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スポーツ庁長官が語る「スポーツ×他産業の融合でスポーツ市場は拡大する!」
~スポーツの成長産業化は、他産業の市場拡大につながり、大きなビジネスチャンスになる~
2019年11月20日 06:30
音と映像と通信のプロフェッショナルのための国際展示会「Inter BEE」。中でも今年は2020年の東京五輪を目前に控え、「スポーツとそれを伝えるイノベーション」をトピックテーマに4人のキーパーソンが講演を行った。
ここでは2019年11月13日の基調講演に登壇したスポーツ庁長官の鈴木大地氏の講演「他産業との融合によるスポーツの未来」を紹介する。企業にとっては、今後のビジネスチャンスになるはずだ。
重要なのは”ビジネスの視点から見た”スポーツの価値
スポーツ庁が現在行っている取り組みの一つが、スポーツの成長産業化「Sports Open Innovation Platform(SOIP)」。
スポーツを産業として捉え、他産業との融合、連携により新しいサービスや価値が創出される社会の実現を目指している。数値目標として、スポーツ市場規模を2010年の5.5兆円から、2025年には15兆円までの拡大を掲げている。つまり、民間企業にとっては大きなチャンスと言える。
これまでスポーツの価値と言うと、心身の健康作りや人格形成、夢や感動を届けるものという見方が多数だった。
それに対して、鈴木長官は「スポーツの成長産業化というフェーズを考える上で重要になるのは、ビジネスの視点から見たスポーツの魅力なのではないか」と切り出した。
具体的には、スポーツコンテンツは「エンターテイメント性」「情報発信力」「ハブ機能」の3つのビジネス的視点で価値があるという。
エンターテイメント性
試合は、同じ相手であっても、同じ結果・展開になることはない。「勝ち負けが存在するから、スポーツを観る人が多い。魅力があるのだろう。
多様なプロセスを経て、未知の結果に到達する。筋書はない。人々は予想を超えた展開に心を打たれる。あらかじめ試合展開が分かっていたら、こうはならない」などと説明した。
情報発信力
試合が開催されると、スポーツによっては数万人の人が、一つの場所に集まり観戦を行う。また有名チームともなると、Twitterのフォロワー数は50万人を超える。
これは、多くの人に一瞬にして情報を届けられるということを意味する。「社会的な影響力が極めて高い」とした。
ハブ機能
スポーツ観戦は、多くの人が同じ目的で同じ場所に集まり、数時間を共有する。この点に目をつけ、他産業と連携した新たなサービスの開発・実証が行われている。
一例として産総研と鹿島アントラーズが実施した事例が紹介された。試合終了後のスタジアム内の人の動きを解析し、人の動きを予想するモデルを開発、実証、活用している。「災害時の人の流れの予想など活用性が高く、技術の向上に期待が高まっている」と言う。
スポーツ×他産業で広がる市場の可能性
SOIPにより推進するオープンイノベーションは、「スポーツの価値高度化」「他産業の価値高度化」「社会課題の解決」の3つの型に分類できる。
スポーツの価値高度化
テクノロジーを活用することでスポーツの価値を向上させた事例が紹介された。日本フェンシング協会は、テクノロジーを活用することで、フェンシングの剣先の動きを可視化し、試合展開を理解・把握しやすいように大胆な工夫をしている。
また「スマートフォンでのスポーツ観戦が手軽になってきたことも、スポーツの価値高度化をもたらした」と述べた。
人間拡張工学に基づき、人の身体能力を超える力をまとった超人同士がテクノロジーを自在に使いこなし競い合う人機一体の新たなスポーツ「超人スポーツ」が生まれている。
「現代のテクノロジーにより、競技性に加え、ゲーム性とエンターテイメント性を高め、運動に苦手意識がある人も楽しく取り組める利点があると思う」と語る。
さらに、観戦する側からは、定点ではなく、自由な位置、角度からの映像コンテンツを楽しめる「自由視点映像」という新たなサービスが生まれていることも紹介された。
他産業の価値高度化、社会課題の解決
今は、少子高齢化や健康経営など、社会の関心が健康に集まっており、スポーツが持っているリソースを外部に活用してもらうことで、ヘルスケア産業をはじめとした新たな事業が生まれている。
「アスリートが持つ健康やコンディショニング管理に関するノウハウを、テクノロジーを活用し一般の人々に向けて提供。健康増進などに役立っている事例などがある」と言う。
最後に鈴木長官は、「スポーツと他産業との融合は、まだまだ発展段階である。市場としての可能性は未知数であり無限大だろうと考えている。スポーツの成長産業化、これは他産業の市場拡大につながり、大きなビジネスチャンスにつながると思う」などと締めくくった。