ニュース

「OpenStack Days Tokyo 2014」2月13日・14日開催

OpenStack FoundationのCollier氏、UbuntuのShuttleworth氏講演レポート

 IaaS基盤ソフトウェア「OpenStack」についてのカンファレンスイベント「OpenStack Days Tokyo 2014」が、2月13日から14日にかけて開催されている。2013年3月に続く第2回の開催となる。

 実行委員長の長谷川章博氏(株式会社ビットアイル)は開会挨拶で、今回は登録者数が1500名を超え、30社をこえるスポンサーや、総務省や経済産業省などの後援も受けたと紹介。第1回の倍の規模になり、期待されていることを感じると語った。

OpenStack Days Tokyo 2014
スポンサー
実行委員長の長谷川章博氏(株式会社ビットアイル)

Mark Collier氏「ユーザー企業と開発者の壁がなくなってきている」

OpenStack FoundationのCOOであるMark Collier氏

 1日目の基調後援には、OpenStack Foundationの共同設立者でありCOOであるMark Collier氏が登壇。「How OpenStack is Developed: A new way for a new world」と題し、「開発者とユーザー企業の壁がなくなってきている」というメッセージとともに、OpenStackの開発プロセスとユーザー企業との関わりについて解説した。

 Collier氏はまず、Mark Andreesen氏の「Software is eating the world(ソフトウェアが世界を食いつくしている)」という言葉を引用した。そして、スマートフォンやInternet of Things(IoT)、クラウドなどのトレンドにより、「あらゆる業界の企業がソフトウェア企業になってきている」と主張。金融から農業まで非テクノロジー企業が、人材を求めてITスタートアップ企業を買収しているという話をTechCrunchから引用した。

 こうした動きについてCollier氏は、「すべての企業にとってソフトウェアが戦略的なポジションに位置づけられるようになった」と説明。定型的な業務であればソフトウェアを“箱で”買ってくればよいが、「箱にはビジネス戦略は入っていない」ためソフトウェアに付加価値として戦略を盛りこんでいく必要があると言った。

 このとき、従来のようにユーザー企業が開発者と話をする機会があるのが稀では要望がソフトウェアに取り込まれるまでに長い時間がかかると指摘。「今ではもっといいやりかたがある」として、OpenStackの「オープンデザインモデル」を説明した。

 OpenStackでは機能追加などのデザインのプロセスがオープンになっており、早期からユーザーも次のリリースのデザインに参加してしている。OpenStackによって、実際に参加するユーザーが大きなメリットを得られることが実証されたとColliersは説明する。Rackspaceのようなホスティング事業者や、eBayのようなユーザーサービス事業者など、世界中で50社ほどのユーザー企業が、OpenStackにバグフィックスや機能追加を加え、開発コミュニティにフィードバックしているという。また、そうしたユーザー企業どうしが集まって事例などを話しあうことも行なわれている。「ユーザーがソフトを変えるということが、OpenStackの世界ではできる」とCollier氏は語った。

Mark Andreesen氏の言葉「Software is eating the world」
OpenStackにコントリビュートしているユーザー企業
従来のユーザー企業と開発者の関係(左)と、OpenStackのオープンデザインモデル(右)

 事例としては、ケーブルテレビ事業者のComcastや、家電量販店のBest Buy、金融ニュースのBloombergなどが紹介された。また、CERN(欧州原子核研究機構)のTim Bell氏は、何千ものサーバーをOpenStackで管理するほか、OpenStackのユーザーコミュニティを組織して活発に活動しているという。そのほか、人気コメディドラマ「モダン・ファミリー」など作っている映像制作会社のDigitalFilm Tree社では、プライベートクラウドとパブリッククラウドを利用し、デジタルの利点を活かして共同作業しているという例も紹介された。

ケーブルテレビ事業者のComcastや、家電量販店のBest Buy、金融ニュースのBloombergの事例
CERNのTim Bell氏は、OpenStackのユーザーコミュニティを組織
プライベートクラウドとパブリッククラウドを活用する映像制作会社のDigitalFilm Treeの事例

 日本の事例も紹介された。Yahoo! Japanでは、自社開発プラットフォームから、開発の盛んなOpenStackに切りかえた。サーバーやネットワーク機器などのリソースを抽象化して運用するという。ほかにも、14日の基調後援を予定しているGREEや、VPSサービス「Conoha」を提供するGMOインターネット、学術クラウドを構築するNII(国立情報学研究所)などについても言及された。

Yahoo! Japanの事例。自社開発プラットフォームからOpenStackに切りかえ、リソースを抽象化して運用する
GREE、GMOインターネット、NIIの事例

 こうした例をもとに、Collier氏は、「開発者とユーザーの壁を破って、アクティブなユーザーにたくさん参加してほしい」と呼びかけ、OpenStackの開発体制について説明した。OpenStackの開発では、3人のPTL(Project Team Lead)が日々決断をしている。その下で権限移譲により大きなエコシステムが広がっている。6か月ごとに開催されるOpenStack Summitでは、大勢が集まってデザインが決められる。「6か月ごとにリリースする締切があるので、常に前に進むことが担保されている」とCollier氏は定期リリースの意義を語った。

