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九州電力・IIJら5社、「ワット・ビット連携」に基づく地域分散型デジタルインフラの実証プロジェクト

複数の小規模DCを光信号で直結する世界初の試み

 九州電力株式会社、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)、株式会社QTnet、1FINITY株式会社(1Finity)、株式会社ノーチラス・テクノロジーズの5社は、2025年10月から九州における分散型デジタルインフラの構築・検証を目的とした実証プロジェクトを開始すると発表した。期間は2026年3月までの予定。

 同実証は、政府が推進する「ワット・ビット連携」(電力インフラと通信インフラを連携させ、脱炭素・地域振興・AI活用を同時に実現する構想)の考え方をもとに、九州の再生エネルギーを活用し、地域に分散したデータセンター(DC)を連携させることで、電力と情報処理技術の最適なバランスを目指すことを目的とする。

 具体的には、九州各地に小規模DCを設置し、オールフォトニクスネットワーク(APN:電気信号でなく光信号を使用したネットワーク)により接続し、1つの大きなシステムとして機能させ、場所を意識せずデータの保管や処理を可能にする。光ネットワークインターフェイスカード(光NIC)を使用し、光信号で直結することにより、各種ネットワーク装置を削減し、省電力化を図る。光信号で分散DCを直結する試みは、1Finity調べでは世界初であるという。

 昼夜で発電状況が異なる地域のDCを柔軟に使い分けるため、AI処理に特化したGPUサーバーを各DCに配置し、複数のDCに分散保存されたデータにアクセスして、AIなどの処理が可能な「分散データベース技術」の検証も実施する。これらの技術と九州の地産エネルギーを組み合わせ、「九州版ワット・ビット連携」の実現を目指すとしている。

 実証は、九州電力がプロジェクトオーナーとなり行われる。各社の役割分担は次のとおり

  • 九州電力:全体統括、自社事業への適用およびDC間「AI処理」融通のスキーム検討
  • IIJ:プロジェクトの全体設計・進行管理、検証環境全体構築・実証作業実施、マイクロDC(DX edge)、およびGPUサーバーの提供・構築
  • QTnet:中核DCおよび拠点間接続回線の提供・構築
  • 1Finity:光NICの提供・構築
  • ノーチラス・テクノロジーズ:分散データベース技術「劔“Tsurugi”」の提供・構築
実証の実施イメージ
実証プロジェクトの検証範囲と目指す世界