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日本初のDAO型シェアハウス「Roopt DAO」、4月22日解禁の「合同会社型DAO」へ

大家・入居者が共同で運営、空き家対策の新たな仕組みの構築を目指す

Roopt神楽坂 DAOのウェブサイトより

 株式会社ガイアックスおよび株式会社巻組は、日本初のDAO型シェアハウス「Roopt DAO」(ループト・ダオ)を、4月22日に合同会社化すると発表した。同日に国内で解禁される日本版合同会社型DAOの先例を作るとしている。

 DAO(Decentralized Autonomous Organization:ダオ)とは、Web3の重要キーワードの1つであり、「自律分散型組織」と訳される。ブロックチェーンやスマートコントラクト(ブロックチェーン上に記録されたルールに従い、取引や契約が自動的に行われる仕組み。不正を防ぎ透明性を担保できる)を用いて運用されることが特徴となる。

 従来の組織では、スムーズな情報共有や意思決定のために階層構造や中央の意思決定機関が求められるようになるが、DAOでは、よりフラットな形態の組織でも情報共有や意思決定、また出資や分配も同様にスムーズに行えることが期待される。そのため、「中央集権的でない組織」「中央管理者を持たない組織」のように紹介されることもある。

DAOにより皆がリスクを共有して運営されるシェアハウス

 Roopt DAOは、2022年8月にスタートし、東京・神楽坂のシェアハウス「Roopt神楽坂 DAO」を運営。ガイアックスがコンサルティングや運営支援を行い、シェアハウス運営を手掛ける巻組がDAOに参加し、法人格が必要な各種手続きなどの窓口となる体制だった。

 従来の賃貸住宅では、サービス提供者である大家と顧客である住人の立場が明確に分かれ、しばしば利害が対立する(リスクを共有できない)。対して、DAO型シェアハウスでは、大家や住人のほか、利用者、支援者らがリスクをシェアし、運営方針を話し合い、タスクも分担しながら運営していることが特徴となる。

 Roopt DAOでは、「Discord」を使用したコミュニティに住人・支援者ら400人以上が参加して議論や意思決定が行われており、広報や集客を含めた運営業務もDAOメンバーが実施している。「学生起業家DAOシェアハウス」を打ち出してのブランディングもあって、スタートから1年で売上1.7倍、利益率も大幅改善といった実績を上げていた。

Roopt DAOの運営

4月22日に合同会社型DAOが解禁

 DAOが、その組織の特徴を保ったまま法人格を持つことができる事例は海外にはあるが、これまで、日本では不可能だった。しかし、4月22日に施行・適用する「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」により、可能になる。

 もっともDAOに近い形態の会社は、出資者と経営者が同一である合同会社だが、これまで、DAOが合同会社になるには、DAO内で貢献に対する報酬や権利の証明としてやり取りされるトークン(暗号資産)の扱いについてが、大きなハードルとなっていた。

 従来の金融商品取引法では、社員権のトークンは「一項有価証券」とされ、有価証券届出書や証券業登録などの厳格な規制が適用された。これが、改正により、業務執行社員が保有するトークンと収益を分配しないトークンについては、前述の規制の適用外である「二項有価証券」扱いとされるようになる。

空き家対策の「仕組み化」を目指す

 Roopt DAOでは、Discord内で投票によって意思確認を行い、合同会社化を決定した。投票は4月8日に終了し、今後は、合同会社型DAOの定款マニュアルなどを展開している団体の情報を参照しながら、合同会社型DAOの実現に向けて進めていく予定だとしている。

Discordでの合同会社化に向けたやり取り

 合同会社化のメリットは、DAO自身が法人格を持ち主体的に活動できること、そして、収益分配が可能になることにある。ガイアックスの廣渡裕介氏(DAO事業部 副事業責任者)は、「通常、DAOでは、活発に貢献をするメンバーと見守るメンバーに2極化しますが、合同会社型にすることにより、見守るメンバーにも金銭的な収益分配が可能になり、役割の明確化とそれに応じた報酬設計が可能になります」とコメントし、Roopt DAOで自律分散的にマネタイズしていくための設計支援に注力したいとしている。

 また、合同会社化により、増え続ける空き家対策の「仕組み化」を目指すとしており、巻組の渡邊享子氏(代表取締役)は、Roopt DAOを皮切りに、次世代型の不動産賃貸運営の手法を模索したいとコメントしている。