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ブロックチェーン上の業務ログからリアルタイムに不正を検出、ニチガスとBasset
2020年8月24日 13:20
スタートアップ企業 株式会社Bassetは、日本瓦斯(ニチガス)のコールセンター業務向けシステム「ニチガスサーチ」のためにブロックチェーン上の情報の不正検知技術を提供した。
ニチガスサーチでは業務システムのログを改ざん困難なブロックチェーンに記録しており、その内容を解析して業務に関連する不正を素早く検出する。デジタルトランスフォーメーション(DX)のためにブロックチェーンのメリットを活用した先端的な取り組みといえるだろう。
Bassetは、暗号資産(仮想通貨)の取引の不正検知の技術を手がけるスタートアップ企業である。ブロックチェーン分析によるコンプライアンス技術を得意分野とする。今回の「ニチガスサーチ」における取り組みでは、金融事業で用いられる不正検出エンジンと「同等レベル」のメカニズムを業務システムに組み込むことができたとしている。
エストニア生まれのX-Roadとブロックチェーンを組みあわせ
日本瓦斯(ニチガス)は早い時期からクラウド技術に取り組み「雲の宇宙船」と呼ぶ基幹業務システムの開発を進めてきた。先進性で知られるエストニア電子政府のシステムに由来するデータ連携基盤であるX-Roadを採用している。
「ニチガスサーチ」のシステムは、日本瓦斯(ニチガス)とX-Roadを展開するスタートアップ企業であるPlanetway Japan株式会社が作り上げた(日本瓦斯の発表資料、Planetway Japanの発表資料)。X-Road開発元であるNIIS公式サイトの事例紹介記事によれば、グループ内5社に分散していた150万人以上の顧客情報を集約。コールセンターの平均処理時間を6分から45秒に短縮した。毎月150万件の取引を処理する。
X-Roadはエストニアの電子政府システムのために作られたデータ連携基盤である。その後フィンランド政府も同システムを採用し、両国が共同で設置した団体であるNordic Institute for Interoperability Solutions(NIIS)がコア機能の開発とソースコード管理を引き継いだ。ソースコードはMITライセンスによりオープンソースで公開する。
X-Roadのアーキテクチャ上の特徴は、データベースからデータの重複を排除し、分散した多くのデータベースをXML Webサービス仕様に基づく高速データバスで結ぶ仕組みにある。ある種のSOA(サービス指向アーキテクチャ)といる。電子政府システムに由来することから、個人情報をセキュアに効率よく扱えることを目指している。今回の日本瓦斯のシステムのように民間企業向けの展開も始まっている。
一方、ブロックチェーンは改ざんできない台帳であり企業システムの監査と相性がいいと言われている。ニチガスサーチとBassetの技術の組みあわせでは、(定期的な監査ではなく)リアルタイムな不正検知によりミスや不正をいち早く検出できるようにした。例えば顧客情報を扱うオペレータが不正に個人情報を持ち出すなどのアクティビティを監視、検出できる。
企業のデジタル変革、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)の観点でも興味深いブロックチェーンの使い方と言えるだろう。
システム外販、エネルギーのトークン化も視野に
日本瓦斯では今後、ニチガスサーチなど業務システムの外販を考えている。エネルギーの小売り自由化に関連してガスや電力のトークン化も視野に入れる。トークン化では、エネルギー取引を、仮想通貨(暗号資産)などと同様にブロックチェーン上の電子データの移転として表現する。
ガス小売り自由化で、仕入れたLPガス(プロパンガス)を再供給する「LPG託送」が始まりつつある。また電力業界でもP2P電力取引が話題となっている。このような取引では小口化したエネルギーをトークンで表現できると都合がよい。
トークンを利用する取引のシステムではブロックチェーンのメリットが直接的な形で発揮できる。同時にBassetの不正検知技術も適用できる。ブロックチェーンが企業情報システムでメリットを発揮する取り組みが始まりつつある。