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PCのトレンドはこれからどうなる? マウスコンピューターの「今後の予定」と生産・検査体制を確認してみた
ゲーミングノートPCも小型化へ。その理由はディスプレイにある!?
2019年6月26日 06:45
BTO PCで知られる株式会社マウスコンピューターは、2019年以降に発売するノートPCの新モデルを明らかにするとともに、今後の大まかなロードマップを公表した。
あわせて、長野県飯山市にある同社工場における製造現場を披露し、高い品質を保つための各種設備や取り組みなどもアピール。PC市場の牽引役ともなる大手BTO PCメーカーの1社の動きから、これからのトレンドがどうなっていくのか、探ってみよう。
消費増税とWindows 7サポート終了が買い替え需要の増加に
2019年は、PCの買い替え機運が盛り上がる、市場にとってまたとないチャンスの年でもある。ご存じのとおり10月には消費増税が控えており、PCの導入・買い替えコストを少しでも抑えたいユーザーや大口の企業としては、増税前にPCへの投資を済ませておきたいのは当然のことだろう。
その動きを加速させている要因として一番大きなものは、2020年1月にWindows 7の延長サポートが終了を迎えることだ。今後アップデートされないWindows 7の既存PCを使い続けるのは、セキュリティなどの面でリスクが高い。サードパーティアプリケーションのサポートも順次終了していくことになるだろう。
OSのみをWindows 10にアップグレードする選択肢もあるが、Windows 7時代と比べてPC性能は大幅に向上しており、これを機にPCを買い替えて長く使い続ける方が得策と考える向きも多い。増税とサポート終了のタイミングを考慮すると、10月までにPCの買い替え需要がピークを迎えることが予想されるわけだ。
個人向け・法人向けのBTO PCを製造するマウスコンピューターでも、そうした需要増の影響をすでに受けつつあり、飯山市にある工場はフル稼働しているような状況。2018年秋ごろからIntel CPUが極端に品薄になり、予定通りに生産できないといったアクシデントもあったが、最近ではその状況も改善してきているとのことで、これから10月に向けて本格化するだろう買い替え需要の波にしっかり乗っていくことができそうだ。
小型ながらも大画面、高性能なノートPC
そんな需要増が期待される状況のなか、マウスコンピューターは買い替えの主戦場になるとみられるノートPCのカテゴリーでいくつかの新モデルを発表した。
ベーシックな「mouse」ブランドから発表されたのは、m-Bookシリーズの2機種。なかでも「m-Book X400S」は、同社としては初めてとなるマグネシウム合金を採用した、素材感にこだわった14インチモデル。CPUにはIntel Core i5またはi7を採用し、メモリは8GB、ストレージは256GB SSD。薄さは17.5mm、バッテリー駆動は14.5時間で、ビジネス用途にも適した機種となっている。
重量は1.13kgで特別軽量というわけではないが、性能とコストのバランスを考慮したうえでの重量設定となった。価格は9万4800円(税別)からで、モバイル向けディスクリートGPUであるGeForce MX250搭載モデルも選択でき、グラフィックス処理が必要な用途でも高いポテンシャルを発揮する。
もう1つはホワイトボディの「m-Book B509H」。据え置き型メインとなる15.6インチのノートPCで、Intel Core i7-8565Uと8GBメモリ、256GB SSDを搭載し、狭額縁のIPS液晶ディスプレイと顔認証に対応するカメラを装備する。価格は9万9800円(税別)から。
ゲーミングPCブランドの「G-Tune」からは、変わりダネと言ってもいい個性的な機種が登場する。マウスコンピューターによれば、6月現在、他社を含めノートPCでの採用例はないというKaby Lake-G世代のIntel Core i7-8709Gを搭載する、世界初のゲーミングノートPCだ。Core i7-8709GはGPUを内蔵したCPUで、そのGPUの実体はAMD Radeon RX Vega M GHとなっている。
現在はまだ開発中のため参考値ながら、Intel Core i7-8750H+GeForce GTX1060相当の性能を叩き出しているという。薄さは19.8mm、重量は1.6kg。ディスプレイが13.3インチであることも考えると、ゲーミングノートPCとしてはかなりコンパクトなモデルと言えるだろう。
