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母がオレオレ詐欺に狙われたのを機に、実家に“迷惑電話対策機能”付き電話機を導入してみた息子のレポート
2018年9月14日 06:05
オレオレ詐欺は、子や孫だけではない?
母が先日、オレオレ詐欺的なもの(未遂)に遭った。「的」と書いたのには理由がある。通常のオレオレ詐欺は、子や孫を装って仕掛けてくるものが普通だが、今回は息子である自分や妹ではなく、病気になった母の従兄弟を名乗ったとしているためだ。一部あやふやなところもあるが、母の話をまとめる以下の通りになる。
電話の連絡は2回あったそうだ。6月の平日の午前9時ごろにかかってきた最初の電話では「マサだけど近くに行くので、午後1時ごろそっちに寄っていい?」というものだった。母は、分かった旨を伝えた。母の記憶では、自分で「マサ」と名乗るのは「マサヒロ」という従兄弟しかいなかったため、病気がよくなったので顔を見せに寄ると思い至ったようだ。
そのあと、到着予定前の12時ごろに再び電話がかかってきた。「今、某市の証券会社にいるのだけれど、友人の債権の代金を立て替える必要が出たので、お金を貸してほしい。1週間後にお金が戻ってくるから」という連絡が入ったという。母が「それは(振り込め)詐欺じゃないの?」と質問したところ「詐欺じゃないよ」と答えたそうだ。母は自分で詐欺という単語を発言したときに、ハッと自分でこれ自体が詐欺できないかと気が付いて電話を切ったという。のちにその従兄弟の状況を確認したところ、入院していてとても出歩ける状況ではなかったそうだ。
気が付いた理由は2つだという。1つは午後1時に近くに行くから寄るといったのに、母の家から遠い市の証券会社にいると電話してきたこと。母が株や証券を扱っていた経験があり、手順としておかしいのではないかと感じたためだったという。こんな感じで、幸いなことに詐欺自体には遭わずに済んだ。
ただ、この記事を書くために話を聞き直したときに、ちょっと引っかかる部分があった。それは、母が「マサ」と名乗る詐欺師を病気の親類と勘違いした件だ。その人物は親類を名乗ったわけではないのではないか、ということだ。学生時代、自分は字画の関係で「トシマサ」と名乗っていた時期があった。高校から大学の5年ほどの期間だ。一般的なオレオレ詐欺では、卒業アルバムなどの電話番号を利用して電話をかけてくる。この件も実は、息子を装った普通のオレオレ詐欺だった可能性がないだろうか、ということだ。ただし、この場合は「トシマサ」と名乗っていたことを知っていた人物、ということになる。
念のため高校と大学の卒業アルバムを見てみたが、そのトシマサ名義にはなっていなかった。ただの当てずっぽうなのか、自分のその時期の名前を知っていて名乗ったのか、親類の名前を知っていてかけてきたのかは、今となっては分かりようもないが、どちらにしても薄気味の悪い話ではある。
ケチは災いの元(ナンバーディスプレイ代の月額400円のこと)
今回のオレオレ詐欺未遂は、電話を受ける前に相手が誰か把握できれば、事前の対策で回避できる案件だった気がする。今回の場合、相手は(本来ならば)知っている人物であり、家にあった昔ながらの紙の電話帳には、相手の電話番号も記載されていたためだ。母の場合、性格的に、見たことのない番号だったら電話に出なかった可能性が高い。
しかし、実家ではかけてきた相手の電話番号を知るためのナンバーディスプレイを利用していなかった。NTT東日本の光回線もIP電話も契約してあったが、ナンバーディスプレイ代の月額400円(IP電話の場合)をケチったためだ。警察に届けたときも電話番号を伝えられず、役に立つ情報を提供できなかったようだ。こうした経緯から、母も月額400円を払う覚悟を決めてナンバーディスプレイの登録をすることになった。加えて電話機本体も古かったことから、迷惑電話対策機能付きの電話を導入してみた。
電話機の“迷惑電話対策機能”って何をしてくれる機能?
