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GMOグローバルサイン、議員候補や政党の認証サービスを開発、全政党に寄付

ネット選挙におけるサイトやメールの“なりすまし”を防止

GMOインターネット株式会社 代表取締役会長兼社長・グループ代表 熊谷正寿 氏

 GMOグローバルサイン株式会社は2月27日、インターネットを活用した選挙運動の解禁に向けて課題となっている、ウェブサイトや電子メールにおいて候補者や国会議員を装った偽サイト、偽メールなどの“なりすまし”を防止する「候補者認証サービス」「国会議員認証サービス」「政党認証サービス」を開発、3月下旬から順次提供開始すると発表した。

 各サービスは選挙の候補者、国会議員および政党向けに提供し、2月27日から事前申込みの受付を開始。政党の証明書は寄付とするが、政治資金規正法により、政党にしか寄付はできないため、議員および候補者個人へは有償提供となる。政党では、すでに自由民主党、民主党、日本維新の会、みんなの党の導入が決定しているという。

「ネット選挙運動の解禁は必然、後押ししたい」GMOグループCEO 熊谷社長

 現在、インターネット上での選挙運動の全面解禁に向けて国会内で協議が進められている。協議の結果にもとづいて公職選挙法が改正された場合は、2013年夏の参議院選挙からインターネット上での選挙運動が解禁されることになる。一方で、インターネット上での選挙運動に関しては第三者による“なりすまし”が懸念されているが、これといった方策や方針は設けられていない。

 GMOグローバルサイン社は、ネット上の選挙運動の解禁が話題になった2010年に、安全なネット選挙を支援する“なりすまし”防止サービスの開発を行なっており、2010年には法案審議が結局見送られたが、サービスの開発は継続。今回、選挙候補者、国会議員、および政党向けに「候補者認証サービス」「国会議員認証サービス」「政党認証サービス」を提供することになったという。

 サービスは全政党に寄付するとしており、すでに自由民主党がウェブサイト用「候補者認証サービス」「国会議員認証サービス」を、民主党と日本維新の会がウェブサイト用「候補者認証サービス」「国会議員認証サービス」「政党認証サービス」の導入を決定。

 みんなの党は、ウェブサイト用だけでなく、有償となる電子メール用についても「候補者認証サービス」「国会議員認証サービス」「政党認証サービス」の導入を決定している。

 GMOインターネット株式会社 代表取締役会長兼社長・グループ代表 熊谷正寿氏は、今回のサービス提供について、「ネット選挙に本気で移行してほしいという気持ちがまずある」とした。「そのために、ソリューションを提供して、ネット選挙解禁を後押ししたい。ビジネス的には、今回の政党および候補向けサービス自体は寄付のため儲かるものではないが、ネット選挙運動を通じてなりすまし防止認証シールの社会的認知度が高まれば、市場の裾野を広げる効果があるだろうという期待はある。」

 「なりすまし防止は非常に重要だと考えている。ネット選挙運動が解禁されて、変な事件が起こると、ネガティブな方向に行ってしまう可能性があり、それを懸念している。そのため、今回は安全・確実に勧められる対策が必要だと考えている。そのため、証明書を表示するだけでなく、証明書確認していただく、確認するという習慣をつけていあだくことが重要だ」と、閲覧者が証明書を確認することが重要であることを重ねて強調した。

 また熊谷代表は、ネット投票の可能性についての質問には、「ネット投票こそ、認証が重要だと考えている。ネット投票には、投票する人と、投票サイトの両方に、暗号化と認証が必要となる。ネット投票を実現するには、電子IDなど投票者を認証するためのIDが必要になる」とコメントした。

インターネット選挙運動を解禁している各国の状況と日本の現状
インターネット選挙運動の解禁には、ウェブサイトおよびSNSについては各党とも基本的に合意しているが、電子メールは議論がある
自民党、民主党、日本維新の会、みんなの党で採用が決定している

「証明書は見るだけでなくぜひクリックして確認を」武信氏

 GMOグローバルサイン株式会社 常務取締役 武信浩史氏は、「選挙期間中のなりすましは、通常の時期より被害が大きくなりやすい。なりすましを行う行為は技術的には難しくなく、電子メールについては、被害に気づかない可能性も高い」と指摘。

 「FacebookやTwitterなどのSNSは各ソーシャルメディア運営が公認アカウント制度を作るなどのなりすまし防止対策が進んでいるが、ウェブサイト、電子メールについては電子証明書が唯一の証明技術となる」として、電子証明書の必要性を説明。また、「導入だけではなく、電子証明書の啓発活動が必要。また、すべての候補者が電子証明書を使っていただいて、閲覧者、すべての国民のみなさんに電子証明書をクリックする習慣をつけていただきたい」とした。

 今回政党・議員・候補に特化したサービスのため、候補者および政党用に開発された証明書を利用し、公式サイトであることが一目でわかるよう、サイト上に直接貼ることができるサイトシールを用意した。

 今回寄付するのは、「政党認証サービス」「国会議員認証サービス」「候補者認証サービス」のウェブサイト用証明書。期間は、「永久に寄付する(熊谷代表)」という。

 電子メール用はそれぞれ有償となるが、これは政治資金規正法によって、年間寄付金の上限が資本金5億円以下の企業では750万円までと定められており、GMOグローバルサインではこの750万円が上限となるため。寄付する証明書の数は、「国会議員のサイトの数、政党の数、選挙事務所用の数、トータルで1000にはみたないと見ている(武信氏)」としており、ウェブサイト用のみであれば750万円の制限内で収まるという計算だ。

 「電子メール版も可能であれば寄付したかった(熊谷代表)」が、止むを得ず有償としたが、年間2940円と非常に安い価格に抑えて提供するとした。

 ウェブサイト用の認証サービスは寄付となるが、価格は「政党認証サービス」が1万500円/年、「国会議員認証サービス」が5250円/年、「候補者認証サービス」が840円/年。有償提供となる電子メール用認証サービスは「政党認証サービス」と「国会議員認証サービス」が2940円/年、「候補者認証サービス」が840円/年。

 なお、「国会議員認証サービス」は議員の任期中に限り提供し、候補者認証サービスについては選挙期間のみの提供となる。いずれも2月27日より受付を開始し、3月下旬より順次提供を開始する。

国会議員用サイトシール
政党用サイトシール
候補者用サイトシール
ネット選挙運動に対する懸念点
なりすまし対策の現状。SNSはサービス運営者が公認マークなどの対策を実施ずみだが、ウェブ、電子メールの対策が確定していない
ウェブサイト、電子メールのなりすまし対策は電子証明書しかない
電子証明書の機能
今回のネット選挙用のサービスでは、専用のサイトシールを用意。サイトのマークをクリックして実際のURLと照合することで、なりすましかどうか確認できる
電子証明書を閲覧する側の啓発も必要。フィッシング詐欺への啓発にもつながる
ウェブサイト用証明書
電子メール用証明書
サービス一覧表

(工藤 ひろえ)