書籍“自炊”代行、「今後もサービス継続」は4.7%
出版社と作家の質問書に書籍スキャン事業者が回答
書籍の裁断やスキャンを行う、いわゆる“自炊”を代行する事業者98社に対して、サービスの存続意志などを尋ねる質問書を送付していた出版社7社と作家122人は9月30日、事業者からの回答を公開した。それによれば、質問書の差出人に名を連ねる出版社と作家の書籍について、今後はスキャンを行わない姿勢を示す回答が大部分を占めたという。
講談社、角川書店、集英社、小学館、光文社、新潮社、文藝春秋の7社と作家122人は9月5日、自炊代行業務が複製権侵害にあたると指摘した上で、今後もサービスを継続するかなどについて、9月16日までに回答を求めていた。質問書は87社に届き、うち43社が回答した。
その結果、「今後も依頼があればスキャン事業を行う」という回答は2社(4.7%)にとどまった。「差出人作家の作品について、今後スキャン事業を行わない」という回答や、事業の終了方針を記載したりサイトを閉鎖した事業者も合計37社(86.0%)に上った。無記載は4社(9.3%)で、質問書に返信しないままサイトを閉鎖・停止する事業者も数社確認された。
また、スキャン事業の発注を受け付ける際に、依頼者が実際に私的使用を目的としているかどうかを確認しているかという質問に対しては、「特に確認していない」という回答が2社(4.7%)、「依頼者に私的使用目的であると申告させている」が14社(32.6%)、「上記以外の方法で確認」が19社(44.2%)、無記載が8社(18.6%)だった。
なお、「上記以外の方法」の具体的な記載としては、すべて依頼者に私的使用目的である旨を画面上で確認・同意してもらうという趣旨のものであり、「依頼者の自己申告」以外の回答は見いだせなかったとしている。
このほか、法人からの発注に応じているかどうかについては、「応じている」という回答が6社(14.0%)、「応じていない」が26社(60.5%)、無記載が11社(25.6%)だった。
質問書への回答について出版社7社と作家122人は、「対象書籍のスキャン事業を行わない姿勢を示した回答が大部分だったことは評価できる」とコメント。その一方で、一部の事業者は今回の通知が「拒否リスト」であるとして、質問書の差出人となった作家と出版社の書籍以外は、著作権者の許諾がなくともスキャン事業を継続できるかのような発言が見られたことを挙げ、「通知書の趣旨と現行著作権法を曲解するもの」と非難している。
今後は、未回答の事業者を含めて状況を注視し、特に悪質と判断した事業者については法的措置を含めて弁護団と対応を検討していくという。
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(増田 覚)
2011/10/3 13:08
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