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老舗企業ほど「テレワークに困難さ」感じる傾向、完全テレワーク環境で住みたいエリア1位は「東京都」
サイボウズ、アステリア、ZVC Japan、レノボ・ジャパンが合同調査
2022年4月15日 13:40
サイボウズ株式会社、アステリア株式会社、ZVC Japan株式会社、レノボ・ジャパン合同会社の4社は、合同で実施した「未来の働き方を考える」調査の結果を発表した。「完全テレワークになったら住みたい都道府県」1位は東京都、「ワーケーションで行ってみたい都道府県」1位は北海道となった。また、調査結果について各社の代表がコメントを寄せている。
本調査は2022年3月9日~11日に、全国の20代~60代のフルタイム就業者2000人を対象に、インターネット上で実施された。
テレワーク体験の有無で「働き方の2極化」が進展? 経験者ほど肯定的
テレワークの実施状況を尋ねたところ、新型コロナウイルス流行前のテレワーク実施率は7.1%であったのに対し、2020~2021年のコロナ禍の緊急事態宣言中には29.5%と上昇した。2022年3月には、緊急事態宣言中からやや減少したものの、25.8%がテレワークで働いていることが分かった。
関連して、テレワークをしたいかどうかの意向を尋ねたところ、41.7%が「テレワークを選択できる働き方をしたい」と回答した。テレワークできる職種か否か、テレワークの経験があるか否かの別で内訳を見ると、テレワークできる職種、かつテレワーク経験がある人の7割以上が「テレワークを選択できる働き方をしたい」と回答している。
テレワークできる職種か否か、およびテレワークが導入されているか否かの回答を集計したところ、2022年現在でも「テレワークできる職種だが、テレワークは導入されていない」と回答した人が8.9%いることが明らかになった。
その理由としては「職場以外だと部屋・机・椅子など物理的環境が整っていない」「職場がテレワーク環境に設備投資できていない」というハード面の課題、および、「社内・社外関係者とコミュニケーションがとりにくい」「テレワークの業務ルールが整っていない」などのソフト面での課題が存在しているという。
2022年現在でのテレワーク実施率を企業規模別に見ると、従業員300人未満の企業は17.5%、300~2999人の企業は29.1%、3000人以上の企業は44.2%と、企業の規模が大きくなるにつれてテレワークが実施されている状況が明らかになったとしている。
また、テレワークできる職場に好感を持つ人は、従業員300人未満の企業は36.6%、300~2999人の企業は44.3%、3000人以上の企業は53.1%と、企業規模が大きくなるにつれて、その割合が増加している。
サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏は、大企業を中心にテレワーク実施率が着実に増えている一方で、テレワークできる職種なのに導入されていない中小企業も多いと指摘する。
テレワーク定着には経営トップによる「できるところからテレワークをやってみよう」というコミットメントやツール、制度、風土を整えることが大切だとし、今の日本の中小企業には「テレワークリテラシー」の向上が求められると、同氏はコメントしている。
オフィスに期待されるのはコミュニケーションよりも「無料の食堂」
調査対象のうち会社員・団体職員の1435人を対象に、「テレワークを選択できる場合の働く場所」について調査を行った。今後もオフィスがあったほうが良いと思うかどうかを質問したところ、約6割が「オフィスはあったほうが良い」と回答している。
年齢別に見ると、20代が59.9%であるのに対し、60代は69.3%と世代間で13.7ポイントの差が見られ、「若者のオフィス離れ」が見られるとしている。
その理由としては、「業務に使用する機器がある」や「資料やデータを保管する」などが上位だった。自宅や外部にない業務効率を高めるためのシステムや機械が、オフィスの存在価値を維持しているとしている。
一方、テレワークによって業務成績への悪影響があると回答した529人にその理由を質問したところ、「社内関係者とのコミュニケーションがとりにくい」が最多回答として挙げられた。
しかし、「今後もオフィスがあったほうが良い」と回答した理由では、社内コミュニケーションに関する要素は上位に挙げられていない。このことから、「オフィスをテレワーク制度下の『社内コミュニケーションの場』として活用できている例は少ないと推察できる」としている。
一方で、「理想のオフィス」に欲しいものを質問したところ、最も多く挙げられたのは「無料の社内食堂、カフェ」が4割、次いで「心身ともに癒される空間、業務に集中できる小会議室」が続いた。
このほか、オフィスデザインを重視した「オシャレな空間」を20代の約2割が選択しているが、30代以上の支持が少ないという結果も見られたとし、興味深い結果として注目している。
この結果についてZVC Japan(Zoom)社長の佐賀文宣氏は、テレワークで社内関係者とのコミュニケーションがとりにくくなるという懸念を抱える人が多く、オフィスが必要な理由も「職場の仲間が集まる場所がいる」という理由が「資料やデータを保管する」という理由に次いで多いことから、社員のエンゲージメントの改善が求められていると分析した。
このことを踏まえて、これまでテレワークに必要なIT技術を享受できなかったフロントラインワーカーへのコミュニケーション技術の導入や社員のエンゲージメントを高める必要があるとコメントしている。
創業が古い企業ほどテレワークでコミュニケーションが難しいと感じる傾向
テレワークが導入されている企業の624人に対して「テレワークで働くか、出社して働くか、あなた自身で決めることができるか」という質問をしたところ、管理職・経営者・役員の回答者では75.5%が「自分で決めることができる」と回答した。一方、一般社員では同じ回答の比率が47.7%で、27.8ポイントも差があった。
また、テレワークを利用していない理由として「社内関係者とコミュニケーションがとりにくい」と回答した割合を役職別に見ると、一般社員が24.9%であったのに対し、管理職・経営者・役員では39.3%と、約4割が社内コミュニケーションが課題だとしていることが分かる。
さらに、創業からの年数別に「社内関係者とコミュニケーションがとりにくい」と回答した割合を見ると、創業からの年数が長い企業ほど、テレワークにより社内関係者とのコミュニケーションがとりにくくなると回答している傾向も分かるとしている。
これに対してレノボ代表取締役社長のデビット・ベネット氏は、「ハンコ文化」のように日本企業の文化がテレワーク導入の障壁になることがあると指摘。伝統ある企業の経営者は、優秀な若手社員確保のために新しい文化を取り入れ、新しい働き方の価値観に順応することが求められるとコメントしている。
完全テレワークで住むなら「東京都」、ワーケーションなら「北海道」
対象者2000人に「今後完全にテレワークとなり、働く場所が自由に選べるとしたら、どこで暮らしたいか」という質問をしたところ、1位は東京都で27.3%、2位は神奈川県で19.1%、3位は北海道で16.6%という結果になった。
また、「今後ワーケーションで働けるようになり、自由にワーケーション先を選べるようになったとしたらどこに行きたいか」という質問については、1位は北海道27.0%、2位は沖縄県で23.1%、3位は東京都で15.6%との結果になった。
これに対してアステリア代表取締役社長/CEOの平野洋一郎氏は、調査ではワーケーション先が北海道や沖縄など観光地が上位に入っており、まだまだ「より生産性の高い働き方」への考察が低いとし、今後は設備の充実度や、緑視率(視界に入る緑の割合。国土交通省の調査では、25%を超えると「緑が多い」と感じられ、清涼感や快適性が高まるとされる)など生産性の指標に注目することで、観光地でない地域の魅力度向上につながるとコメントしている。
また、ワーケーション先に東京都や神奈川県も上位にあることは「いざとなったら職場に通える距離」という意識が見られ、テレワークでもオフィスに縛られているとした。今後はオフィスでの業務を主とするのではなく、多様な働き方の選択肢とする必要があると指摘している。