「Google Books和解案は議会で扱う問題」米著作権局長が反対意見


 10日に開かれた米国下院司法委員会公聴会で、米国著作権局局長がGoogle Books和解案に強く反対する意見を表明した。

 米国著作権局局長のMarybeth Peters氏は、Google Booksの和解案で議論されている事柄は、本来、米国議会が取り扱う性質のものであり、Google Books和解案の成り行きを議会が監督すべきだと述べた。

 また、和解案については「Googleが図書館すべてを、商業的利益のために、果てしない未来に至るまでスキャンし続けることを許可するものとなる。この和解案は、著者、出版社、相続人や子孫に至るまで、和解案に縛りつける。しかもGoogleが著作物を、スキャンしようがしまいが効力を持つのだ」と指摘。このような強力な権限を持つ和解案は、一種の“司法による強制許諾”とみなすことができると著作権局は主張する。

 著作権法における強制許諾は、これまで議会が定める領分とされてきた。これはあまりに大きな影響を与えるため、慎重な考慮が払われてきたためだ。議会は一般に強制許諾には慎重であり、強制許諾が認められるのは市場原理が失敗した場合に限られる。その場合でも、すべての関係するステークホルダーとの間で公開の場で審議が行われ、それら関係者の要望が適切に満たされた場合に限られているとしている。

 こうしたことから、書籍のデジタル化に司法による強制許諾が必要であるかについて、「そのような決定を行うのは議会の領分であり、熟考の上、オープンかつ慎重に検討されるべき事柄であり、利益を受ける人々と公共の視点が明白に含まれているべきだ」と指摘した。著作権局局長が指摘するまでもなく、Google Books和解案でこのような手法が採用されていないのは明白で、同局長がこの和解案に強く反対していることが理解できる。

 また絶版書籍の扱いに関しては、提案されている和解案のもとでの絶版著作物の扱いに「強く反対する」とコメント。その理由として、著作物が絶版であるかそうでないかは著作権法のもとで区別はなく、どちらも法の下に著作権が守られていると指摘した。

 絶版著作物の権利者の捜索に難しい場合があることは、著作権局としても認めている。しかし、米国においては、少なくとも著作権局の記録をもとに、探すことは可能だと指摘。この仕組みのもとで、米国議会やEUなどの各国政府が改良のため努力を続けているとした。

 その上で、「法的な解決策が見つかるまでの間、我々の強い見解として、Googleは著作権の他の利用者に与えられているのと同じ行動規範に従うよう自らを律することを求め、使用に先立って許可を獲得し、障害が発生するリスクの元で著作物を使用するか、フェアユースや例外規定に則って使用するべきである」と主張した。

 また、この和解案が諸外国との間で摩擦を引き起こすリスクについても触れた。米国外の外国人がこの和解案に自発的に参加することは自由であるものの、和解案に自動的に含められるべきではないと指摘。既にドイツ政府やフランス政府が訴訟を起こしているだけでなく、数多くの外国の著者や出版社が懸念を表していることを挙げ、こうしたことが米国政府にとって外交上の問題となることを懸念している。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2009/9/14 11:41