ニュース
渋谷から3駅先に「五反田バレー」設立、“ビットバレー”に代わるIT企業の新たな聖地へ
2018年7月25日 19:10
東京・五反田を本拠地とするITベンチャー企業6社が「一般社団法人五反田バレー」を設立した。五反田をベンチャー/スタートアップの集積地として認知してもらい、“スタートアップといえば五反田”とのブランドイメージを確立することなどが狙いだ。IT企業の集積地としては、かつて渋谷が“ビットバレー”と呼ばれて注目されたが、今なぜ五反田なのか?
近年、五反田ベンチャーが熱いらしい……投下される資金も渋谷超え!?
五反田バレーは、株式会社マツリカ、freee株式会社、株式会社ココナラ、セーフィー株式会社、株式会社トレタ、株式会社よりそうの6社でスタート。代表理事をマツリカ代表取締役Co-CEOの黒佐英司氏が務める。活動内容として行政・地域との連携も掲げており、品川区と協定も締結した。
五反田バレーによると、近年、五反田にスタートアップ企業が増えているという。ベンチャー企業を専門にオフィス移転を仲介する株式会社ヒトカラメディアによると、同社が仲介した五反田への移転案件は2016年以降、25件に上る。また、大柴貴紀氏のブログ「インターネット界隈の事を調べるお」にマッピングされた五反田の注目ベンチャー企業の数は、2015年から2017年までに、20社から30社へ1.5倍に増加。さらに五反田バレーの調査によると、現在までに38社を確認しているという。
また、将来の成長が期待される企業価値30億円以上のスタートアップ企業を選出した日本経済新聞社の「NEXTユニコーン108」には五反田の企業が9社含まれており、渋谷の13社には及ばないものの、資金調達額では五反田9社のほうが上回っているという。
具体的には、五反田9社の年間資金調達額の総額は、2018年は65.8億円で前年比130%。渋谷13社の総額60億年を上回った。2017~2018年に調達した資金は、渋谷13社が1社平均9.2億円(総額120.5億円)に対して、五反田9社は1社平均12.8億円(総額115.5億円)に上る。
「五反田には、高額な資金調達を実現したベンチャーが多く集っている」「数字から見ても、五反田のスタートアップの熱気を感じる」と、五反田バレーではアピールする。
五反田がスタートアップに適している3つの理由とは
一方、ビットバレー・渋谷には、Googleの日本法人が2019年に本社オフィスを移転することを発表しており、同社が9年ぶりに渋谷に戻って来るということで、ITベンチャーの聖地としての復活を期待する声も多く聞かれるようだが、オフィス賃料の高騰や職住近接の限界から、渋谷を離れる企業もあるという。
その点、渋谷から山手線で3駅めの五反田は、都心や品川、羽田などへの交通の利便性が高い一方で、渋谷に比べてオフィスの賃料が安価。また、ベンチャー企業に多い若い従業員でも住みやすいリーズナブルな家賃の住宅街からもアクセスしやすい。さらに、1970~1980年代に建設された「ゆうぽうと」や「TOCビル(東京卸売センター)」などの大規模施設の建て替えに伴い、五反田は大型テナントが入る物件も増加する見込みであるとし、渋谷に代わる新たなベンチャーの聖地としてのポテンシャルを秘めているとしている。
ベンチャー/スタートアップ企業が抱える「人材確保」「固定費削減」「活動拠点の立地」という3つの課題に対して、五反田には「社員が住みやすい街」「賃料が安価」「交通の利便性が高い」というバリューがあると説明。「つまり五反田は、スタートアップが成長を遂げるのに適した街である」としている。
街のブランドイメージが課題、五反田=○○のイメージが強い?
もちろん、五反田にも大きな課題がある。まず、渋谷や六本木と比べてベンチャーの街というイメージが弱く、いまなお五反田=歓楽街のイメージが強いこともある。人材採用にあたっても、企業イメージとして、やはり渋谷・六本木のほうが有利であることは認めるところだ。
また、ベンチャー企業が増えているといっても、横のつながりが弱いことも課題として挙げている。従業員の個人間や一部で交流はあるが、オフィシャルな団体がないために、法人同士のつながりは強くないという。
こうした課題に対処するために、五反田のベンチャー企業団体を立ち上げる必要があり、五反田バレーを一般社団法人化し、五反田のブランドイメージアップ、地域・企業を超えた連携、社会課題を解決するスタートアップ企業を増やすことを目指す。
具体的な活動内容としては、行政との連携、大企業との連携、金融機関との連携、地域との連携といった外部との連携強化がある。協定を締結した品川区が主催するフォーラムなどのイベントに参加するほか、品川区との連携イベントも企画していくという。また、大企業との連携強化によるオープンイノベーションへの取り組みや、資金調達時の金融機関との連携も掲げている。地域との連携としては、中学生向けイベントの実施、夏祭りの後援、商店街へのサービス提供・実験などを挙げている。
このほか、団体内部での連携活動として子コミュニティの強化を掲げており、10月以降順次、「採用」「広報」「エンジニア」といったトピックごとの分科会を設置して、知見を共有していく考えだ。