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中堅企業のテレワーク実施率は63%、しかし継続希望は54%、デルがリモートワーク支援を3つの視点で強化

約1割がテレワーク継続を断念

 デル・テクノロジーズは、約470社の国内中堅企業を対象にした「IT投資動向調査追跡調査」を発表。テレワークや在宅勤務を実施している企業が63.9%に達する一方で、オフィスへの安全なアクセス環境が準備されていないため、メール以外の社内システムに接続できていない企業が全体の60.7%を占めたほか、今後もテレワークを継続すると回答した企業は54.1%と、前回調査(2020年1月)に比べて、9.8%減少。「1割の企業がテレワークの継続を断念している」と分析した。

 同社では、2020年2月に、「中堅企業IT投資動向調査2020」(2020年1月調査)を発表。今回の発表は、その追跡調査として、6月8日~7月3日の期間、従業員数が100人以上、1000人未満のデル・テクノロジーズの中堅企業のユーザーを対象に実施した。

テレワーク実施率は63.9%に増加、しかし継続希望は54.1%

 調査によると、テレワークおよび在宅勤務を実施した企業は、新型コロナウイルス感染拡大前の1月時点の調査では25.1%だったが、今回の調査では、38.8ポイント増加し、63.9%となった。

 しかし、今後もテレワークを継続する企業は54.1%となり、9.8ポイント減少する結果となっている。継続しないと回答した企業からは、「コミュニケーションが難しい、時間がかかる」、「チャットやWeb会議ツールなどの習熟度に個人差があり、業務の円滑な進行を妨げる」という理由をあげており、「社内ユーザーのITリテラシーのギャップが、長期化するテレワーク環境下で問題になっている」と分析。

6割の中堅企業がテレワークを実施
1割の企業がテレワークの継続を断念
デル・テクノロジーズ 上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏

 さらに、「これまでの企業文化やプロセスが新たな働き方に追随できず、かえって業務効率が悪くなるなどの支障が起きている。また、PCの整備やPCのセキュリティ対策が優先され、デスクトップPCからノートPCへの置き換えが進められたものの、VPNによるセキュアなネット接続環境が用意されていないため、社内のファイルサーバーにアクセスできないといった例も多い。テレワークのスタートポイントに立ったものの、業務継続ができない企業が多いという課題が浮き彫りになっている」(デル・テクノロジーズ 上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏)とした。

 調査では、テレワークを実施済みと回答したにもかかわらず、オフィスへの安全なアクセス環境が準備されていないため、メール以外の社内システムに接続できていない企業が60.7%を占めた。

 また、「テレワークを継続するとした企業の課題では、押印や印刷のための出社が40.4%、請求書や帳票発行のための出社が38.9%といったように、ペーパーレスに起因する課題がトップとなっており、PCやリモートで業務を行うシステム・ツールの導入が不十分という回答は、29.6%となった。テレワークを継続する企業と、断念すると回答した企業では、課題とする要素が異なっている」(デル・テクノロジーズ 広域営業統括本部中部営業部兼西日本営業部長の木村佳博氏)とも分析している。

テレワーク関連業務は約1割の増加、IT担当者にしわ寄せが

 調査からは、IT担当者の業務負担が増加していることも明らかになった。

 IT担当者はテレワーク関連業務が10.3%増加。ヘルプデスク対応をはじめ、PCの導入、管理、ネットワーク運用および管理、情報セキュリティ管理に割かれる時間が増加しているという。

デル・テクノロジーズ 広域営業統括本部中部営業部兼西日本営業部長の木村佳博氏

 「1日10時間勤務していたとすれば、毎日1時間もの業務が増えていることになる」(木村部長)と指摘する。

 また、外部ベンダーとの相談頻度が「減った」および「やや減った」との回答が、20.9% に増加。ITベンダーのテレワークや訪問自粛が進んだことで、ユーザー企業の情報取得の機会が減少。「IT技術や市場動向、他社動向など、投資検討に必要な情報収集が困難になっている実態が浮き彫りとなった」としている。

 また、IT予算の確保や投資の実行スピードが鈍化した企業が増加していることもわかった。テレワークの進展では、社内稟議を通す際に工夫が必要となったとした企業が 64.9% となっており、「投資対効果の数値化」、「上層部への個別説明」、「他社との費用比較」などが理由にあげられている。「社内稟議をコスト面の可視化、正当性するための説明やタフなネゴシエーションが必要となっている」とみている。

BCP対策予算は減額、内製化を重視する傾向

 一方、災害などの緊急事態に備えるBCP(事業継続計画)対策予算が減額していることもわかった。

 2020年度の平均IT投資額平均は、1月調査時点の1470万円に対して、6月調査では 1495万円と、1.0%増に留まっているが、内訳をみると、セキュリティ対策費用が22.9%増の198万円となったのに対して、BCP対策費用は4.0%減の105万円と減額した。その一方で、BCP策定済みおよび策定中の企業は45.7%と一気に増加。「今年1月からのわずか5カ月間で、社内ルールの整備を進めた企業が多いものの、 IT活用に伴う投資に至っていないのが実態である」と指摘した。

BCP対策予算は減額

 また、すべてのPCをWindows 10環境へと移行した企業が53.8%となり、1月調査に比べて27.3ポイント増加。デスクトップPCを多く活用している企業は、5.1ポイント減の49.2%となった。「OSの刷新に伴い、ノートブック化が進んだ」としながらも、「限られた予算のなかで、突発的なリモートワークの実現に投資が偏っている状況がある」とも指摘した。