市販されている電話機の多くは何かしらの迷惑電話対策機能を持っている。当初は、企業が運営している「迷惑ブロックサービス」への加入も考えていた。サービス運営企業が収集した迷惑電話番号リストの番号から電話がかかってくると、呼出音を鳴らさずに着信を拒否するというサービスだ。サービスは無料で利用できるが、データ更新のため1日1回・1分10円(税別)の通信料がかかるため、メーカーによると月額310円(税別)程度になるという。しかし、ナンバーディスプレイ代と合計すると月額710円の負担増になるため、母が対策をあきらめる結論を出す可能性もあった。
そこで、こうした電話機を導入している知人などに意見を求めたところ、電話機本体の迷惑電話対策機能でも十分対応できているという。特に、かけてきた相手に対して、通話を録音すると伝える「事前警告機能」が有効だという話になった。
こうした意見を参考にしつつ、母の希望をすりあわせて選んだのが、パナソニックの「VE-GD66DL」だ。選ぶときの母の希望としては、迷惑電話対策機能が充実していること、特に前述した相手への事前録音警告機能と着信読み上げ機能が備わっていること、コードレスの子機が1台必要であること、それまで使っていた製品が受話器の音量が小さめだったため、受話音量を大きくできる機能があること――だった。
下位機種である「VE-GD25」「VE-GD55」でも同等の機能が備わっているが、迷惑電話対策機能の利用には、電話帳の登録が必須であることから、入力時に液晶画面が大きい方がやりやすいと判断してVE-GD66DLを選択している。
また、実際に運用してみて問題があれば、前述の迷惑ブロックサービスへの登録も考えていたため、同サービスに対応している本製品を選んでいる。あらかじめ必要な電話帳の登録作業などを行って母に引き渡した。
ナンバーディスプレイの手続きは、ウェブからも可能
電話機に搭載されている迷惑電話防止対策機能を利用するには、ナンバーディスプレイの登録が必要だ。手続きは自分で行ったが、ナンバーディスプレイの登録は電話機の設置後に行ったため、開通の確認作業などは母本人が行っている。
ナンバーディスプレイはインターネットから申し込みできるが、アナログ回線かデジタルか、光回線などを導入済みかといった契約回線の種別などによって手続きが異なる。こうした理由から画面遷移などが多く、高齢者本人がやる場合は、ネットよりも電話手続きの方がスムーズかもしれない。
ネットで手続きをするのであれば、スマートフォンやパソコンの操作に慣れた家族が代行した方がよいだろう。今回はNTT東日本の公式ペーシである「Web116」から手続きを行ったが、以下の画面のように支払い方法についての情報も聞かれるので、あらかじめ「口座振替」「請求書払い」「クレジットカード払い」といった支払い方法を調べておくことをお勧めする。
一通り手続きを終えると、切り替え日などを知らせるメールが来る。なお、毎月の支払いに加え、工事費用も別途必要となるので注意。回線の契約内容などによって異なるが、今回の場合はひかり電話をすでに導入済みだったこともあり、工事費用が別途2000円(税別)必要だった。この料金は、通常の電話料金などと合わせて請求される。
環境によってはルーターの設定が必要になる。うちの場合は、メールに記載された設定をしなくても利用できたが、設定は電話機で指定された番号と記号を入力するだけなので高齢者でも対応はできると思われる。
「電話のたびにドキドキすることがなくなった」
母が2カ月近く使ってみた印象によると、VE-GD66DLを選んでよかったようだ。VE-GD66DLの迷惑防止機能では、電話帳に登録されていない相手に対しては、先方に「この通話は迷惑電話防止のために録音されます。ご了承ください」と警告を行う。警告後に呼び出し音が鳴るため、大半の不審者はここで電話を切ってしまう。
また、電話帳に登録してある相手から電話がかかってくると、相手の名前を読み上げてくれる「着信読み上げ」機能がかなり便利だ。電話を取る前に、音声の読み上げに加えて、大きめのディスプレイで名前が表示されるので、相手を確認した上で安心して電話に出られるようになった。不審な電話の呼び出し音が鳴っているとき「通話拒否」ボタンを押すと、「恐れ入りますが、この電話はおつなぎできません」というメッセージを流したりすることもできる。
ちょっと失敗したのは、電話帳登録時に姓と名前の間にスペースを入れずに登録してしまったことだ。このせいで着信読み上げ時のイントネーションが微妙になってしまった。
その後も、よく分からないフリーダイヤル(番号で検索するとセールス関係が多い)や謎の番号からの電話がかかってきているが、電話のたびにドキドキすることがなくなったとしており、今のところ、迷惑電話対策機能付き電話機導入は成功しているようだ。