経済ニュースも“ウェブファースト”、産経が「SankeiBiz」開設


「SankeiBiz」トップページ。左ペイン上部に表示されているのが、速報コーナー「ビジネスライブ」

 株式会社産経デジタルは7日、産経新聞グループの経済ニュースサイトとして「SankeiBiz(サンケイビズ)」をオープンした。利用は無料。

 これまで、経済紙「フジサンケイビジネスアイ」の公式サイトとして提供してきた「FujiSankei Business i. on the web」を全面的にリニューアルしたもの。紙面掲載前のニュース速報の提供を開始するとともに、年金など日々の生活にかかわる経済ニュースもカバー。掲載記事数は従来の倍以上に増やすとともに、紙面には掲載しないWeb版のみの記事も提供する。

 産経新聞グループは2007年、総合ニュースサイト「MSN産経ニュース」を開始するにあたり、紙面の締め切りにかかわらずスクープ記事などをWebサイトで先に掲載する“ウェブファースト”、単に速さだけではなく記事の質の高さも追求する“ウェブパーフェクト”というスタンスを掲げたが、これらを経済ニュースサイトでも実践するかたちになる。

 従来の「FujiSankei Business i. on the web」では、「フジサンケイビジネスアイ」の紙面に掲載した記事を当日の朝に更新。一部記事では「MSN産経ニュース」からの速報ニュース転載はあったものの、原則として1日1回だけの記事更新だった。「SankeiBiz」編集長/産経新聞社編集局編集長の別府育郎氏は「ややもすれば、紙面の記事を載せるだけの固定した画面だった」と振り返り、「SankeiBiz」では「動きの激しい経済情勢について行ける、動きのあるサイトを目指す」と語る。

 具体的には、その日に予定されている企業の記者会見や経済統計の発表などを時系列にリストアップする「ビジネスライブ」という速報コーナーを、「SankeiBiz」の全ページに表示。朝の段階では単なる予定表だが、実際に会見などが開かれ、詳しい情報が入るに従って概要を更新。夜には、その日1日の経済の動きを把握できるニュースの一覧になっているという仕掛けだ。もちろん、記事の続きや関連記事、関連サイトへのリンクも掲載する。

 経済ニュース速報は、金融・投資系ニュースサイトで有料で提供されている例はあるが、産経デジタルでは、無料で有益な情報を提供できないかということを検討し、「ビジネスライブ」を新設することにしたという。

 なお、「SankeiBiz」トップページはじめ各ページに設置される「ビジネスライブ」は、リストのうち4本または8本をスクロールしながら閲覧するかたちだが、全項目を一覧表示する専用ページもある。


「ビジネスライブ」の拡大表示「ビジネスライブ」の概要表示「ビジネスライブ」の一覧表示ページ

掲載記事は1日平均150本へと倍増、3~4割がWeb版のみの記事

 「SankeiBiz」で取り扱うニュースは、大きく分けて「企業」「政策」「エコノme」「コンプライアンス」という4カテゴリー。「企業」「政策」カテゴリーでは、従来から「FujiSankei Business i. on the web」で扱っていた、産経新聞社経済本部発の経済ニュースを中心に提供する。

「SankeiBiz」編集長/産経新聞社編集局編集長の別府育郎氏
産経デジタル編成本部メディア部長の土井達士氏

 一方、「エコノme」「コンプライアンス」では、「産経新聞」「夕刊フジ」など産経新聞グループの各媒体のコンテンツも積極的に活用。「エコノme」では、年金や税金、医療費などの健康に関する話題など、個人の日々の生活に関する経済がらみの記事を提供する。

 また、「コンプライアンス」はその名称の通り、企業のコンプライアンスに関するニュースを扱うもので、経済事件や知的財産問題などを取り上げる。産経デジタル編成本部メディア部長の土井達士氏は、「こうした負の部分は、既存の経済紙ではカバーできなかったのではないか」と述べ、産経新聞グループの広範な取材力・情報提供力を生かし、「一般紙よりはファーカスを絞っているが、経済紙ではカバーできなかったところもワンストップで提供する」とした。

 いわば、「MSN産経ニュース」が産経新聞グループの総合ニュースサイトであるのに対し、「SankeiBiz」は経済分野の総合ニュースサイトという位置付け。投資家や金融業界関係者だけでなく、「SankeiBiz」では、一般のビジネスパーソンが仕事に役立つ経済ニュースを提供するのに加え、日々の生活に関する経済ニュースもカバーしていくことで、リーチ拡大を図る。「FujiSankei Business i. on the web」の実績は、月間平均300万~400万PVだが、これを今後1年以内に1000万PVに伸ばすことが目標だ。

 掲載記事数は、「FujiSankei Business i. on the web」では平日1日あたり平均80本程度だったのに対し、「SankeiBiz」では平均150本程度、多い日は200本掲載し、おおむね倍増する。このうち50~60本程度、全体の3~4割程度が、「フジサンケイビジネスアイ」紙面には掲載されないWeb版のみの記事になるという。

 なお、「フジサンケイビジネスアイ」では携帯電話向けに紙面の記事を配信する月額315円の有料サービスを提供しているが、これは今後も継続する。一方で「SankeiBiz」は広告収入により運営し、有料サービスは今のところ具体的な予定はない。また、携帯電話やiPhoneなどスマートフォン向けのモバイルサービスも今後検討することになるという。

 このほか、「産経新聞」で展開している「Web面」などのような、インターネットを切り口とした独自ニュースについても具体的な計画はなく、当面は既存の経済ニュースの取材・報道体制を生かし、経済ニュースサイトの基礎を固めること注力する。


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(永沢 茂)

2009/12/7 18:32