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5G携帯、2023年には国内で870万台、市場の28.2%占める~IDC Japanが予測
2019年6月21日 06:00
IDC Japan株式会社は、国内の5G携帯電話および5G通信サービス市場の予測を発表した。2023年には、国内で870万台の5G対応携帯電話が出荷され、携帯電話市場の28.2%を占めると予測。さらに、5Gを利用可能な通信サービスの契約数は3316万回線となり、モバイル通信サービス市場の13.5%を占めると予測した。同社が、5Gに関する予測を発表するのは今回が初めてとなる。
IDC Japanリサーチマネージャーの小野陽子氏は、「5G対応携帯電話は、2019年第4四半期(2019年10~12月)に出荷が開始されるが、この時点ではごく少量の対応端末が出荷されるにとどまる。当初は端末の価格が高額であること、分離プランが移行のハードルになること、アプリケーションが少ないといったことが理由である。だが、海外の先行キャリアと同様に、国内でも携帯電話向けの容量無制限プランの提供も見込まれる」などとした。
海外では、月額100~150ドルで容量無制限プランが利用できると予測されており、日本でも同様の価格設定になると見込んでいる。
また、同社では、2020年にはAppleがiPhoneの5Gモデルを発売すると見込んでいるが、当面は少数派になると予測。その一方で、2025年以降になると、Androidを含めて市場全体でも5G対応モデルが半数以上を占めると予測している。
「米IDCの予測では、5G対応携帯電話の当初の価格は、個人で購入できるのかどうかという、驚くほどの高価な価格が想定されている。現行のハイエンド製品よりも高いものになっている。手に入れたいという人は、いまから貯金をしていた方がいい」(IDC Japanシニアマーケットアナリストの菅原啓氏)と示唆した。
一方、5G通信を利用可能な通信サービスの契約数は、当初は、5G対応携帯電話の普及と連動して増加。エンターテインメント施設からの高精細映像のリアルタイム配信、AIによる工場設備の予知保全ロボットや建設機械の遠隔操作といった産業分野でのIoT回線としての活用が加わることで、利用が加速すると見ている。
IDC Japanでは、5G市場は、通信基盤(通信インフラ、デバイス、通信サービス)やアプリケーション基盤(映像表示、3Dモデリング、AIなど)による5G関連技術の高度化および市場の成熟、低廉化と、エコシステムにおける協創や、ユースケース開発の増加、無線や固定回線といった既存の接続技術からの移行といった3つの要素における相互作用によって生まれるスパイラルが、成長に影響を及ぼすとしている。
MNOの5Gインフラへの投資は2021年から加速。2023年には、国内全体で5000億円の通信投資のうちの約8割が5G向けになるとし、「全国で概ね5Gの利用が可能になるのは2025年になる」と予測する一方で、通信サービスは当面、4Gと5Gのハイブリッド環境で提供され、さらに容量や遅延、安定性、コストなどの観点で既存の接続技術との競争関係だけでなく、補完関係も可能になり、リプレースや複数技術の組み合わせなどの提供が進むとした。
小野氏は、「モバイルネットワークは10年に一度、大きな変化してきたが、5Gは超高速、低遅延、多数同時接続といった点で既存のネットワークの性能を大きく上回る。それらの特徴により、距離を感じられなくなり、仮想と現実が一体感し、SFの世界を現実にすることができる。それによって、新たなエクスペリエンスが提供されることになるだろう。また、ビジネスを変え、創り出すことが可能になり、産業分野での開拓を通じたDXを実現し、ビジネスに対するインパクトは大きい」とし、「5Gに関連する製品、サービスが出そろい、これらを組み合わせたサービスやソリューションを提供する準備が整うまでの初期フェーズの市場の立ち上がりは、やや緩やかになるとみているが、その後、成長が加速する。また、5Gならではのユースケース開発は、長期展望で見る必要がある。特にスマートシティや自動運転の領域でのソリューションは規制緩和なども必要になり、さらに長期化するだろう」と述べた。また、「5Gがほかの通信技術を凌駕するという見方もあるが、IDCでは、ほかの通信技術の良さを生かした組み合わせた利用が進むとみている」とした。
一方で、コンシューマー領域での5Gの利用イメージについても説明。「海外に行った際に、ウェアラブルデバイスに搭載したカメラで撮影した街の看板の映像情報を5Gで送って、それを翻訳してリアルタイムでウェアラブルデバイスの画面に表示できるようになる。また、外を歩いていて、これから気温が上がると想定されると、今日のスケジュールと組み合わせて、移動する場所の近くのコンビニエンスストアの情報を表示し、飲み物を購入するように促すといったことが可能になる。5Gによって、生活を激変させるような未来がやってくる」(菅原氏)とした。
IDC Japanでは今回の調査をもとにした提言として、「コンシューマー分野における普及速度は期待よりも緩やかであり、過度な期待をかけずに、少し先のイノベーションに向けた準備をすること、マス層に向けて訴求するためには、5G向けサービスの適正な価格での提供や、先行採用者やソフトウェアコンテンツ開発事業者を巻き込んだ対話型マーケティングが必要である。また、産業分野においては、DXには待ったなしで取り組まなくてはならないなかで、DXのスピード感とDXの心構えを持って5Gのユースケースの実践を進めること。5Gの本質的な価値を享受できるようになる2025年まで待つ必要があるが、国際競争力の維持や、DXの牽引役として5Gを活用するためには、成果が見えない、キラーユースケースがないといったことで先送りにするのではなく、早い段階からさまざまなトライアルを進めてほしい」(小野氏)とした。
なお、ファーウェイに対する米政府による禁輸措置などが、5Gの普及に対して影響するかどうかについては、「個別の企業の動きには回答しない」と前置きしながらも、「中国メーカーは、3G、4G、5Gと世代が進むごとに存在感を増しており、世界を取り巻く動きは、5Gの普及に対しても、なにかしらの影響があると考えている。すでに通信機器などを導入している企業では、マイグレーションの計画が出てくる可能性もある。携帯電話端末については、各国のIDCのアナリストとともに情報を共有しているが、いまは現場の情報が不足しているというのが現状である」などとした。