G-Tuneではもう1機種、ゲーミングノートPCとしては標準的な大きさの15.6インチモデル「NEXTGEAR-NOTE i5350SA1」も発表した。GPUにNVIDIA GeForce GTX 1650を採用。Core i7-9750H、16GBメモリ、256GB SSD+1TB HDDを搭載し、価格は13万9800円(税別)となっている。
クリエイター向けブランドの「DAIV」からは、4K解像度の有機ELディスプレイを採用するハイエンドモデルが登場予定。CPUはIntel Core i7-9750Hで、メモリは最大32GB。GPUはNVIDIA GeForce RTX 2060を搭載する。画像・動画編集を楽にこなせるスペックを備えた1台だ。
DAIVではさらに、マグネシウム合金を採用したm-Book Xシリーズと同じ筐体を採用した「DAIV-NG4300U1-M2S10」を開発中。NTSC比72%の色域に対応する液晶ディスプレイと、NVIDIA GeForce MX250を搭載する、ハイパフォーマンスな薄型・軽量モデルという位置付け。Intel Core i7、16GBメモリ、1TBのSSD搭載で、価格は15万9800円(税別)を予定している。
このほか、同社では初めてAMD CPU(Picasso APU)を採用した「赤い」ノートPCも開発中で、参考値ながらIntel Core i5-8265U搭載PCの約2倍の3D性能を発揮しているとのこと。
これらのモデルのほとんどで共通しているのは、狭額縁(ナローベゼル)という部分だ。マウスコンピューターでは画面専有面積が80%を超えるものを狭額縁モデルと定義しており、2019年の夏には同社販売モデルの6割が狭額縁に、12月にはほぼ全数のモデルが狭額縁になる見込みだとしている。
狭額縁になれば、筐体を小型化しながら最大限にディスプレイサイズを拡大でき、持ち運びの容易さと視認性向上の両立を実現できる。ベゼルが細くなることで、ゲーミングPCではゲームへの没入感が増す効果もあるだろう。一部のモデルでは4Kなどの高解像度化や240Hz駆動の高リフレッシュレート化で「リッチコンテンツ化」を目指すとしており、いずれにしても同社では、ディスプレイ周りの進化が今後のキーポイントの1つと見ているようだ。
高性能化が進むPCに対応する生産・検査体制
BTO PCは、自作PCに近いレベルで機器構成をカスタマイズできる自由さがあり、比較的低コストで手軽にユーザー自身が望むスペックを実現できるのが特徴だ。とはいえ、ユーザーにとってそれは安価で低い性能のPCを、という方向性より、どちらかというとできるだけ安価で高い性能を、という方向性が期待されてきたカテゴリーだったと言える。
マウスコンピューターが取り扱う商品でも、ビジネス向けの超小型PCや省スペースPCを除けば、Intel Core iシリーズのようなパフォーマンスの高いCPUを採用するモデルがラインアップのほとんどを占める。ここで問題となってくるのが、「熱」と「騒音」、そしてそれに伴う「性能低下」だ。
同社では近年、PCの製造にあたってこの3つを主要な課題と捉え、さまざまな対策を施してきた。CPUはもちろんのこと、ディスクリートGPUやNVMe SSDも高性能化の反動で発熱が避けられなくなってきており、冷却効果の高いCPUクーラーやファン、水冷システム、ストレージ用の熱伝導パッドなどのパーツ選定を行なってきた。
これに加え、同社工場が備えている高温室では、高い室温を作り出す恒温槽内に製品を設置し、長時間の駆動実験で問題ないことを確認している。さらにノートPCにおいては、内部温度だけでなくユーザーが直接触れる外部の表面温度も計測して、性能と使い勝手の両方に問題が出ない品質を担保している。
ただし、温度を低く保てるからといって、その冷却のために快適に使えないほどの(ファンなどからの)大きな騒音が発生する状態になってしまうのでは意味がない。高い冷却性能を維持しつつ、高負荷時でも基準となる騒音値を超えない静かなパーツが必要だ。そのため同社では、製品開発においてその両方を満たすまでパーツ選定・交換と計測を繰り返しているという。
工場の製造工程では、一度組み立てたPCのケースを開けて細部を確認するスタッフや、オーダー通りに正しいパーツが装着されているかを1つ1つ確認するスタッフを配置している。生産の最終段階では、部署として完全に独立した品質管理部門が、完成したPC全体の構成を改めて確認しており、こうした多重チェック体制が同社のBTO PCの高い品質を支えている。PCの高性能化が進むにつれ、品質向上に向けた取り組みは今後ますます重要かつ困難になっていくに違いない。