出版流通対策協議会、Googleブック検索の和解案離脱を説明


 中小出版社99社で構成する出版流通対策協議会(流対協)は2日、「Google Book Search(Googleブック検索)」に関する訴訟からの和解案の離脱の表明と、和解案の却下を求める文書をニューヨーク南部地区連邦地裁判事に8月28日付けで送付したと発表した。

和解案に至る経緯

出版流通対策協議会の高須会長

 「Google Book Search」は、米Googleが提携する図書館および出版社から提供された書籍をスキャンし、全文検索が可能なサービス。これに対して、米国の作家団体「Authors Guild(AG)」や「米国出版社協会(AAP)」などが、Googleを相手取って訴訟を起こしていたが、2008年10月に和解案が成立。同和解案によれば、図書館との提携によってスキャンした書籍に関しては、著作権の保護期間内であっても、絶版または市販されていない状態の書籍であれば閲覧が可能になり、権利者に対してはこれらを通じて得られた収益の63%を支払うなどとしている。

 和解案自体は、米国で提供する「Google Book Search」でのみ有効だが、和解案中には「米国著作権を有するすべての人物が含まれる」と記されている。このため、著作権に関する国際条約の「ベルヌ条約」により、加盟国で出版された書籍は米国でも著作権が発生し、日本や欧州など米国外の著作権者も和解案に同意するかどうかが求められていた。

 和解案に対する回答期限は当初5月5日までだったが、Googleでは4月に延長を申請して9月4日に変更。これを受けて、和解案の成立を審理する連邦地裁の最終公正公聴会も6月11日から10月7日に変更された。

49社が和解案離脱をNY地裁に送付済み

 出版流通対策協議会(流対協)では今回、流対協の会員各社およびそれ以外の出版社約950社に対して、和解案からの離脱を呼びかける文書を8月24日に送付。その上で、9月4日の回答期限に間に合うよう、ニューヨーク南部地区連邦地裁連邦判事のデニー・チン氏あてに賛同人出版社代表の署名捺印した49社分(流対協含む)を第1次分として集約して、和解案への離脱表明と和解案自体の却下を求める文書を8月28日付けで送付した。

 また、賛同企業は9月2日時点で合計76社(流対協会員外企業も14社含む)に増え、流対協では今週末までに第2次分として、追加で送付する予定。以降に賛同を表明した企業に関しても、9月末までに取りまとめて、10月7日の最終公正公聴会に間に合うよう送付するとした。なお、同様の文書は、米Googleやグーグル日本法人、和解管理人、ニューヨークタイムズに対しても、9月1日に送付している。

「Googleの行為は泥棒・海賊行為で日本の著作権法違反」

Googleブック検索訴訟の和解管理サイト。同サイトから申し立て手続きなどが行なえる

 流対協会長の高須次郎氏は、和解案を離脱する理由に関して、「商売を目的に販売中の出版社の書籍を無断で全ページコピーするという違法行為にもとづく和解案に参加する必要はない」と説明。また、Googleによる和解案の告知方法についても、「きわめて不十分な告知で、日本語の全訳もない」と述べた上で、「Googleがした行為は泥棒・海賊行為で、日本の国内法では著作権法119条に違反する」と語った。

 高須氏はまた、5月に来日した「Google Book Search」和解の原告側法律顧問との会談で、「著作権者が和解案から離脱しても、Google側が書籍のスキャンなどをした場合、著作権者側は個々の書籍に対してそれらをやめるように求めても、Google側に法的義務はない」との説明があった点を紹介。

 一方で、「Google側は和解案離脱の意志を尊重する旨のポリシーを表明している」との説明もあり、「この話をすぐに鵜呑みにすることはできないが、離脱した出版社の書籍をGoogleが違法にスキャンし続けた場合は、いつでもGoogleを訴えることができる」とした。また、「和解案にはサービスを提供する場所や時間に関する文言がなく、米国内でのサービスだから安心だという議論には疑問を持っている」と述べた。

「権利者不明の著作物も一私企業が保存・公開するのは不適切」

 また、著作権は存続しているが著作権請求者が不明の「孤児作品(orphan book)」がGoogleによってデジタル化されてしまう点も問題であると提起した。高須氏は「絶版書籍などの出版文化遺産の保存と公開は、一私企業が商業目的で行なうのは適当ではない」と述べた上で、「国会図書館やユネスコの世界デジタル図書館などのアーカイブ事業といった公的な機関が役割を担うべきである」とした。

 流対協では今後、10月の最終公正公聴会に向けて、和解案からの離脱を引き続き出版社に呼びかけていくという。これと合わせて、出版社に伝達者としての権利である著作隣接権を付与するよう著作権法の改正を求める考えだ。

 加えて、流対協の有志企業で設立した「日本出版著作権協会(JPCA)」などを窓口にした、翻訳やデジタル許諾を含めた集中的な著作権許諾に関する活動を推進。また、絶版ではないものの、品切れ状態にある書籍をデジタル化して、絶版書籍を減らしていく活動も進めるとしている。


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(村松 健至)

2009/9/2 19:25