 「OpenStackの開発プロジェクトには、コードをコミットするにあたって入らなくてはいけない“クラブ活動”はなく、誰でもコントリビュートできる」とCollier氏。このように多数の開発者がコードをコミットする中で、重視しているのがコードの自動テストだ。ちゃんとテストをパスしないとコードが入らない。また、コードレビューのシステムもとりいれられているという。

 Collier氏は最後に、「ぜひ積極的なユーザーになってコードの変化に参加し、自分の業界を変革してほしい」と聴衆に呼びかけた。

 質疑応答では、今後コードのテストだけでなくクラウド運用のテストにも注力していくことや、セキュリティチームの活動なども語られた。また、「IaaSに特化するのか、PaaSに進むのか」という質問に対しては、「“なんとかas a Service”という言葉はユーザー視点ではない。Amazon Web Servicees(AWS)では、ユーザーに必要なコンポーネントを次々に追加している。OpenStackも同じように、アクティブユーザーが必要なことをやっていく」とCollier氏は答えた。

OpenStackの開発体制
基調講演の様子

UbuntuのShuttleworth氏、講演時間内でOpenStack環境を自動構築

Canonical社創設者のMark Shuttleworth氏

 13日には、Linuxディストリビューション「Ubuntu」のCanonical社を創設したMark Shuttleworth氏の講演「Getting the most from your OpenStack cloud (OpenStackクラウドを最大限利用するには)」も行なわれた。

 Shuttleworth氏は講演の最初のほうで、15台の物理サーバー構成(14台が新規状態)にOSとOpenStackをインストールし、仮想マシンを作って環境を自動構築するスクリプトを生で実行。40分の講演時間のバックグラウンドで完了するかどうかにチャレンジした。

講演の最初に、15台の物理サーバーへのOpenStack環境の自動構築を開始
物理サーバーをセットアップする「MAAS」に15台が登録されている

 Shuttleworth氏は、「Ubuntuは世界中のエンジニアに人気がある。特にクラウドで」と述べ、スケールアウト分野のシェアでCentOSを上回ったという調査結果や、クラウドのワークロード(仮想マシン)のOSとして2/3がUbuntuという調査結果を示した。また、UbuntuはOpenStackのリファレンスプラットフォームとなっており、本番稼動のOpenStackのうち55%がUbuntuだというデータも示した。

本番稼動のOpenStackの55%がUbuntuだという調査結果
クラウドのワークロードの2/3がUbuntuという調査結果

 OpenStackのプラットフォームとしてUbuntuが使われる理由として、Shuttleworth氏は「早い段階からOpenStackにコミットしてきたから」と述べた。また、OpenStackもUbuntuもリリースサイクルは6か月となっており、その親和性についても氏は言及した。

 またUbuntuではOpenStackでサーバーやネットワーク、ストレージ、ハイパーバイザーなどの相互運用性の検証ラボOIL(OpenStack Interoperability Lab)を開設している。OILで1か月で3千件の検証をした結果、「Carrier Grade OpenStack」としてA&Tやドイツテレコム、チャイナテレコムなどに採用されたことが紹介された。

Ubuntu+OpenStackの採用事例
UbuntuとOpenStackの開発サイクル
UbuntuのOpenStack相互運用性検証ラボOIL(OpenStack Interoperability Lab)

 Shuttleworh氏はOpenStackの必要性として、「LinuxカーネルがサーバーのCPUやメモリなどのリソースを管理するように、OpenStackは数千のサーバーのリソースを管理するクラスタのカーネルだ」と論じた。

 こうした管理を自動化する取り組みとしてUbuntuが提供する仕組みが、オーケストレーションツールの「Juju」だ。Jujuでは、WebのGUIからサービスをドラッグ&ドロップして配置し接続させるることで、複数台にわたるサービスの構成を作れる。その構成は「Bundle」として保存でき、同じ構成を再び組むことができる。冒頭で始まった環境構築もJujuのBundleを使っている。

 Shuttleworth氏は、「OpenStackで面白いのはコードよりクラウドのアーキテクチャ」と語る。OpenStackでクラウド環境を構築するときには、パーツとしてさまざまな技術を選べ、それをどう配分するかの自由度がある。「Jujuで自動的に構築できるようにすることで、さまざまな構成を検証できる」と語り、社内でクラウドのパフォーマンスを向上させるゲームをしていると紹介した。

オーケストレーションツール「Juju」のGUI。サービスをドラッグ&ドロップで配置して接続することで、複数台にわたる構成を作れる
CI(継続的インテグレーション)の環境を構成するJujuのBundleの例

 さて、冒頭で開始した環境構築だ。講演時間が残り2分程度のところでJujuのGUIを表示すると、構築が終わっていた。そこで、構築したOpenStack環境のダッシュボード(Horizon)を表示すると、最初はまだ起動しきっていなかったが、講演時間内でなんとかいくつもの仮想マシンが動いているところを表示。「ぎりぎり間に合った」とShuttleworthは声を上げた。

講演時間内にOpenStack環境の自動構築が完了
いくつもの仮想マシンが動いている

展示ブースも設置

 なお、会場では展示ブースも設けられ、各企業が自社の製品やソリューションを展示している。

各企業が自社の製品やソリューションを展示

(高橋 正和)