 さらに、デジタル化の予算が「増加傾向・増加計画あり」とした企業は42.0%と、6.8ポイント減少。自社内で人材を育成するとした企業が75.5% となり、2.6ポイント増加。内製化を重視する傾向がより鮮明になったという。

3つの視点でリモートワーク支援を開始「環境」「仕事の仕方」「コミュニケーション」

 調査結果をもとに、同社では、「リモートワーク継続の障壁として、現状に対してどこまで対策が必要なのかわからない」、「経済環境が不安定でどこまで投資できるかわからない、印刷や押印による出社要求がなくならない」、「IT担当者に対する問い合わせの急増による業務負荷の増大」といつた課題が明らかになったほか、「年齢差などによって、テレワーク関連ツールの習熟度の差が埋まらない」、「社員同士のコミュニケーションが取りづらく、時間がかかるといった課題がある」といった課題があることを指摘。

 それを解決するために、「働く環境支援」、「仕事の仕方支援」、「コミュニケーション支援」の3点から新たな施策を打ち出す考えを示した。

「働く環境支援」
3カ月無償提供可能なPCレンタルプログラム
中堅企業向けノートパソコン即納モデル

 「働く環境支援」では、テレワーク環境の整備に伴うアセスメントのほか、計画から実行、運用までのすべてのフェーズにおける支援を行う「テレワークアセスメント・コンサルティング」を提供するほか、中堅企業向けに、最低5台から3カ月間無償で利用可能なリモートワーク用ノートPCレンタルプログラムを、パシフィックネットとの協業で提供を開始する。3年間と5年間の2種類のレンタル期間を用意。デル・テクノロジーズのLatitude 3500/5300を使用し、Office搭載/非搭載から選べる。また、ノートパソコンがすぐに必要になった中堅企業を対象に、ノートPC即納モデルを用意し、最短で翌営業日に届ける。

「仕事の仕方支援」
ペーパーレス化のソリューション
マルチベンダーサポートプログラムのサービスを拡張

 「仕事の仕方支援」では、パナソニックインフォメーションシステムズとの協業により、汎用ワークフロー「MAJOR FLOW Z FORM」を提供。在宅勤務中の出社という課題に対して、ペーパーレス化のソリューションに対応するほか、PC管理者やヘルプデスク担当者の負荷を軽減するために、これまで提供していたPCマルチベンダーサポートプログラムのサービス拡張。無償提供期間を2021年3月31日まで延長する。

「コミュニケーション支援」

 「コミュニケーション支援」では、社内のIT習熟度の個人差を埋めるために、テレワークツールの活用法に関する無償のオンライン講座として、「Zoom活用講座」、「Microsoft Teams活用講座」を提供。さらに、中小企業診断士との連携によって、管理者向けコミュニケーション講座を用意。リモートワーク下でのコミュニケーションの取り方や、社員のモチベーションの維持などについて解説するという。

中堅企業のデジタル化促すバーチャルオ-プンオフィスやDX化支援も

 さらに、同社では、2020年2月に、今年度の中堅企業向け支援策として、「共有」、「学習」、「育成」、「実践」、「支援」の5つ観点から各種施策を提案していたが、市場環境の変化にあわせて、これらの領域においても、新たな施策を追加した。

 テレワーク導入に必要な課題を解決するための毎日バーチャルオープンオフィスにおいて、新たに「中小企業診断士による中堅企業のための補助金・助成金活用講座」をスタート。同規模や同業種の企業同士の情報交換などができるイベントとして「情シス担当者のための相談所」を開催。

 中堅企業のIT担当者が抱える14カテゴリ100課題をオンラインで診断できる「中堅企業デジタル化診断サイト」を開設。

 そのほか、企業のデジタル化施策の情報交換コミュニティである「中堅企業DX分科会オンライン」、奈良先端科学技術大学院大学の研究員が講師となり、DX関連技術の概要や活用方法を学ぶ「DX Tech Play オンライン」、プログラミング未経験者も参加でき、データ分析やAI基礎概念、ディープラーニング活用などの内容で、8回の演習で構成される「中堅企業DXエンジニア養成講座オンライン」も提供する。

中堅企業デジタル化 診断サイト
DX Tech Play オンライン

 さらに、カゴヤ・ジャパン、ミライコミュニケーションネットワークが協賛し、奈良先端科学技術大学院大学とともに開催する中堅企業のDX支援特化の総合支援プログラム「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」を実施するほか、全国に広がるデジタル化支援ソリューション提供パートナーとの連携によって、中堅企業のDX化の支援を推進。中堅企業向けIT製品やサービスを集めたオンラインIT展示会「IT展示会オンライン for 中堅企業」を、東海地区や関西地区といったように、エリアごとに開催する予定だ。

 デル・テクノロジーズ 上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏は、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、仕事がいつも通りできているやり方が、ベストではないことが明らかになったほか、日本の企業では新たなことに、なかなか着手できないという課題も浮き彫りになった。従来の仕組みやルールに捉われない、抜本的な見直しが急務となっている。デルでは、パートナーと連携しながら、オールインワンソリューションとして、新たな社会の仕組みにおける中堅企業のデジタル活用支援を行っていく」と述べた。