レンジなどの干渉源も素早く判別
新開発の低雑音動作と通信干渉の回避技術を実装
2018年2月16日 12:40
株式会社東芝、東芝デバイス&ストレージ株式会社、東芝メモリ株式会社の3社は、IEEE 802.11axのドラフトに対応したアクセスポイント向け1チップICを開発し、米国サンフランシスコで開催中の半導体回路国際会議「ISSCC2018」で発表した。
IEEE 802.11axは、Wi-Fi子機が高密度で存在する環境における平均スループットの向上を目的として規格が定められている。アクセスポイント(Wi-Fi親機)側で子機同士の衝突を回避するよう中央制御し、複数子機の同時通信を可能とするマルチユーザ伝送技術により、11acと比べて平均スループットを4倍以上向上するとされている。
しかし東芝によれば、11ax規格に準拠した通信を行うには、回路の低雑音化が必須だという。また、多数のWi-Fi子機が混在する環境で互いの通信が干渉する点も問題となっていた。
今回発表されたICには、東芝が開発した低雑音動作と通信干渉の回避技術を実装。これらの問題を解決し、IEEE 802.11axに必要な送受信特性を実現するという。
新たに開発された低雑音動作技術は、雑音による誤差を補正するもの。Wi-Fi通信では、同相成分と直交成分の2つの信号系統を用いてデータが送受信されるが、同相成分と直交成分に異なる誤差成分が存在するとデータを正常に受信できない。この誤差成分には、「振幅誤差」と、「位相誤差」の2つがあるが、この軸を回転させて誤差成分を「位相誤差」のみにすることで、従来の技術では補正が困難だった振幅誤差について、簡単な回路で高精度な補正を実現している。
一方の干渉源検出回路は、干渉の元である電波の種類を判別する回路を搭載することで、従来検出が難しかった高機能な電子レンジなどの干渉源を素早く判別できるという。これを応用すると、干渉源の少ない周波数を短時間で検出、より高品質でつながりやすいWi-Fi通信が可能になる。