中国動画サイトでの著作権侵害に、日米の映像関連団体が連携へ


2008年度に押収した海賊版ソフトの一部

 一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は、インターネット上における日本のコンテンツの著作権侵害に対して対応に乗り出す。米国の映像権利者団体と連携し、中国の動画共有サイトなどに対する削除の自動化などを目指す。

 CODAは、日本の映画、音楽、ゲーム、放送、アニメ、ゲーム産業の企業や団体などで構成。2002年8月に任意団体として設立し、2009年4月に一般社団法人化した。日本のコンテンツを海外に事業展開するにあたって障害となっているという海賊版の横行に対処する活動を行っている。2008年度は、中国、台湾、香港において現地当局と共同で2251件の摘発の成果を挙げた。逮捕者は585人、押収したDVD/CDは約82万枚に上る。さらに韓国でも2009年1月から2月にかけて25件を摘発し、逮捕者15人、押収した海賊版約1万枚の成果を挙げたという。

 インターネット上の著作権侵害対策は、一般社団法人化した2009年度の新規事業の1つとして開始するものだ。CODA専務理事の後藤健郎氏(日本映像ソフト協会理事・事務局長)は、「有形物の海賊版、いわゆるフィジカルパイレーツはもちろんだが、インターネットの進展によってデジタルの侵害が深刻化している」と説明。「初年度からすぐにできるかは難しい」としながらも、具体的な対応を詰めていくとした。

 その一環としてすでに6月16日、米国の映像権利者団体と覚え書きを交わし、中国の動画共有サイトなどでの著作権侵害対策で連携することに合意した。後藤氏によると、この米国の映像権利者団体はすでに中国の動画共有サイトとの間で、米国コンテンツの著作権侵害動画の自動認識・削除を行うスキームを構築しているという。

 一方、CODA常務理事・事務局長の永野行雄氏によると、中国の動画共有サイトでは、YouTubeなどと異なり長時間の動画をアップロードできるため、日本のテレビドラマやアニメが放映後わずか数時間で番組丸ごとアップロードされるのが現実。しかも中国語や英語の字幕付きで“ローカライズ”されて世界に広がっていくため、「変な意味で中心的存在になっているのが中国」(永野氏)。

 そのため、これまでも日本の権利者が中国の動画共有サイトに削除依頼を行って実績を上げてはいるものの、必ずしも対応が万全とは言えない状況だという。そこで、すでに中国の動画共有サイトと著作権侵害動画対策のスキームを構築している米国の映像権利者団体の取り組みにCODAも相乗りするかたちで、具体的なアクションを起こしていくことにした。

 これと並行してCODAでは、インターネット上での著作権侵害として、動画共有サイトのほか、ファイル共有ネットワークも問題視しており、これに対する技術面での対応も検討するという。具体的には、フィンガープリントに基づいて動画を自動認識するための技術を検証・精査し、動画を検索して削除するまでを自動化して運用できる体制を目指す。

 19日に行った記者会見で、CODA代表理事の高井英幸氏(日本映像ソフト協会会長)は、一般社団法人化の目的を説明。活動を今後、長期的・計画的に続けていくため、組織の基盤と財政の基盤を安定化する必要あったとしたほか、権利侵害対策のプロフェッショナルを育成し、権利侵害対策の実績を積むことで、コンテンツの権利侵害においてはCODAが“管制塔”になることを目指すとした。その結果、「日本のコンテンツ産業が海外において安心して堂々と事業展開が図れるような場づくりに貢献していきたい」という。


CODA代表理事の高井英幸氏CODA専務理事の後藤健郎氏CODA常務理事・事務局長の永野行雄氏

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(永沢 茂)

2009/6/19 18:33