ニュース

Starlinkの低軌道衛星通信を活用した移動型遠隔手術で「実用レベル」の実証実験に成功、徳洲会ら3者

災害時医療や地方の医療での実用に期待

 一般社団法人徳洲会、国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科、リバーフィールド株式会社は、八尾徳洲会総合病院において、低軌道衛星通信を用いた移動型遠隔手術システムの実証実験を世界で初めて実施し、成功したことを発表した。

実証で使用されたシステムのイメージ

 本実証が行われたのは2024年6月30日。リバーフィールドが開発した手術支援ロボット「Saroa サージカルシステム」のサージョンコンソール(操作側)を八尾徳洲会総合病院の手術室内に、ペイシェントカート(患者側)を屋外に配置したトラック内に配置し、実験を実施した。

サージョンコンソール(操作側)
ペイシェントカート(患者側)

 低軌道衛星通信には、米国スペースX社が運営する「Starlink」のサービスを利用。接続のフレキシビリティを確保するため、クラウド上に中継用VPNサーバーを設置している。

 実験には6人の外科医が参加し、通常のロボット手術構成と遠隔のロボット手術構成での比較を実施。遠隔のロボット手術構成においても、通常のロボット手術時と同様、縫合や結紮(糸を結んで固定すること)などの繊細な手技が可能であることが確認された。

 低軌道衛星通信は、低遅延で高速大容量通信が可能なことのほか、通信用のアンテナが移動車両への搭載が容易なこと、地理的制約を受けにくいこと、自然災害で地上の通信が損壊した場合でも衛星通信は影響を受けにくいこと、といった優位性を持っているという。

 医師不足のため、地方で高度な医療へのアクセスが困難な状況において、遠隔手術システムは、問題解決の「切り札」と期待されているという。また、衛星通信は災害時などにも強い通信インフラである。今回の実証で使用されたシステムは、へき地・離島と都市部の医療格差の是正、災害時の迅速な医療支援、国境を越えた医療支援活動や、あらゆる地域の医師らのトレーニングに幅広く活用できる可能性があるとしている。