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NTTとオリンパス、IOWN APNを用いた世界初の低遅延「クラウド内視鏡システム」を実証
150km離れたサーバーを用いてリアルタイム診断・治療が可能に
2024年11月22日 06:30
日本電信電話株式会社(NTT)とオリンパス株式会社は11月19日、世界で初めて内視鏡の映像処理機能をクラウド上で実現するクラウド内視鏡システムをIOWN APNを用いて構成し、150km離れた遠隔地のサーバー上で画像処理を行いながら、リアルタイムな遠隔診断・治療が可能なことを実証したと発表した。
内視鏡を用いた医療は高度化が進んでおり、最近では内視鏡で撮影した映像から病変のおそれがある部位を操作社に提示するなどの、映像処理による高度な支援機能も登場している。現在の内視鏡システムは装置内ですべての機能を処理しているが、より柔軟な機能改善や高いメンテナンス性を実現するため、映像処理などをクラウドで行う「内視鏡のクラウド化」が議論されている。
しかし、この実現にあたっては、ネットワーク上の遅延により映像と操作にズレが生じることで診断や治療の精度に影響を及ぼすおそれがあり、ネットワークにあるボトルネックの解消が課題となっていた。
今回の実証実験では、オリンパスの内視鏡技術と、NTTの高速低遅延ネットワークであるAPNを組み合わせ、クラウド内視鏡システムを構成し、実機検証を実施した。
内視鏡スコープで撮影した映像を、内視鏡プロセッサを経由して映像入力デバイス(エッジデバイス)に送り、非圧縮のままAPNを通じて遠隔地のサーバーへ転送。サーバー上でAIなどによる映像処理を行い、処理済みの映像を再びエッジデバイスへ返送して、最終的に医師が確認するモニターに映像を出力するシステムとなっている。
距離約5mのケーブルによるローカル接続と、距離約150kmのAPN接続の2構成にて映像処理を行い、操作者のモニタに出力された映像を測定用デバイスで撮影しネットワークのデータ遅延計測、および映像比較評価を行った。
内視鏡映像の伝送遅延を1フレーム(16ミリ秒)以内にすることを目指し、150kmのネットワーク環境で実験を実施。その結果、実際の遅延は1.1ミリ秒と目標を大幅に下回り、目視確認では遅延を感知できないレベルであることを実証した。この成果は、広域エリアの病院において、映像処理サーバーでの処理ができる可能性を示し、「クラウド内視鏡システム」の実現可能性が確認された。
両者は、今後もクラウド内視鏡システムの本格的実現に向け、共同で技術課題の解決に向け検討を進めていくとしている。
なお、この成果の一部は、2024年11月25日~29日にNTT武蔵野研究開発センタで開催される「NTT R&D FORUM 2024 ―IOWN INTEGRAL」で展示される予定。